誤魔化す
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『ドンキホーテ様がお風邪を引いてしまわれます!!』
「嬢ちゃんとは鍛え方が違ェんだ、風邪なんざ引かねェよ。」
『でも…!』
「フフフ…男からの好意は素直に受け取るモンだぜ?」
『っなら、せめて前を留めて下さい!!』
「フフ、フフフ!!」
そう言って俺のシャツに手を伸ばす嬢ちゃんに笑いが込み上げた。
今まで相手にしてきた女はここで「じゃあ二人で温まりましょう」なんて言いながら擦り寄ってくる奴がほとんどだったからな…新鮮だ。
『…何を笑っていらっしゃるんですか?』
「いや、嬢ちゃんは可愛いなァと。」
『か、可愛…!?』
「フフフ…一番上は留めなくて良い。」
そう言って真っ赤な嬢ちゃんの手をそっと握れば、更に顔を真っ赤にする。
その初々しい様が面白くて、そのまま握った手を持ち上げて唇を寄せた。
『な!!??』
「フフ、フフフ!!」
『…からかわれては困ります…。』
…そう呟いた嬢ちゃんの顔はやっぱり笑顔だった。
それを見て、昼間部下から嬢ちゃんについて調べさせた時の報告を思い出す。
「…いつも笑顔のシンデレラ、ね…。」
『え?』
「いや、そろそろ酒を作ってくれるか?昼間のがもう一回飲みてェ。」
『あ、はい!上着ありがとうございました!』
俺に上着を返しながらカウンターへと向かう嬢ちゃんを見送りながら再び思考を部下から受けた報告へと戻す。
“あの娘は領主と不倫相手の間に産まれた子ども”
“領主の本妻は彼女が幸せになる事が許せない”
“だから屋敷に縛り付けており、商船が来た時には脱走防止に部屋に閉じこめられている”
“あの娘に優しくすると本妻の怒りを買い、すぐに町から追い出される”
“だからこの町にあの娘の味方はいない”
…聞けば聞く程本妻とやらが面倒なタイプの女なんだとわかる。
主人が不倫したのはそいつ自身の問題だろ。嬢ちゃんに当たるのは話が違う。
…まァ、俺が不倫についてどうこう言うのもおかしな話だな。
“どんなに辛くてもあの娘はいつも笑っている”
“どんなに町人が冷たく接しても嫌な顔や悲しそうな顔一つしない”
嬢ちゃんの笑顔が引っ掛かってたのはそういう事か。
そりゃ自己防衛的な笑顔だろ。
それ以上暴言暴力を受けないように。
それ以上嫌われないように。
「…健気じゃねェか。」
万に一つも有り得ねェが、もし俺が同じ立場だったら町ごと消してる。
嬢ちゃんにはそれが無理だとしても、本妻を殺す事くらいは可能だろう。
…それなのに嬢ちゃんは自分が我慢する道を選んだ。