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『っはぁ、はぁ…』
ドンキホーテ様達の前から逃げるように走り去ってから、ずっと走っていたら流石に体力に限界が来て…壁に手をつき胸に手を当てる。
空からは激しい雨が降っていたけど、それを気にする余裕なんて無かった私は闇雲に雨の中を走っていた。
…そうでもしなきゃ、大声で泣き出してしまいそうだったから…。
『はぁ…っ…』
呼吸が落ち着いてくると、思い出されるのは…あのキスシーン。
ドンキホーテ様のお気持ちを信じたいのに、それが出来る程の自信が私にはなくて…。
…ネガティブの闇はいとも簡単に私を飲み込んだ。
“彼は優しい人”
“だから私をあの屋敷から助け出してくれた”
“愛される事を知らない私を可哀想に思って、好きだとか恋人だとか言ってくれただけ”
“あの女性みたいに魅力的じゃない私なんかに、ドンキホーテ様が本気になるワケがない”
『…っ全部、私に対する同情…?』
呟いてみると、ナイフを突き立てられたかのような痛みが胸を襲う。
痛くて苦しくて悲しくて上手く息が吸えない。
『……さむ、い……』
容赦無く叩きつける雨粒は私の全身をずぶ濡れにした。
今更な気もするけれど、とりあえず雨がしの…げる…場…所…に……
バシャン!
…一歩踏み出した瞬間、視界がぐにゃりと歪んで私はその場に倒れ込む。
寒くて寒くて身体は震えるのに、自身を抱きしめるような体勢にもなれない程身体が怠い…風邪、振り返したのかな…。
…もし…このまま私が死んだら、ドンキホーテ様は悲しんでくれるのだろうか?
そんな考えが笑えないくらい身体がガタガタと震える。
意識も朦朧としてきた。
…諦めにも似た感情が心を支配して、落ちてくる瞼に抗う事なくそのまま瞳を閉じる。
『ド…ンキ…ホ…テ……さ…ま…』
瞼に浮かぶのは、優しい笑顔。
例え全て嘘だったとしても、同情だったとしても…好きだって仰って下さって嬉しかったです。
こんな形でお別れになるなんて思っていなかったけれど…
…それでも、私はすごく幸せでした。
ありがとう、さようなら。
(頬を伝うのは、雨か涙か…)