兄貴からのLINEはなかなか衝撃的で、少し混乱した。


[名前の父親がアイツを引き取りたいって会社まで電話してきやがった。話しつけるから今日アイツどっかに泊まらせろ]


普通の奴等なら、なにも知らない奴等なら引き取りたいって言うなら引き取ってもらえば、と思うだろう。だが、アイツを小さい頃から近くで見て来た俺達は解る。辛うじて天地も解るだろうが。

あれの父親は、幼かった俺から見ても最悪の人間だったと思う。

あの親達が離婚したと聞いた時とうとうか、と思った。あの父親は家族との距離が解らなかったんだろう。そう思えるくらい家族を蔑ろにする人だった。
あの人は仕事人間だったから、名前には無関心、母親の方が浮気して家に連れ込んでるのも何も口を出さなかった。その間名前は俺の家にいて、その事実は知らないが、小さい頃から父親の顔もアイツはまともに見ていない。むしろ、生まれてからまともに話していないのだ。

ただ、あの父親と海外に行く時に初めて言葉を交わした。


"名前、お前、これから１人だから…どうする？"


どうするも何も無いだろう。小3だぞ。あの時の名前は知り合いが死んだ事も重なってキャパオーバーしていた。その目には何も写していなく、ただただ、父親の目を見ていた。
それを見た父親は何を思ったのか、うちの両親の所へ訪れ、


"俺は海外へ行く。名前は…あんな気味悪い子供、どこでも馴染めんだろう。置いていく。"


うちの両親は普段ぽやぽやしていて頼りないのだが、やはり昔の荒い気性がその時だけ現れていた。主に母さんが（元ヤン）。そして一番に父親に突っかかって行ったのは兄貴だった。中１で普通大人に突っかかるかよと今でも思うが、兄貴は本当にその頃からアイツの保護者だった。

その後兄貴に触発された母さんも名前の父親と取っ組み合いになったのだが、親父が頑張って止めていた。そして親父が一言、


"二度と顔を見せるな。名前はうちが面倒を見る！！"


それから、あの父親は一切連絡もして来ないし中３の時一度母親が再婚したと知らせに来た時も、連絡はなかった。
兄貴が名前に「父親は死んだと思え」って常々言ってたし、アイツもいい思い出はなかったから連絡もしていなかったが、何故今頃になって？

俺はとりあえず拓海に連絡を取った。