そのにじゅういち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
?
別当運動場、一人で焚八商業の連中と対峙していた村越の元には鳳仙とタケが駆け付けた。タケは光政に行くね、と告げて走り出す。村越はとんでもねえ勢いで走ってくるタケにぎょっとしたけれど、勢いのまま頬にめり込む拳から逃れられはしなかった。
「この馬鹿野郎がッ!!」
「、テメー」
「村越」
聞いたよ、弟の事。そこで気付く、光政達の視線がやり切れねえものである事。自分を殴ったタケの顔が悲痛に歪んでいる事。はく、と口を開閉して、村越は力無く項垂れた。
どうしたらいいんだよ、なんで俺みてーなボンクラじゃなくて、弟なんだ。
心からの声だった。それに対してタケは村越の胸倉を掴みあげる。血でも吐きそうな面で「なんで傍に居てやらねえんだ」と叫んだ。
「お前が馬鹿やってる時にも!!お前の弟は辛くて、寂しくて、手を握ってくれる兄貴を待ってるんだ!!!!お前、今すぐそのクソみてーなツラ引き下げて病院に行け!!!弟の手を握れ!!!死んじまったらなにも言えねーんだ、し、死んじまったら、抱きしめてやる事すら出来ねーんだ!!」
タケが叫んだ言葉は殆どかつて名前に言われたことだった。そしてそれが、本人にとっても相手にとっても最良だと思っているから言える言葉だった。
村越も、鳳仙の奴等もとうとう泣き出しちまった。タケがぎゅうぎゅうに村越を抱きしめてから立ち上がる。
「名前っち!俺ちん、行ってきていい?!」
『良いよ』
ザッ、と音がするくらいの勢いで全員が振り向いた。一部始終を見ていた名前は無表情のまんま山田を連れ添って村越に近付いていく。
「あ、名前、」
『潤くん、東陽台の事は一旦置いといてやる。今はタケと病院に迎え、面会時間は気にすんな!うちの奴の病院だからよ、都合は付けてやる』
「名前、俺ァ」
『行きな、タケ』
「あい」
村越はタケに手を引かれ病院へ向かった。俯く名前に気付いた光政は鳳仙連中を解散させ、察した山田は少し距離をとった。
「名前」
『なに』
「悪かったな」
そこで名前は堰が切れたようにしゃがみこんじまった。まだ傷が癒えてねえ事くらい解っていた光政はただ隣に座って背中を摩ってやる事しか出来なかった。
『……人の死ってのは、堪えるよ』
「そうだな」
『じ、潤の気持ちは痛え程解るよ。胸が、は、腹が痛えんだ。受け止めちまったら、そこでもう押し潰されそうになっちまう』
「あぁ」
『みつまさ』
「ん?」
『あ、アイツ。鳳仙辞めさせるなよ。荒立てた波くらい私が治めてやる。前を向かせてやってくれ、それは私が出来る事じゃないから』
「……。あぁ、そうだな」
ぐし、と目元を乱雑に拭いて名前はポッケをゴソゴソ。煙草一本くんない。ほらよ。光政のジッポで一緒に火をつけて、溜め息。
『光政ぁ』
「ん」
『お前は私より先に死ぬなよ』
「……さぁなぁ」
『ばか、泣いてる女が隣に居たら嘘でもうんって言えよな』
「解らねえ事に頷くような甘ったれた男は嫌だろう?」
『違いないね』
「何があるか解らねえんだ、おいそれと頷けねえよ。でもなぁ、俺だってお前に先に死なれたかねえぜ」
『なにそれ。お前も看取られたいわけ?』
「おー、俺が90にもなって笑って死ぬからよ、お前も笑って見送って、それから死ね。何せ三男坊なもんでな?寂しいのは嫌なんだよ」
『おま、ここぞとばかりに三男坊ネタ使いやがってよ。ホント、ズルい奴だよ』
「お前にゃ負けるさ」
五日後、村越が見守る中、村越の弟は静かに息を引き取った。ガキが出せる金なんざたかが知れてるけれど、鳳仙の奴等がかき集めた金と、常磐連合から集められた金、花が村越の元に届けられた。
別当運動場、一人で焚八商業の連中と対峙していた村越の元には鳳仙とタケが駆け付けた。タケは光政に行くね、と告げて走り出す。村越はとんでもねえ勢いで走ってくるタケにぎょっとしたけれど、勢いのまま頬にめり込む拳から逃れられはしなかった。
「この馬鹿野郎がッ!!」
「、テメー」
「村越」
聞いたよ、弟の事。そこで気付く、光政達の視線がやり切れねえものである事。自分を殴ったタケの顔が悲痛に歪んでいる事。はく、と口を開閉して、村越は力無く項垂れた。
どうしたらいいんだよ、なんで俺みてーなボンクラじゃなくて、弟なんだ。
心からの声だった。それに対してタケは村越の胸倉を掴みあげる。血でも吐きそうな面で「なんで傍に居てやらねえんだ」と叫んだ。
「お前が馬鹿やってる時にも!!お前の弟は辛くて、寂しくて、手を握ってくれる兄貴を待ってるんだ!!!!お前、今すぐそのクソみてーなツラ引き下げて病院に行け!!!弟の手を握れ!!!死んじまったらなにも言えねーんだ、し、死んじまったら、抱きしめてやる事すら出来ねーんだ!!」
タケが叫んだ言葉は殆どかつて名前に言われたことだった。そしてそれが、本人にとっても相手にとっても最良だと思っているから言える言葉だった。
村越も、鳳仙の奴等もとうとう泣き出しちまった。タケがぎゅうぎゅうに村越を抱きしめてから立ち上がる。
「名前っち!俺ちん、行ってきていい?!」
『良いよ』
ザッ、と音がするくらいの勢いで全員が振り向いた。一部始終を見ていた名前は無表情のまんま山田を連れ添って村越に近付いていく。
「あ、名前、」
『潤くん、東陽台の事は一旦置いといてやる。今はタケと病院に迎え、面会時間は気にすんな!うちの奴の病院だからよ、都合は付けてやる』
「名前、俺ァ」
『行きな、タケ』
「あい」
村越はタケに手を引かれ病院へ向かった。俯く名前に気付いた光政は鳳仙連中を解散させ、察した山田は少し距離をとった。
「名前」
『なに』
「悪かったな」
そこで名前は堰が切れたようにしゃがみこんじまった。まだ傷が癒えてねえ事くらい解っていた光政はただ隣に座って背中を摩ってやる事しか出来なかった。
『……人の死ってのは、堪えるよ』
「そうだな」
『じ、潤の気持ちは痛え程解るよ。胸が、は、腹が痛えんだ。受け止めちまったら、そこでもう押し潰されそうになっちまう』
「あぁ」
『みつまさ』
「ん?」
『あ、アイツ。鳳仙辞めさせるなよ。荒立てた波くらい私が治めてやる。前を向かせてやってくれ、それは私が出来る事じゃないから』
「……。あぁ、そうだな」
ぐし、と目元を乱雑に拭いて名前はポッケをゴソゴソ。煙草一本くんない。ほらよ。光政のジッポで一緒に火をつけて、溜め息。
『光政ぁ』
「ん」
『お前は私より先に死ぬなよ』
「……さぁなぁ」
『ばか、泣いてる女が隣に居たら嘘でもうんって言えよな』
「解らねえ事に頷くような甘ったれた男は嫌だろう?」
『違いないね』
「何があるか解らねえんだ、おいそれと頷けねえよ。でもなぁ、俺だってお前に先に死なれたかねえぜ」
『なにそれ。お前も看取られたいわけ?』
「おー、俺が90にもなって笑って死ぬからよ、お前も笑って見送って、それから死ね。何せ三男坊なもんでな?寂しいのは嫌なんだよ」
『おま、ここぞとばかりに三男坊ネタ使いやがってよ。ホント、ズルい奴だよ』
「お前にゃ負けるさ」
五日後、村越が見守る中、村越の弟は静かに息を引き取った。ガキが出せる金なんざたかが知れてるけれど、鳳仙の奴等がかき集めた金と、常磐連合から集められた金、花が村越の元に届けられた。