そのにじゅう
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やべ、と名前は胃が縮むような心地で目を覚ました。完全に寝過ぎた。名前は普段割と頭をずっと回転させているからか寝る時は昼寝をしようが夜もめちゃくちゃ寝れるタイプで、それでも人の家だから一~二時間で目が覚めると思っていた。思っていたのだ。さっき目を覚ました時は外から車の音とかが聞こえていたけれど、今は完璧に外は真っ暗で車の音も全然しない静かな空気を感じる。ぎゅうぎゅうに自分を抱き締めて寝ている十希夫を揺する。照れてる場合じゃない、マジでヤバいから。なんの断りも無しに泊まりなんて十三に激怒されてしまう。
『とっきー、とっきー起きて!』
「ん゛……」
『腕、ちょっと!腕避けて!』
「……どうした……」
『時間見させて!めちゃくちゃ暗い!』
「、マジか」
これは十希夫も予想外だった。やっべ抱いたまま寝てたわという恥ずかしい気持ちも吹っ飛ぶくらい。十希夫が時間を確認すると23時。十三にぶん殴られる覚悟を決めなければいけないな、と思ったら名前が裾を引いた。
『タケちゃんが十三に連絡してくれてたみたいで』
「阿賀島が?」
『あの……』
「ンだよ」
タケは数度名前に連絡して返ってこないのでどうせ二人で寝てんだろうな(大正解)と、十三に「名前っち疲れて寝ちった!今日泊まらせるわ!」と連絡したのである。だから安心して泊まりなさいね、と。
泊まる、泊まり、泊まる?この女が、俺の家に?十希夫は軽くパニックだった。寝過ごした俺が悪いのだけれど、この女を泊める?正気か?
『お、起きたから、帰るから、』
「あ?泊まらねえのか」
『ん゛!!?』
いざ女が帰ると言ったらそんな言葉が口から出ちまった。暗がりでも解るくらいに耳と首筋が赤い十希夫を名前はジ、と見詰めて言葉を詰まらせている。十希夫がカリカリと首を掻いた。
「……、別に、泊まってきゃ良いだろ」
『でも寝るとこ』
「ここで寝ろ」
『でも、』
「嫌なら」
くっ、と眉間に皺を寄せて嫌なら俺ァ床で寝るからよ、と言うので名前は目をぱち、と見開いて少ししてから笑っちまった。だって十希夫、未だに名前を離してないのだ。笑うなよと低く唸るけど格好がついてない。
『とっきー』
「ん」
『泊まるね』
「おー」
『Tシャツとか貸してくんない?』
「待ってろ」
そういや小さくなったシャツとかあったよなと思いながらタンスをごそごそ。ほれシャツと短パン。あんがと。
『てか』
「あ?」
『お返しなーあに』
「あ~……まず着替えろ、出てるから」
『なに?お着替え見たいって?えっちじゃん』
「名前」
『はい』
「軽々しくそういう事言うんじゃねえ最悪窓を割る」
『軽々しく割られる窓が哀れだとは思わんのか』
「喧しいわ」
急いで部屋から出た十希夫は本日何度目か解らないデカい溜息を吐いて水を飲みに茶の間へ。テーブルに“起きたら名前ちゃんと食べなさいね”と母親の書き置きと飯があった。やべえ明日母親にニヤニヤされる。
「名前、良いか」
『ん』
「飯作ってくれてた、腹減ってるか」
『すいた』
「食うぞ」
『はーい』
飯をチンして頂きます。母ちゃんのご飯美味しいよね。そうな。予備の歯ブラシあるから使え。ありがと。
「お返しなんだがよ」
『お菓子??』
「ではない」
『そうなの?』
「ほれ」
『めちゃくちゃ綺麗なブレスレットじゃん、どしたのこれ』
「着けろ」
『いや着けるけど』
「腕出せ」
『なに着けてくれるの?』
「おー」
部屋に戻って十希夫は名前の腕を取ってブレスレットを着けた。なんか私タケちゃん化してない?とか言いながら名前が嬉しそうな目でブレスレットを見遣る。アイツピアスもしてるしまだお前より多いからセーフだ。そっかぁ。
「……お前に、似合うと思って」
『ンはは、あんがと。可愛いねこれ』
「似合ってる」
『とっきーこういうセンス凄いもんね。でも私チョコしかあげてないじゃん』
「他の奴と違うモンくれたろ、それだけで十分だ」
『え、なんで知ってんの?とっきーに見せてないよね』
「……」
『とっきー、人から取ってないよね?』
「……」
『目を逸らさない』
「うるせえよ」
『怒るじゃん』
「お前なんで俺以外に先に渡した?」
『目に付いた順』
「教室も美術室も来ねえでか」
十希夫は軍司が居た頃からの名残りで暇な時は美術室に良く居座っていた。名前もそれは知ってるのだから、先に来る事なんて出来た筈なのに。十希夫は治った機嫌が徐々にまた悪くなってくるのを自覚していたけれど、聞かずにはいられなかった。
ピリ、とした空気を感じ取った名前はやべ……とちょっと視線を彷徨わせる。流石にガチな不機嫌を茶化す気にはなれなかった。
『別に避けてた訳じゃないよ』
黒澤やブッチャーには先に渡しておいてか、という言葉を十希夫は飲み込んだ。何を言おうとしているのか、付き合ってもねえ女に。そんなもん、本当にコイツの勝手だと言うのに。でも、黒澤やブッチャーにも渡すのなら自分の所にもすぐ来ても良かったのではないかなんて気持ちがドロドロと十希夫のイラつきを助長させる。
『さっき言ってたけど、十希夫くんの皆と違うやつだったでしょ』
「あぁ」
『その。……迷惑かと思って』
「は」
迷惑とは?コイツは今一体何を言い出しているのか。何を迷惑がられると思っているのか。十希夫の脳内はパニックである。そうして頭に過ぎるのはいつかの九里虎が言っていた“十希夫くんに失礼だからやめて”という言葉。
これは、そういう意味なのだろうか。期待しても、良いのだろうか。
『チョコ形汚かったでしょ、頑張って作ったけど、お前失敗作渡されたんか?とか言われたりしたら、十希夫くん優しいから、怒るかと思って、』
「そっちか……」
『なんて?』
「うるせえ馬鹿女……俺は今猛烈にブッチャーの家を燃やしてえ」
『軽率にブッチャーさんの家を燃やすな』
「憎い」
『ブッチャーさんは家を燃やされるような事をしたの……?』
「ついでに深町の家も燃やす」
『FBIに何をされたらそうなるの??』
「名前」
『はい』
「お前が俺だけに作ってくれたモンなら、どんだけ歪な形でも嬉しいぜ」
『ひえ』
名前が固まっちまったけれど、これは十希夫の本音だった。どれだけ形が崩れていようが、自分だけ他と違うものを貰うというのは嬉しいものだ。
「俺ァお前が俺の為に作ったもんなら、まぁとんでもねえモン以外は食うからよ。下手な気遣うな」
『……』
「だからせめて黒澤とブッチャーと九里虎よりは先に渡せ最悪九里虎の携帯を割る」
『それとっきーが死ぬよね?』
「名前」
『はい』
「………………なんでもねえ」
『なにさ』
「いい。……寝るか」
『うん、』
でもよくよく考えなくても十希夫も寝るのが解ってるのにベッドで寝るのはちょっと、と、なんとか十希夫が気を遣って床で寝るなんて言わないような言葉を考えていると十希夫が名前を持ち上げてベッドに降ろした。余計な事考えんな、と。
また先程みたいに十希夫が名前を抱き締めようとするので、待って、と止める。真っ赤な面で恥ずかしいと抗議しようとすると、十希夫の鋭いけれど暖かい目が名前を見詰めていた。そのまま背に腕を回されちまって、項をすりすりと撫でる。名前にゃ見えないけれど、十希夫だって耳と首が真っ赤である。
『とっき、』
「俺と」
『ん?』
「俺と、居るのは嫌じゃねえか」
『……嫌じゃないよ』
「そうか」
クソ奥手野郎である十希夫はもうこの状況だけで手一杯で、それ以上の言葉は発せなかった。ヤバいヤバいヤバいなんでやっぱり床に寝ると言わなかったのか。付き合ってもねえ男に抱き締められて気色悪いだの思わないだろうか。ンな事今更だってのに十希夫は急に不安になっちまって、それでも離す気は無くてとうとう名前の身体に足まで絡めて逃げないように固定した。ひえ、と小さく腕の中で悲鳴が聞こえたけれど完全に無視である。
『とっきー』
「ん」
『……もうちょいぎゅってして』
「ンッッグ」
やべ、と名前は胃が縮むような心地で目を覚ました。完全に寝過ぎた。名前は普段割と頭をずっと回転させているからか寝る時は昼寝をしようが夜もめちゃくちゃ寝れるタイプで、それでも人の家だから一~二時間で目が覚めると思っていた。思っていたのだ。さっき目を覚ました時は外から車の音とかが聞こえていたけれど、今は完璧に外は真っ暗で車の音も全然しない静かな空気を感じる。ぎゅうぎゅうに自分を抱き締めて寝ている十希夫を揺する。照れてる場合じゃない、マジでヤバいから。なんの断りも無しに泊まりなんて十三に激怒されてしまう。
『とっきー、とっきー起きて!』
「ん゛……」
『腕、ちょっと!腕避けて!』
「……どうした……」
『時間見させて!めちゃくちゃ暗い!』
「、マジか」
これは十希夫も予想外だった。やっべ抱いたまま寝てたわという恥ずかしい気持ちも吹っ飛ぶくらい。十希夫が時間を確認すると23時。十三にぶん殴られる覚悟を決めなければいけないな、と思ったら名前が裾を引いた。
『タケちゃんが十三に連絡してくれてたみたいで』
「阿賀島が?」
『あの……』
「ンだよ」
タケは数度名前に連絡して返ってこないのでどうせ二人で寝てんだろうな(大正解)と、十三に「名前っち疲れて寝ちった!今日泊まらせるわ!」と連絡したのである。だから安心して泊まりなさいね、と。
泊まる、泊まり、泊まる?この女が、俺の家に?十希夫は軽くパニックだった。寝過ごした俺が悪いのだけれど、この女を泊める?正気か?
『お、起きたから、帰るから、』
「あ?泊まらねえのか」
『ん゛!!?』
いざ女が帰ると言ったらそんな言葉が口から出ちまった。暗がりでも解るくらいに耳と首筋が赤い十希夫を名前はジ、と見詰めて言葉を詰まらせている。十希夫がカリカリと首を掻いた。
「……、別に、泊まってきゃ良いだろ」
『でも寝るとこ』
「ここで寝ろ」
『でも、』
「嫌なら」
くっ、と眉間に皺を寄せて嫌なら俺ァ床で寝るからよ、と言うので名前は目をぱち、と見開いて少ししてから笑っちまった。だって十希夫、未だに名前を離してないのだ。笑うなよと低く唸るけど格好がついてない。
『とっきー』
「ん」
『泊まるね』
「おー」
『Tシャツとか貸してくんない?』
「待ってろ」
そういや小さくなったシャツとかあったよなと思いながらタンスをごそごそ。ほれシャツと短パン。あんがと。
『てか』
「あ?」
『お返しなーあに』
「あ~……まず着替えろ、出てるから」
『なに?お着替え見たいって?えっちじゃん』
「名前」
『はい』
「軽々しくそういう事言うんじゃねえ最悪窓を割る」
『軽々しく割られる窓が哀れだとは思わんのか』
「喧しいわ」
急いで部屋から出た十希夫は本日何度目か解らないデカい溜息を吐いて水を飲みに茶の間へ。テーブルに“起きたら名前ちゃんと食べなさいね”と母親の書き置きと飯があった。やべえ明日母親にニヤニヤされる。
「名前、良いか」
『ん』
「飯作ってくれてた、腹減ってるか」
『すいた』
「食うぞ」
『はーい』
飯をチンして頂きます。母ちゃんのご飯美味しいよね。そうな。予備の歯ブラシあるから使え。ありがと。
「お返しなんだがよ」
『お菓子??』
「ではない」
『そうなの?』
「ほれ」
『めちゃくちゃ綺麗なブレスレットじゃん、どしたのこれ』
「着けろ」
『いや着けるけど』
「腕出せ」
『なに着けてくれるの?』
「おー」
部屋に戻って十希夫は名前の腕を取ってブレスレットを着けた。なんか私タケちゃん化してない?とか言いながら名前が嬉しそうな目でブレスレットを見遣る。アイツピアスもしてるしまだお前より多いからセーフだ。そっかぁ。
「……お前に、似合うと思って」
『ンはは、あんがと。可愛いねこれ』
「似合ってる」
『とっきーこういうセンス凄いもんね。でも私チョコしかあげてないじゃん』
「他の奴と違うモンくれたろ、それだけで十分だ」
『え、なんで知ってんの?とっきーに見せてないよね』
「……」
『とっきー、人から取ってないよね?』
「……」
『目を逸らさない』
「うるせえよ」
『怒るじゃん』
「お前なんで俺以外に先に渡した?」
『目に付いた順』
「教室も美術室も来ねえでか」
十希夫は軍司が居た頃からの名残りで暇な時は美術室に良く居座っていた。名前もそれは知ってるのだから、先に来る事なんて出来た筈なのに。十希夫は治った機嫌が徐々にまた悪くなってくるのを自覚していたけれど、聞かずにはいられなかった。
ピリ、とした空気を感じ取った名前はやべ……とちょっと視線を彷徨わせる。流石にガチな不機嫌を茶化す気にはなれなかった。
『別に避けてた訳じゃないよ』
黒澤やブッチャーには先に渡しておいてか、という言葉を十希夫は飲み込んだ。何を言おうとしているのか、付き合ってもねえ女に。そんなもん、本当にコイツの勝手だと言うのに。でも、黒澤やブッチャーにも渡すのなら自分の所にもすぐ来ても良かったのではないかなんて気持ちがドロドロと十希夫のイラつきを助長させる。
『さっき言ってたけど、十希夫くんの皆と違うやつだったでしょ』
「あぁ」
『その。……迷惑かと思って』
「は」
迷惑とは?コイツは今一体何を言い出しているのか。何を迷惑がられると思っているのか。十希夫の脳内はパニックである。そうして頭に過ぎるのはいつかの九里虎が言っていた“十希夫くんに失礼だからやめて”という言葉。
これは、そういう意味なのだろうか。期待しても、良いのだろうか。
『チョコ形汚かったでしょ、頑張って作ったけど、お前失敗作渡されたんか?とか言われたりしたら、十希夫くん優しいから、怒るかと思って、』
「そっちか……」
『なんて?』
「うるせえ馬鹿女……俺は今猛烈にブッチャーの家を燃やしてえ」
『軽率にブッチャーさんの家を燃やすな』
「憎い」
『ブッチャーさんは家を燃やされるような事をしたの……?』
「ついでに深町の家も燃やす」
『FBIに何をされたらそうなるの??』
「名前」
『はい』
「お前が俺だけに作ってくれたモンなら、どんだけ歪な形でも嬉しいぜ」
『ひえ』
名前が固まっちまったけれど、これは十希夫の本音だった。どれだけ形が崩れていようが、自分だけ他と違うものを貰うというのは嬉しいものだ。
「俺ァお前が俺の為に作ったもんなら、まぁとんでもねえモン以外は食うからよ。下手な気遣うな」
『……』
「だからせめて黒澤とブッチャーと九里虎よりは先に渡せ最悪九里虎の携帯を割る」
『それとっきーが死ぬよね?』
「名前」
『はい』
「………………なんでもねえ」
『なにさ』
「いい。……寝るか」
『うん、』
でもよくよく考えなくても十希夫も寝るのが解ってるのにベッドで寝るのはちょっと、と、なんとか十希夫が気を遣って床で寝るなんて言わないような言葉を考えていると十希夫が名前を持ち上げてベッドに降ろした。余計な事考えんな、と。
また先程みたいに十希夫が名前を抱き締めようとするので、待って、と止める。真っ赤な面で恥ずかしいと抗議しようとすると、十希夫の鋭いけれど暖かい目が名前を見詰めていた。そのまま背に腕を回されちまって、項をすりすりと撫でる。名前にゃ見えないけれど、十希夫だって耳と首が真っ赤である。
『とっき、』
「俺と」
『ん?』
「俺と、居るのは嫌じゃねえか」
『……嫌じゃないよ』
「そうか」
クソ奥手野郎である十希夫はもうこの状況だけで手一杯で、それ以上の言葉は発せなかった。ヤバいヤバいヤバいなんでやっぱり床に寝ると言わなかったのか。付き合ってもねえ男に抱き締められて気色悪いだの思わないだろうか。ンな事今更だってのに十希夫は急に不安になっちまって、それでも離す気は無くてとうとう名前の身体に足まで絡めて逃げないように固定した。ひえ、と小さく腕の中で悲鳴が聞こえたけれど完全に無視である。
『とっきー』
「ん」
『……もうちょいぎゅってして』
「ンッッグ」