そのじゅう
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
帰ったら友哉がぐずぐず泣いてるし、私は疲れきってるしでクロサーさんがビビってた。クロサーさんが何があったのかと言うと友哉はぺそ、ぺそと泣きながら私の背中を蚊も殺せないような勢いで蹴った。
困惑した顔でクロサーは名前を見遣る。名前はごめんごめんご。と全く思ってない言葉を口にした。
『クロサーさんこの愚図った子1回落ち着かせたいンだけど』
「ええ…………ファミリーサイズのアイスじゃ駄目か?」
「クソ兄貴俺を何歳だと思ってやがる」
「駄目か……お前ガキの頃アイス食ったらすぐ泣き止んでたろ……」
「い゛っ゛は゛い゛た゛へ゛る゛」
『ハイハイ鼻チーンしようね』
友哉がぐずぐず言いながらアイスを頬張っている合間にクソでかい溜め息を吐いて名前は携帯を弄る。
「名前、そろそろ」
『あいよ。お前に寿って転校生って話はしたね?』
「あぁ」
『寿の前の学校には所謂天才ってやつが居たんだわ。県内でもトップクラスに頭のいい奴がね。性格ひん曲がってて、ちょっと腹立って昔半殺しにした事がある男なんだけど』
「サラッと半殺しにするなお前」
「兄貴そこで驚いたら心臓止まるから黙ってて」
『寿は知らないと思うんだけど、中学時代ね、楠木が拓海達に付き纏ってたのは知ってるだろうけど、なんとその男は楠木にぞっこんLoveだった訳』
「ほわ……??????」
『その野郎が楠木が拓海とかにくっ付くのを補助してたのよ。だから私が半殺しにして辞めさせた。ま、あんだけやられてそれ以上何かするようなタマじゃねーから大丈夫とは思ってたけど……私はソイツだと思ってる。恐らく確定でね』
多分寿、そういうのもなんも知らないで純粋に戦争の為に使ってるのかもね。今回の晴本襲撃事件は恐らく戦争の為に寿が箕月に操らせたんだ。
「て、ンめぇ~~~~~情報の後出し後出ししやがって~~~!!!!!」
「………………」
『山田、ステイ。クロサーさん、一旦待ってて。そんな怖い目で見られたら泣いちまうから。言っとくけど、寿は私に関しては関与してないよ。するわけが無い、寿は私に依存してるからね。気付いたら箕月のヤローは秒で殺される。でも、何が厄介かって箕月が楠木と繋がったままって事。恐らく寿には面白いから従ってて、楠木には信仰レベルで従ってる。しかも私には恨みがあるだろ、まだ狙われるだろうな』
「クソが!!!じゃあお前しばらく家から出れねーだろうが!!」
『ンな訳ねーだろ。出るよ。これは私が売られた喧嘩だよ』
「そんな事言ってる場合じゃねー!今度こそ命ァ取られちまうぞ!!!!」
『そうだろうけど、なぁ、友哉』
怒り狂う友哉の胸ぐらを掴む。今にも切れそうな青筋を顔に浮かべて睨むから怖いなと思いながらも少し微笑んだ。
『お前、なんの為にいる訳?私を庇護する為に一緒に居るんか?』
「……あ、」
『答えろ。私はお前を配下に加えた訳じゃねー、ただ護って欲しいから一緒にいる訳じゃねー。違うか』
「あ、ぁ、名前、」
『私は、それなら嫌だよ。お前なら、一緒に戦ってくれるんじゃねーのか。そうじゃねーなら、私はまた加地屋時代に戻るだけだ、一人で戦う。売られた喧嘩は私が勝手に買って、満足するなら死んだって構わねー』
友哉の顔が大きく歪む。数分続く沈黙の中、暫く空気だったクロサーが立ち上がって名前と友哉の肩をぽんと叩いた。
「割り込んで悪いな、言い忘れてた事がある。名前」
『え、私?』
「今日な、スペシャルゲストが来てる。ど~してもお前とサシで話したいって奴がな」
『えっ』
ガチャ、と隣の部屋のドアが開く。出て来た男の顔は怒りどころか表情が“無”で、思わず『ヒッ』と悲鳴を上げかけた。今の今まで名前を睨んでいた友哉がうわっと声を上げて大急ぎで避難した。薄情者!!!!
「クロサー、お前の部屋借りていいか」
「おう、二階の奥の部屋な」
「助かる」
「一応言うけど殺すなよ」
「場合による」
『ねえ場合によるって何!!?殺さねーよってちゃんと言って!!?ねえ!!なんで返事してくんないの?!!?とっきー!!!!』
「バイバイ名前、短い付き合いだったな」
『山田ァ!!!!!!』
首に腕をかけられて否が応でも歩かざるを得なくなり、十希夫のこんな顔見た事なくてあまりの恐怖にガチで逃げようとすれば俵担ぎにされ、クロサーさんの部屋に入って投げ捨てられた。丁重に扱え。
ていうかなんでとっきー?私とっきーになんかした?山田がとっきーを巻き込んだから?確かにとっきーは情に厚い所があるし、少しくらい怒るのは解るけど、
「なぁ、名前」
『はい!?』
投げ捨てられた状態で座ったままの私の前に屈みはしたが、それでも暗くて十希夫の顔はよく見えない。ただ、声色が、怒りを孕んでいる事だけ解った。