初恋は実らない
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『ホラ、甲板ニ行コウヨ!』
「…相変わらず話逸らすの下手くそだな。」
くくく、と笑いながらローが距離を詰めてきて…ローが一歩進めば、私は一歩下がる。それを繰り返していた。
…トン
『…!!』
「…行き止まりだ。」
背中にドアが当たり、ツゥーッと冷たい汗が身体を伝う。
た、確かここは出る時は引き戸だったはず…後ろ手で開けて、一瞬の内に振り返って外に出れば…!!
『あ、あの日の事は酔っ払いの戯れ言と受け取ってくれません?』
ローにバレないように話し掛けながらゆっくりとドアノブに手をかけ、静かに回す。
…せー…のっ!!!
バン!!!!!!
「…っくく…残念だったな?」
後ろから私の顔の横を通ってドアを押さえ付ける、ローの腕。
ドアを開けながら振り返った瞬間、ローの腕が力いっぱいドアを閉め返したのだ。
「…桜。」
『~っ!!』
ローは後ろから耳元に唇を寄せ、いつもより低い声で私の名前を囁いた。
…彼が好きなんだと自覚している私にとってこれは刺激が強すぎる…!!
う、うわわわわ近い近い近い!!
「…なぁ、」
『は、はい!!』
「『酔っ払いの戯れ言と受け取ってくれ』って事は…お前、あの夜の事全部覚えてんのか?」
『!!』
し、しまった!!逃げたいあまりに墓穴掘った!!
「どうなんだ。」
『…覚エテ無イヨー』
「覚えてんだな。」
…さっき掘った墓穴に今すぐ入りたい。そして埋まってしまいたい。
「…俺を好きだと言った事は…」
『…っ!!』
やはり指摘されたあの告白の事に思いっきり動揺してしまった。
それと同時に不安になる。
ローは、あんなにたくさんのクルーを引き連れて大きな夢に向かって進んでいて…
…それなのに、私はそんなローに恋愛云々言って良いの?邪魔にしかならないんじゃ…第一、私なんかに好かれたってローは困るだろう。
きっと、フッてもローは変わらず接してくれる。けど…私はそう出来る自信が無い。
…何も無かったかのように振る舞える程、軽い気持ちじゃないから…。
それに…私はここを追い出されたら行くあてなんて無い。
「そんな気持ちを持っている奴は邪魔だ」なんて言われてしまったら、私はまた一人ぼっち…
『…っ…』
怖くて身体が震える。
…人がいる温かさを知ってしまったから。
「…桜?」
黙った私にローが優しく声をかけてくる。
…フラれたら、こんな事も無くなるんだ…
『…ロー…』
…それなら、
『…あれは、』
…この気持ちは、
『友達として、だよ…?』
…心の奥底に閉まって、鍵をかけてしまおう。
「…あ?」
『だ、から、忘れて…?…お願い。』
お願い。じゃなきゃ私は貴方の側にいれなくなってしまう。
「お前、」
『ほ、ほら!皆さん待たせちゃ悪いし、早く行こう!私先に行ってる!!』
「あ、おい!!」
ドアを押さえるローの腕の力が緩んだのを見計らって、ドアを開けて外に出た。
『…大丈夫、大丈夫…』
きっとこの想いを抱えたままローと一緒にいる事はすごく辛い事なのかもしれない。
それでも、一緒にいられなくなるくらいならそんな辛さいくらでも我慢する。
…大好きな貴方の邪魔はしたくない、から…。
初恋は実らない、って本当みたい
(ローの能力でこの気持ちを取り出して捨ててくれないかな。)
(……あぁ、やっぱり貴方に頼ってしまう。)