我慢
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部屋の扉がノックされ、返事をするとそこからお付きの者が入ってくる。
「クレア様、ご準備はよろしいですか?」
『…えぇ、ありがとう。』
今日は二ヶ月に一度の街へ降りられる日。
…と言うのも、普段の私は軟禁状態なのだ。
街へ降りられるのは婚約者が二ヶ月に一度仕事で街を離れる時だけ。
それだって許されてるわけではない。お付きの者に協力してもらい、こっそり抜け出しているのだ。
なんでも、好きな物は大切にしまっておきたいタイプだとか。
連れて来られて三年が経ったが、まだ"花嫁修業中”と言う名目で結婚はしていない。
…それも、そろそろ時間の問題だが。
婚約者は私を自分の理想の女性にしたいらしく、容姿から立ち振舞いから細かく言われている。
その内の一つに、髪の毛を伸ばせとの命令があり…この三年間、後ろ髪は一度も切っていない。
こうしている内に、私はどんどん婚約者好みの"人形"になっているようで…今更それを嘆いたりはしないけど。
「…恐らく、今日が最後の外出になります。」
『……そう。』
「あの男は、明後日には結婚式を挙げ…クレア様を妻に迎えるつもりです。」
『…明後日…。』
「…今なら…今なら、まだ私が逃がしてあげられます!」
『…馬鹿ね、そんな事したら貴女の命が危ないわ。』
「…っ一度は諦めかけたこの命!救って下さったクレア様の為なら一…!!」
そう叫ぶ彼女の口を、人差し指をあてて塞ぐ。
『ありがとう、その気持ちだけで十分よ。」
「ですが…式を挙げてしまえば、貴女は二度と外には出られなくなるんですよ!?」
『良いの。…私はもう、 自由は諦めているから。』
『行きましょう』と声をかけ、静かに部屋を出る。
私が我慢すれば、全部丸く収まるんだ。
私のわがままで周囲の人を巻き込むなんて出来ない。
…これで、良いんだ。
我慢
(…大丈夫、辛くなんか無い。)