大切な女
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掴んだ手は細く、温かい。
…本物だ。
『…な、んで…』
「…お前こそ、 何で…」
『え?』
「…っ何だよ、"ラプンツェル"って…塔に閉じ込められてるって…お得意のマジックで脱出してやるんじゃねぇのかよ!?」
クレアの瞳が揺れる。
それと同時に、彼女の胸元で光った見覚えのあるネックレス…。
それは、こいつが好き好んでここにいるわけではないし、 俺の事を忘れたわけでも無いと言う証拠で。
「…おかしいなぁ、何で愛しの婚約者殿が塔から出ているんだ?」
「『!?』」
突然怒気を含んだ声がした。
声のした方を見ると…そこにいたのは、趣味の悪い宝石を身にまとった小太りの男。
「全く、仕事を早く終わらせて正解だったよ…おいお前、その手を離せ。 」
「…あぁ?」
「聞こえなかったのか?その手を離せ、と言ったんだ。僕の大事な婚約者に触らないでくれたまえ。」
男が片手で合図をすると、兵が俺達を取り囲む。
「ちょ、ちょっと!」
「何がどうなってんのかよく分かんねぇけど…こいつら全員ぶちのめせば良いのか?」
「馬鹿、待ちなさい!!ログが溜まるのは明日の朝なの、余計な騒ぎは避けな…「おい、 海軍に今すぐ向かうよう連絡しろ。」」
「「!?」」
男の言葉に、兵が電伝虫を取り出す。
…が、それを遮る様にクレアが大声を出した。
『っお待ち下さい!!』
「どうした?」
『……勝手に塔を抜け出して、ごめんなさい。貴方が明後日に私との結婚式を挙げて下さるとお聞きして、嬉しくて…何か貴方に贈り物をしたかったの。』
「…そぉ〜かぁ〜!!」
クレアの言葉に、男はニタリと笑う。
「そぉ〜んなに嬉しく思ってくれるなら、明後日までなんて待たずに…今晩式を挙げよう。」
「な!?」
『…はい。』
嬉しそうにクレアの肩を抱く男に殺意が湧いた。
しかし俺が動き出すより早く、 一人の女性が俺達の前に立ちはだかる。
女性が指笛を鳴らすと、一瞬にして俺達は彼女が呼んだ仲間に囲まれてしまった。
『…では、貴方は結婚式の準備に集中して下さいませ。彼等の始末は私にお任せを…海軍に連絡するのは、彼等が動けなくなってからでも遅くは無いかと。…頼んだわよ。』
こちらを全く見ずにクレアは女の頭を撫で、男と腕を組んで去っていく。
「…このまま、大人しくついてきて下さい。」
「!?」
俺達にしか聞こえない声で囁かれた言葉。
それに全員が何かを感じ取り、彼女が導くままついていった。