十数年ぶりの涙
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キィ…ン
ガンッ
…それは、本当に一瞬の事だった。
言い返そうと彼を見上げた瞬間、喉元を何かが通り過ぎる。
そして何かを蹴る音がしたと思ったら…
ドォン!!!!!!!!
「きゃあ!?」
「うお!?」
「ぎゃー!!」
船から少し離れた所で何かが爆発した。
…その爆破力に皆が驚いている中、恐る恐ると首に手を伸ばす。
…ペタ
少しひんやりとした、自分の指先が触れた場所には十数年ぶりに何も無かった。
…首輪が、無い…!?
「ゾロ!サンジ!!すげぇなお前ら!!」
「こんなん朝飯前だ。」
「レディに首輪なんて似合わねぇからな。」
思わずへたりこんで、何でもないかのように話す彼等の背中を見つめていたら…麦わらを被った彼がしゃがんで私と目線を合わせる。
「な?俺達なら大丈夫だから仲間になれよ!」
彼の言葉を皮切りに、それぞれが言葉をかけてくれた。
「君みたいな可愛いレディなら大歓迎だぜ。」
「よーし、このキャプテンウソップ様について来い!」
「女の子が増えるなんて嬉しい!」
「ふふ、私も嬉しいわ。」
「もう死ぬなんて言っちゃ駄目だからな!!」
ポカンとそれを見ていたら、刀をさした彼が私の頭にぽん、と優しく手を置いた。
「…お前が嫌だっつってもこいつらは聞かねぇぞ、諦めろ。」
ニヤリと笑ったその顔が、「頼っても良い」んだと言ってくれているみたいで…
「!?お、おい!!」
『え…?』
「あー!!ゾロが泣かしたー!!」
「てめぇクソマリモ!!何してやがる!!」
「知るか、こいつが勝手に…!!」
『泣い、てる…?』
頬を触ると確かに濡れていた。
…私、泣いてる…泣けている…??
ここ数年…いや、10年以上泣いた記憶など無い。
どんなに辛くても
どんなに痛くても
どんなに悲しくても…
泣いたら更に酷い仕打ちが待っていたから、怖くて必死に我慢をしている内にいつの間にか私の身体は泣く事を忘れていた。
…なのに…
この人達は私が十数年間で作り上げた“私”と言う殻にいとも簡単にヒビをいれて割ってしまった。
「なぁなぁ、お前名前は!?」
太陽みたいな笑顔で尋ねる麦わらの彼に涙を拭いて向かい合う。
…わたしの、なまえ…?
『…私、は…』
名前…AB-536じゃなくて…
『……サクラ……』
研究所に連れて行かれて以来誰も呼んでくれなかった本当の名前を口にした。
「サクラか!いい名前だな!」
そう言ってわしゃわしゃと私の頭を撫でてくれる麦わらの彼に、私の胸はなんだかいっぱいになって…再び涙が溢れ出した。
十数年振りの涙
(泣くなよー、サクラは泣き虫だなぁ!)