全部熱のせい
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「…口元まで運んでやる。冷ますのは自分でやれ。」
『えー…』
「うるせぇ。…ほら。」
そう言って粥を掬ったスプーンを口元まで運んでやれば、桜は数回息を吹き掛けた後ゆっくりとスプーンをくわえた。
『…おいしい…』
「そりゃ良かったな。」
『うん。…ふふ、ローが食べさせてくれるから更に美味しく感じる。』
クスクスと少し恥ずかしそうに笑う桜にクラリと眩暈を感じた。
…っの、天然小悪魔が…!!
『…ロー…?』
「…なんでもねぇ。もう一回口開けろ。」
今にも押し倒してしまいそうなのをグッと我慢して粥を桜の口元へと運んで行く。
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「…おい、いい加減飲みやがれ。」
なんとか半分くらいは食べた桜を着替えさせ、薬を渡したのが10分前。
いまだにこいつは薬とにらめっこ中だ。
『…薬、嫌い…』
「錠剤が嫌なら粉薬にしてやろうか?」
『どちらにしろ嫌い。』
「………てめぇ、あんま駄々こねてるとバラすぞ。」
『いっその事バラしてこっそり胃に入れといて欲しいくらいだよ…』
薬が苦手らしい桜は泣きそうな顔で俯く。
………仕方ねぇ。まぁ移りはしねぇだろ。
「……。」
『え?』
無言で薬と水を奪い取り、呆気に取られている桜を横目に水と薬を口に含んだ。
…そして、
『…ん!?』
生温くなった水と薬を桜へと口移しする。
ゴクリ、と飲み込んだのを確認してからゆっくりと唇を離した。
「…飲めたな。」
『い、いいいきなりなんて…もうっ!ば、馬鹿!!』
「あ゙?てめぇがいつまで経っても飲もうとしねぇから手伝ってやったんだろうが。」
『だからって…!!』
「…んな事より、まだ足りねぇ。」
『へ?…!!』
怒る桜の後頭部に手を回し、今度は舌を捩込み深くキスをする。
そのまま口内を味わうかのように動いていれば、次第に桜の口からは甘ったるい声が漏れだした。
『…ふぁ、』
恥ずかしさと息苦しさからか、強く閉じられた桜の瞳の端から涙が一粒零れる。
唇を離し、それを舌で舐め取ってから顔を離した。
「…大丈夫か?」
『…っだ、誰の、せいだと…!』
「っくく…俺だな。」
肩で息をする桜の背中をさすってやりながらも口には笑みが浮かぶ。
…さっきの泣き顔はなかなか良かった。
こいつが健康体そのものだったらあのまま押し倒して確実に鳴かせてたな。
『…なんか悪い事、考えてない?』
「気のせいだ。ほら、寝ろ。」
非難めいた視線を送ってくる桜の肩を押してベッドに横にさせる。
俺はベッドのすぐ側にイスを置き、適当に選んだ本を開いた。
『…側にいてくれるの?』
「あ?さっきそう言っただろ。」
『…えへへ、ありがとう。』
さっきまで怒ってたくせに、今は本当に嬉しそうに笑う桜に深い溜め息を一つついた。
…やっぱ今すぐ襲ってやろうか…いや、今はまずい。仮にも相手は病人だ。
『…ロー…』
「…なんだ。」
『…大好き……』
うとうととしながら桜が呟いた言葉に不覚にも少し心臓が高鳴った。
…意識が朦朧としているこいつは本当にタチが悪い。
しばらくして寝息を立てはじめた桜の額に水で絞ったタオルを置いてやり、再びその唇に軽くキスをした。
「…風邪が治ったら覚悟しろよ。」
…そう言った後、俺は少し固くなった握り飯に手を付けた。
全部熱のせい。
(…やっぱ桜の飯の方が美味いな。)