温かくて暖かい。
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『………ん…………?』
…気が付いたらベッドに横になっていた。
『………わ、たし……?』
上手く働かない頭で記憶を辿ってみて、なんとか思い出した。
…倒れたんだ、私…。
全身が怠くて動けない…多分、力を使い過ぎたんだと思う。
昔から力を使うと疲れていた。
滅多に使わないから身体が慣れていないと言うのもあるが、何せ操る物は“風”という自然だ。
自然に吹いている物を無理矢理捩曲げて操るとなると、身体にそれ相応の負担がかかる。
少しの間使う分には、ちょっと疲れるくらいで済むんだけど…昼間は流石に使いすぎたと自分でも思う。
勢いよく飛んで来る大砲の球を止めるのも、向かってくる大きな船を食い止めるのも…今まで使った事が無いレベルの力を使った。
……限界を越えると倒れるのか、覚えておこう。
今こうして私がベッドに寝ているという事は、敵船はなんとかなったのだろう。良かった…。
『……あれ…?』
ホッと一息着いてから気付いたが、右手がやたらと温かい。
視線だけでそちらを見遣れば…
『…ロー…?』
私の手を握っていたのはローで…彼はベッドのすぐ横に置いた椅子に座りながら、器用に眠っていた。
…ずっと、手握っててくれたのかな…。
なんだかその事がとても嬉しくて、少し力を込めてローの手を握り返してみる。
「…ん…気が付いたか。」
本当にちょっとしか力入れて無いのに、ローはすぐ目を覚ました。
寝起き特有の掠れた声で尋ねられ、心臓が跳ねる。
『う、うん…心配かけてごめんね?』
「っくく…予想通りの反応だな。」
『え?』
「なんでもねぇ。…どこか異常あるか?」
『……身体が怠くて動けない。』
私の脈拍とかを手慣れた様子で調べるローにそう返すと、小さく溜め息をつかれた。
「…今までこうなった事は?」
『…力、使う度に疲れてはいたけど…ここまでは初めて…。』
「だろうな。今回は明らかに力の使いすぎだ。」
『うん…私もそう思う…。』
苦笑いしながらそう言うと、ローは私の手を握る力を強くした。
「船を守ってくれた事は礼を言う…が、あんま心配させんな…馬鹿。」
言葉はいつも通りなんだけれど、その声はローにしては珍しく弱々しくて…きっと、私が寝ている間ずっと側にいてくれたんだろう。
『…うん。ごめんなさい…。』
「分かれば良い。…お前、もう無理すんなよ。」
『え?』
「また倒れられたら俺の寿命が縮む。」
『…でも、私だって皆を守りたいよ。』
「っくく、言うと思った。」
私の答えを予測していたらしく、ローは呆れたように笑った。
「けど、少しは自分の心配をしてくれ。…頼む。」
『!!…ぜ、善処、します…。』
ローが…あのローが「頼む」って…!?
有り得ないに近い出来事に動揺していると、ローが欠伸をしてからベッドに潜り込んできた。
『…ロー?』
「…うるせぇ。俺は寝る。」
ぎゅっと抱きしめられて私の心臓はバクバクしている。
…けど、きっとすごく心配してくれたんだ。
そう考えたらなんだかすごく胸の奥がくすぐったくて、温かくて…。
ローが寝たのを確認してから、怠くて動かない身体を無理矢理少しずつ動かし、ローと向かい合わせになるようにする。
『…ありがとう、ロー。私、ローに会えて良かった。…………大好き、です。』
…呟いてから恥ずかしくなった私は、目を閉じて再び夢の世界へと逃げる事にした。
温かくて暖かい。
(………寝たか。ったく…そういう事は起きてる時に言えよ…。)