決行は明日
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4日目もあっという間に過ぎ去り、迎えた5日目。
…ドンキホーテ様と酒場でお話出来る、最後の夜。
『…明日は、何時頃島を出られるんですか?』
「あ?…昼頃…12時くらいだな。」
『そうですか…お昼休憩が取れましたら、お見送りに伺いますね!』
「あァ…フッフッフッ…」
何故か突然笑い出したドンキホーテ様に首を傾げていると、その大きい手が私の頬に触れた。
…刹那、高鳴る鼓動。
『な、なんですか…?』
「いンや…最初に会った時に比べて、随分と表情が豊かになったなァと。」
『??』
「フフフ…“寂しい”って顔に書いてあるぜ?」
『!!』
慌てて頬を両手で押さえる。
そんな私を見てドンキホーテ様はまた楽しそうに笑う。
「フッフッフッ!」
『…もう。からかわないでください。』
ここ数日で知った事。
…ドンキホーテ様は、意外と子どもっぽい所があると言う事。
その、悪戯っ子みたいに笑う笑顔も好きだと思った。
…この気持ちは芽生えた時から急速に成長し、もう私にはどうにも出来ないので諦めた。
ドンキホーテ様の事が好き。
…想いを告げる気は無いけど、ひっそりと想わせていただこう。
なんて思っていたら、ドンキホーテ様の口から出て来た言葉に酷く驚いた。
「…そういやァ、領主がいなくなったらしいな。」
『な、何故それを…!?』
「フフフ…人の口は存外軽いモンだぜ?」
『……そう、ですか…。』
ドンキホーテ様の言葉に苦笑いを浮かべる。屋敷内の人間しか知らないはずなのに……まぁ、こんな小さな島の問題なんて、ドンキホーテ様が知った所で大して問題では無いだろう。
今朝、領主…血縁関係上は私の父親にあたる男が屋敷から姿を消した。
書き置きには屋敷の権限や財産を全て本妻に譲る代わりに、自分を探さないで欲しいと言う事だけが書いてあったらしい。
…あの人からしたら、“私”の存在なんて疎ましい以外の何物でもないだろう。
“私”がいなければ屋敷で肩身の狭い思いをする事もなかった。
“私”がいなければ平和な毎日が送れていた。
だから、書き置きの中に“私”への言葉が無いのなんて当たり前なのに…何故だか心は少しだけ痛んだ。
…こっそり立ち聞きしてしまったメイド達の話では、最近屋敷に出入りしていた果物屋の女性と逃げたらしい。
“私”みたいな存在を作らない為に、身分も財産も捨てたのだとしたら賢明な判断だなぁ、なんてどこか他人事のように私はその事実を受け入れていた。
…本当に、捨てられたのだと言う事実も…。