悲しいお願い
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幸せは、ある日呆気なく終わりを迎えた。
「…やっと見付けた。」
『え…!!』
閉店後のバラティエ。
後片付け等を手伝っていたら突然ドアが開き… そこにいたのは、あの領主。
「まさかこんな所にいるとはな…お陰で探すのに随分と時間がかかったよ。」
『…っ、』
「…うちの専属マジシャンに何の用だ。」
ゼフさんが私を後ろに隠してくれたけど、男は鼻で笑いながら口を開いた。
「専属マジシャン?ふざけるのもいい加減にしてもらいたい。そいつは私の息子の嫁になる女だ。」
「…クレアは同意してねぇみたいだが?」
「同意なんか必要無い。そいつの意思は関係無いからな。」
まるで私を物か何かの様に述べる男が怖くて、ゼフさんの服を強く掴む。
それを見た男はニヤリと口角を上げた。
「…知ってるか、クレア。今こちらに海軍の船が向かっている。」
『!?』
「私がうっかり”息子の婚約者を誘拐した奴等が分かった”と連絡してしまったからなぁ?」
「…っクソが…。」
ゼフさんが忌々しそうに呟く。海軍?何で?
…私の、せい…?
「悪く思わないでくれ、私くらい権力と立場がある人間だと連絡一つで海軍が動いてくれるんだよ。」
『私、の、せいで…?』
「…違う。お前のせいじゃない。」
ゼフさんが頭を撫でてくれて、 他のクルーも…サンジも、私を守る様に前へ出てくれた。
「ははは、良いねぇ。仲間意識ってやつかい?」
「…悪いが、誰が来てもこいつが頷くまでは渡す気はねぇ。お引き取り願おうか。」
『…待って下さい。』
一触即発状態の中、男の前へと歩み寄る。
『…一緒に、行きます。』
「クレア!?」
『いいんです。いつまでも逃げていられないし… どうせ、遅かれ早かれこうなる運命だったんです。』
「…物分かりが良くて助かるよ。」
『逃げませんから…最後に皆さんへ挨拶と、荷物をまとめる時間を下さい。』
「いいだろう。…なら私はその間に、海軍に"誘拐では無かった"と連絡しておくとしよう。寛容な私に感謝するんだな。」
そう言って男が自分の船へ戻った瞬間、皆が私を取り囲む。
「っクレア!!」
『今まで、ありがとうございました。」
「何でだよ!?」
『…これが一番丸く収まるんです。』
「んなわけ…」
『…お願いします。私の最後のわがまま、聞いてください。』
溢れそうになる涙をこらえ、笑顔を作って顔を上げた。
『私にとっての"大切な場所"、守らせて下さい。』
「「!!」」
『私なら大丈夫ですから。いざとなったらマジックで逃げ出してやりますよ!』
「……」
『ぜ、絶対、また遊びに来ますから!!』
情けない事に、視界は涙で滲むし声も震える。
『さ、さて、わ、たし、荷物をまとめてきます!!サンジ、手伝ってくれる?』
「…。」
誰も何も言わない。
…これで良いんだ、これしかバラティエを守る方法は無い。