“所有物“で”兵器”
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…4歳になったある日、目が覚めたら知らない場所だった。
「目が覚めたようだな。」
『…ここ、どこ?』
「ここは海軍の管理下にある研究所だ。お前は“保護観察対象”として研究所で預かる事になった。」
どうやら前日の夜に薬を盛られ、私は海軍に引き渡されたらしい。…実の両親に。
正直、ショックだった。
あの人達が私をよく思っていない事はわかっていたけど…何て言うか、血は繋がっているから裏切ら無いでいてくれる、と心のどこかで信じていたから…。
……“保護観察対象”だなんて名前ばかりで、実際は…海軍の、対海賊用の兵器とする為に私は日夜調べられた。
風と水を操れるなんて、海賊…いや、海を航海する人間からしたら畏怖の対象だろう。
…酷い扱いだった。
毎日よくわからない機械でデータをとられ、よくわからない薬を飲まされ、来る日も来る日も風と水を操らされ…
反抗や抵抗なんてしようものなら容赦なく殴られた。
罰として食事も与えられなかった。
“AB-536”
研究所に連れていかれた日から、それが私の名前となった。
首に嵌められた首輪は海軍の“所有物”である証。
…本当は、すぐにでも逃げ出したかった。
でも発信器と爆薬がしこまれた首輪のせいでそれは叶わなかった…。
…それから数年後。
「お前の村の人間、あの山奥から消えたらしいぞ。」
『…え…?』
「風の噂じゃ、お前からの報復が怖くて逃げ出したっつー話だ。これでお前が帰る場所も無くなったな、ははは!!」
…その言葉に、心の中で何かが壊れる音がした。
首輪のせいで、逃げ出しても誰かの迷惑にしかならない。
村が無ければ戻る場所も無い。
…この世界のどこにも“サクラ”という“人間”の居場所は無い。必要とされているのは“AB-536”という“兵器”だけ…。
涙は流れなかった。
…と言うより、泣く度に更に酷い暴力を受けていたから、それが怖くて泣くのを我慢している内に泣き方がわからなくなっていた。
泣き方も、笑い方もわからなくなった自分がますます“兵器”に近付いたみたいで怖かった。
…だからせめて、“人間”として死にたくて…私は成長して上手く力をコントロール出来るようになるのを待ち、海軍の研究所を逃げ出してきたのだ。
海軍の“所有物”で“兵器”
(あんな毎日を送っている内に、私は人間らしさをなくしてしまった。)