十数年ぶりの涙
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『…いいんです。』
「え…?」
『これは、私が生まれて初めて自分で“選択”した事だから。』
「…。」
『…今まで私は、研究所で実験動物のような扱いを受けてきました。拒否権どころか人権すら認められず、毎日毎日調べられて、薬を飲まされて…。少しでも反抗しようものなら容赦無く殴られた。』
「酷ぇ…」
泣かない…いや、“泣けない”私の変わりにトナカイ君が瞳を潤ませてくれた。その頭をぎこちない手つきで撫でる。
『…あそこにいても、死んでるも同然だったんです。きっとあそこで命を絶っても私の死体は切り刻まれ、隅々まで調べられ、ホルマリン浸けにされるか捨てられるか…そんなの、嫌だから。』
グッ、と拳を握って辺りを見る。
『…だから、これは私が“自由”に“人間らしく”終わる為に必要な事なんです。』
とうとうトナカイ君の瞳から涙が零れた。
…なんて優しい子なんだろう。
『…ありがとう、ございました。私なんかの事を心配してくれて、怒ってくれて…泣いてくれて。最期に貴方達みたいな人に出会えて良かったです。』
深く、深く頭を下げる。
そしてそのまま去ろうとしたその時。
「なぁ、お前俺達の仲間になれよ!」
『…え?』
突然麦わらの彼が発した言葉に戸惑う。
驚いて辺りを見れば他の人達もジッ、と強い眼差しでこちらを見ていて…
『な、に言ってるんですか…さっきの話聞いてましたか?』
「おう、聞いてた。」
『だったらなんで…!』
「…死ぬなんてもったい無いぞ。」
『え?』
聞き返すと、先程の静かな雰囲気はどこへやら…麦わらの彼はニシシ、と心から楽しそうに笑った。
「この世界にはな、まだまだお前が知らない事がいっぱいあるんだ!ずっと外にいた俺でさえ驚くくらい!!海軍なんて来ても俺がぶっ飛ばしてやる!!」
だから仲間になれ、と彼は再び口にする。
…仲間?私なんかを?
一瞬、彼等と冒険する自分を頭に描いてしまい…強く頭を横に振る事でそのビジョンを消す。
駄目、そんな夢見ちゃ。叶うはずないんだから。
『…そんなの、無理に決まって…』
「……首輪の事なら心配すんな。」
『っきゃ!?』
腰に刀をさした彼が、私の身体を担いで甲板へと移動した。
すとん、と降ろされるが全く意味がわからず彼を見つめる。
「…おいクソコック、俺が首輪切り飛ばしたら出来るだけ遠くに蹴り飛ばせ。」
「あ?誰に指図してんだ。…言われなくてもわかってる。」
いつの間にか甲板に皆集まっていて…
首輪を切り飛ばす?蹴り飛ばす?そんな、外した瞬間爆発するのに…!!
『…っ死にたいんですか!?そんな事出来るわけ無いです!!』
「あ?そんなもん一秒ありゃ十分だ。」
『駄目です!!貴方達を危険に晒すわけにはいきま-…!!??』