「苗字ってのはテメェだな！！」
「よくも昨日は騙してくれたな！」
『な、なんのことですか？』
「しらばっくれんじゃねえ！お前武装の武田と仲いいみたいじゃねーか！ちょっと顔貸せや！！」
『解りました。だれかー！美術部いるー？』
「…なにしてんだよ」
『顔貸せって言うから。今から型とりますね』
「ちげえよ！！！付いてこいって言ってんだよ！！」
『え、顔貸せって…マスクじゃダメなんですか？付いてったら体貸すことになるじゃないですか…』


このやり取りに何人かのクラスメートが顔を蒼くし、同じ学校だった人や友達は笑いを堪らえるのに必死なようだ。失礼だなお前ら助けなさいよ。


「だぁああ、いいから付いてこい！」
『山田くん君美術部だよね！粘土ある？』
「あるよ」
『うん、さぁ一思いに顔に来い！！』
「なんで粘土あるんだよ！！」
「…萎えた。なんか萎えた。頼むから付いてきてくれ頼むから」
『頼むからって事は私は客人ですね？手荒な真似はしませんね？解りました仕方ないのでついて行って差し上げましょう』
「「うぜええええ」」


クラスメートの中からも若干同じセリフが聞こえたが、今は見逃す。貴様ら後でキャメルクラッチな。






「武田に電話しろ」
『武田って誰ですか』
「武田好誠だよ！！昨日もバイクで来てただろ！！」
『…なんて電話するんです？』
「電話したら変われ」
『へーい』


大丈夫かなぁ。電話かけちゃって。



『…もしもし、好誠さん？』
［おう、どうした？］


出たとわかった瞬間、男Ａが携帯を奪い取った。いいのか？本当にいいのか？今なら間に合うぞ。やめなさい



「おう武田ぁ、俺のこと覚えてるか？！」
［…あ？］
『あちゃー私知らないなーんも知らない』
「この女は俺達んとこいるからよ！返して欲しけりゃ1人で来いや！！」
『イヤーヤメテーソンナコトシナイデー』
「「お前うるせぇ！！！」」


緊張感の欠片もねえ！！と少し遠くに離されてしまった。お前ら連れてきたくせになんだよ。寂しいだろ。と体育座りして指先でのの字を書く。

少し離されたにも関わらず、私の電話から聞こえたのは恐ろしく静かな声。え、待って静かな声なのになんで聞こえるの？



［手出したら殺す］
「あぁ？！」
［出さなくても殺す］



「…ん。返す」
『あ、どーも』
「今更だけどお前人質のくせに緊張感ねえな。怖くねえの？」
『人質だったのか私』
「「今更かよ」」
『つか、さっさと準備しないと来ますよ？』
「…流石にこんな早く」



「出てこいやコラァァアアアアアアアアアアア！！！」



『さっきからバイクの音してんじゃねーか。』
「「いや早すぎだろ！！！」」



※電話をかけてから３分経ってません