小さな声
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『…ん…』
気が付いたら眠っていたらしく、時計を見ると1時間程経っていた。
ザー……
『…雨?』
船内にいると言うのに、強い雨脚の音が聞こえる。
『…参ったな…』
雨と雷は苦手。
強い雨脚や空からの雷鳴は外界の音を遮断し、まるで世界に一人取り残されたかのような感覚になるから…。
…研究所にいた時、薄暗い室内に一つだけあった窓からいつも空を見上げていた。
その、唯一の“外”との繋がりである景色がどんよりとしていると何とも言えない恐怖が身体を支配し…
“私”の声は誰にも届かない。
簡単に掻き消されてしまう、小さな声に気付く人なんて…気にかけてくれる人なんて、いない…。
…物心ついた時から、雷の音に怯える私の側には誰もいなかった。
両親に「怖い」と訴えても「風で雨雲をどかせば良い」と言って無視された。
…それは出来なくも無いが、やってはいけないと村の祈祷師に言われていた。
“自分のいる場所の天候を操れば、世界の空の均衡が崩れる。すなわち、世界が崩れる恐れがある。”
多少雲を流して晴れさせる、とかなら問題無いが…大幅な天気変更は世界に影響があり、また私の身体にもかなりの負担がかかるらしい。
…現に、研究所で一度だけ天候を操らされた時には一週間目が覚めなかった。
なので、私の対策としては頭から布団を被り雷が過ぎ去るのを待つしか無いのだ。
『…大丈夫、怖くない……怖くない…。』
自分に言い聞かせるかのように呟く。
…そんな私を嘲笑うかのように雨脚は強くなり、ゴロゴロと雷が鳴り出した。
ピシャァン!!!!
『きゃっ…!』
布団の中まで雷が落ちた音が聞こえてきて、小さく悲鳴を上げる。
…あぁもう、早く天気良くなってくれないかな…
『っ、大丈夫…大丈夫…』
祈るように再び呟いた時、扉が開く気配がした。