忘れられなかった人
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風呂場で髪を流しながら何とか真っ赤な顔を落ち着かせ、食堂へと向かう。
扉を開けると、サンジがキッチンで作業していた。
「お、来た…な……。」
『?』
私を見て何故かサンジは固まり、それに首を傾げると、深く溜め息をついた彼がゆっくりと近寄ってきた。
「…っはぁぁ…このアホ!!」
『きゃあ!?』
「ちゃんと髪乾かさねぇと風邪ひくだろ!」
私が肩に掛けていたタオルを奪い、私の頭の上から被せてサンジがガシガシと頭を拭いてきて…ちょ、痛い!!
『サンジ、痛いって!』
「うるせぇ、風邪ひくよりはマシだろ。」
『じ、自分で拭く、から…っ!!』
「!」
勢いよく顔を上げると、思っていたよりも至近距離にサンジの顔があり…そのあまりの近さに落ち着かせたばかりの私の顔は一瞬で真っ赤に戻る。
顔を逸らしたいのに、サンジの綺麗な瞳がそれを許さない。
お互いに無言で見つめ合っていた数秒が、何分にも感じられた。
「…そういや、俺お前に謝んなきゃいけねぇ事があんだよ。」
『へ?』
謝る?何を?
髪の事だったら、ナイフで切る前に「悪い」って言ってくれたし、むしろ軽くなってお風呂も楽になって私としては逆にお礼を言いたいくらいだ。
その事を伝えようと口を開いた瞬間。
タオルを引っ張られ、タオルにくるまれていた私の頭も釣られて引っ張られる。
『わ…っ!?』
……唇に触れた、柔らかい感触。
仄かにする煙草の味。
先程よりも近いサンジの顔…。
わ、私…キスされてる!?
『っ、サ、サンジ!?』
「……俺、お前の“私の事忘れて”って約束守れなかった。」
『…え…。』
「忘れようとはしたんだ。お前との最後の約束だったし…」
けど、と言葉を切ったサンジは、ふにゃりと困った様に笑った。
「クレアの事、クソ好き過ぎて無理だった。」
『!!』
「他の子とデートしてても“クレアと来たかった”とか“クレアにも見せてやりたい”とか…お前の事ばっかだったんだよ。」
「思ってたより、俺は重たいタイプらしい。」 と笑うサンジの顔が涙でぼやけて見えない。
「…まぁ、ずっとそのネックレス付けてくれてた時点でお前も約束守ってなかったみてぇだけど?」
『…っう、ん…守れなかった…ずっと、サンジの事…忘れられなかった…!!』
溢れる涙もそのままに言うと、優しく笑ったサンジの顔がゆっくりと近付いてくる。
「…愛してる。」
唇がくっつく直前、甘い声で告げられた言葉に私の瞳からはまた涙が溢れた。
忘れられなかった人
(今度こそ、ずっと一緒にいよう。)