大脱走
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一般には極秘にされていて海軍の管理下にある、とある研究所。
その研究所内はけたたましくサイレンが鳴っている。
「大変です!!AB-536が逃げ出しました!!」
「なんだと!?まだ遠くへは行っていないはずだ!!なんとしてでも連れ戻せ!!!」
「はっ!!」
敬礼をし、慌ただしく走り去る部下に男を見送る事なく踵を返した男はギリッと歯を鳴らした。
「…くそっ、せっかくの“兵器”が…!」
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『…っはぁ、はぁ、はぁ、』
いまだ鳴り止まぬサイレンの中、一人の女が研究所の屋上を目指し走っていた。
整った外見をしているが、その格好はくたびれた黒の長袖Tシャツに薄汚れた灰色のズボンを着用しており…とてもみすぼらしい。
なんとか屋上へと辿り着いた女は周囲に人がいないのを確認し、乱れた息を殺しながら恐る恐ると外へと続く扉を開けた。
『…っ…』
…十数年前、ここに連れて来られて以来滅多に見る事の無かった太陽の光に、思わず目を細める。
目が慣れてくると、目の前に広がるのはどこまでも続く、空と海の青。
しかし彼女がそれに感動している暇は無い。
早くしないとここにも研究者と海軍が来てしまう。
手早く辺りを見回した彼女は、片付け忘れられていたのであろう一本の箒を手に取り、跨がった。
「いたぞ!!!」
彼女が箒に跨がったと同時に、海軍が彼女を見つけた。
建物内への入り口には続々と海軍が集まってくる。
「捕まえろ!!」
海軍が一斉に走り寄ってくる。
『…っシルフ…』
フワ…
彼女が呟いた瞬間、箒が彼女を乗せ高く上昇した。
「!?しまった!!」
「何をしている!!撃て!!」
「で、ですが…AB-536は保護観察対象じゃ…」
「殺さなければ問題無い!!それよりもアレに逃げられる方が問題だ!!構わん、撃ち落とせ!!」
「は、はい!!!」
ダーン!ダーン!
海軍から撃たれたいくつもの弾丸が彼女を襲う。
…それを身を縮ませる事でなんとか避けていた彼女だが、一発の弾丸が彼女の左肩を撃ち抜いた。
『っ!!!』
あまりの痛みに気が遠くなる…が、ここで捕まれば二度と逃げ出す事は出来ないだろう。
痛みと出血で朦朧とする意識を叱咤しながら、彼女は振り向き研究所近くの海へと右手をかざした。
『…お願い、ウンディーネ。』
彼女が呟いた瞬間。海から高く水柱がいくつもあがり、研究所にいる人間から彼女が見えないように壁となった。
「っくそ!!!すぐ本部へ連絡しろ!!」
「了解!!」
目の前に高くそびえる水柱の壁を見忌ま忌ましそうに睨みつけながら男は舌打ちをした。
「…どこに逃げようが、お前に安息の地は無い。海軍はお前を求め血眼になり捜すからな。」
…その呟きは水柱の音で掻き消された。
大脱走
(すぐに出航の準備をしろ!!発信機の位置確認も忘れるな!!)