何に祈る?
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風を操って敵戦の攻撃を防いでいてくれた桜の身体が突然傾いた。
その時、クルーに呼ばれてきたであろう船長が丁度船内から出て来て、俺が動くより早く間一髪で桜を抱き留める。
…船長の顔には柄にもなく焦りの色が見えていた。
直ぐさま桜の脈拍等を測る船長に対し、向かい風が吹かなくなった事で敵はすぐそこまで近付いてきていて……面倒だが久々に戦闘になるか?
そう思った時だった。
「…“ROOM”」
敵船が真横について、今にも敵がこちらへと飛び移ってきそうだったその瞬間、船長の作り出したサークルが敵船を包む。
そして器用に片手で桜を抱き支えながら船長は敵船に向かって数回刀を振った。
…あーあ、終わったなあいつら。
「!?う、うわぁぁぁぁ船がぁぁぁぁ!!」
「お、俺の身体ぁぁ!?」
ギャーギャー叫ぶ奴らを乗せながら敵船は沈んで行く。…ご愁傷様。
「良いんですか、金品奪わなくて。」
あまりにあっさりとついた決着に溜め息をつきながら船長に尋ねる。
…まぁ、答えは大体予想がつくが。
「引き上げたかったら引き上げろ。…俺はこいつを部屋に運ぶ。後で水とタオル持って来い。」
「…了解。」
やはりな。
桜が仲間になってしばらく経つが、意識を失うなんて事は今回が初めてだ。
元々(無自覚だが)桜を溺愛している船長は、今は金品なんぞに興味は無い。
…いや、興味が無いと言うより興味を持つ余裕が無いと言うべきか。
…まぁ、かく言う俺も、冷静に状況を分析しているように見せているだけで内心気が気じゃないのだが。本当なら金品の引き上げとか放り出してあいつの心配をしたい…が、航海するには金が必要だ。奪えるもんは奪っとかないとやっていけない。
桜の事は船長に任せて、俺は彼女が心配でうろたえまくってるクルーをどうにかしてまとめなければ。
柄にも無く、桜の無事を祈りながら俺は船長の見送った。
何に祈るって?そんなの、我等が船長に決まってる。
(…しかし、本当に船長があんなに焦っている姿は初めて見たな…)
(……………早く元気になれよ、桜…。)