言葉の魔法
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ドンキホーテ様と過ごす時間は本当に楽しかった。
最初はすごく緊張していたけど、ドンキホーテ様はまるでその緊張を解すかのように優しくして下さって…。
…初めて“楽しい”だなんて感情を経験した気がする。
本当の笑い方がわからなくなってしまった私は相変わらず愛想笑いしか浮かべられなかったけど、それでも楽しかったのは事実だ。
「…と、もうこんな時間か。」
ドンキホーテ様が呟いて初めて時計を見ると、お会いしてから2時間が経っていた。
…こんなに時間が経つのが早いと感じたのも初めてだ。
「そろそろ帰るか…フフフ、明日もあるしな。」
『…はい。』
“明日”かぁ、なんて考えていたらドンキホーテ様に大きめな紙袋を渡された。
「やるよ。」
『え?』
「フフフ…流石にこの季節にその格好じゃ寒そうだからなァ。」
ドンキホーテ様に一言断ってから紙袋の中身を拝見させていただくと、そこに入っていたのはいくつかのインナーとコートで…って!!
「嬢ちゃんの好みがわかんなかったからな、適当に見繕ってきた。」
好きなの持っていけ、とサラリと言うドンキホーテ様だけど…量が有りすぎる…!!
『い、いただけません!』
「金なら気にすんな。」
『そういう問題では無くて…』
「…じゃあアレだ。しばらくの間毎晩相手してもらうから、それの代金だと思ってくれりゃあ良い。」
『でも…』
「フフフ…風邪引いて会えない、なんて事になったらつまんねェからな。」
何を言っても聞いてくれそうに無いドンキホーテ様に内心頭を抱えた。
…金銭感覚が違い過ぎる…!!
「いいから、ほらどれか着てみろよ。」
これなんかどうだ?とドンキホーテ様が差し出してくれたのは淡いピンクのコート。
…こんな事思ったら失礼なのだけれど、袋の中は普通に可愛い物ばかりで少し驚いた。「見繕った」と言う言葉は本当だったんだ…。
なんて言うか、彼はもっと派手な物を好むと思っていた。
差し出されたコートに袖を通すと、ニヤニヤした笑みでは無くとても優しい笑みを浮かべて私の頭を撫でてきたドンキホーテ様。
「…似合うじゃねェか。」
『あ、ありがとう、ございます…。』
頬に熱が集中するのがわかる。
…産まれてから今までの間になくしてしまったと思っていた私の“人間らしさ”を、ドンキホーテ様はたった数時間で引き出してしまった。
楽しい、照れる、嬉しい…そんな感情なんて一生経験しないと思っていたのに。