全部熱のせい
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礼の言葉を呟いた桜。
笑ってはいるが、やはり少し苦しそうだな…。
この熱じゃ2、3日は絶対安静…いや、足首の事もあるし、1週間はベッドの上にいさせよう。
…こいつは働き過ぎだと思う。
俺の飯以外にも食事当番のクルーも手伝ってるみてぇだし、甲板の掃除だってそうだ。
他にもちょくちょくクルーの手伝いをしている上に、こちらの世界の事をきちんと学びたいとか言って俺から本を借りては勉強している。
疲れてんのに『大丈夫』と笑うこいつに何回舌打ちした事か。
…本人は昨日甲板掃除でびしょ濡れになったのに風呂に入らなかったから風邪引いたのだと思ってるみてぇだが、実際は溜まってた疲れが爆発したんだろ。
汗で張り付いた前髪を横に流してやりながら看病のスケジュールを立てる。
飯食わせて、着替えさせて…とにかく薬だ。
解熱剤と咳止めと…一応胃を保護する薬も飲ませとくか。
そこまで考えた所で、控え目にドアをノックする音が聞こえた。
入室を許可すると食事の乗った盆を持ったペンギンと、タライとタオルを持ったベポが静かに中へと入ってくる。
「食事、ここに置いておきます。」
「あぁ。ベポ、タライは枕元に置け。」
「アイアーイ…桜大丈夫??」
『うん…大丈夫、ちょっと熱出ただけだから。』
でかい身体を縮こませて心配そうに桜を見つめるベポに、笑って答えた桜に内心何回目かわからない舌打ちをする。
…39度のどこが“ちょっと”なんだ。
しかし、こいつの気持ちを無下にするのも気が引ける。
しかたねぇ、今回はそういう事にしといてやるか。
「…ただの風邪だ、心配いらねぇ。」
「キャプテン…。」
「一週間もすりゃ完治する。けどこいつ、足首捻挫してるからしばらくは重たい物持たせるなよ。」
「捻挫?」
「ああ。多分甲板掃除してる時に捻ったんだろ。“皆に心配かけたくない”から黙ってたんだと。」
『ちょ、ロー!!』
俺の返事にペンギンは「あの時か…」と何やら一人納得し、桜に謝った。
『そ、そんな!私が勝手にすっ転んだんだから気にしないで!!』
「いや、もう少し気遣かってやるべきだった。」
『ううん!だって甲板掃除楽しかったから!』
「…とにかく、また何かあったら呼ぶ。俺が良いと言うまでここには近付くな。」
「キャプテン、なんで?」
「…万が一お前らに風邪でも移してみろ、泣いて謝る桜が目に浮かぶ。」
『う、うん!ごめんね、移したくないから…』
そう言われれば二人は納得して部屋を出て行く…ベポはかなり後ろ髪引かれていたが。
桜の背に腕を回し、起こしてやる。
それから薬を用意し、イスをベッドの横につけて腰掛けて粥を桜に差し出すが困ったように眉間にシワを寄せた。
『…食欲無い…』
「少しで良いから食え、じゃねぇと薬が飲めねぇだろ。」
『…はーい…』
渋々と粥に手をつける桜だが…熱のせいか、その手つきは覚束なくて見ていて危なっかしい。
「…チッ…貸せ。」
力の入っていない手からスプーンを取り上げ、粥の入った皿を自分の膝の上へと移す。
…柄じゃねぇのは百も承知だが、こんなんで皿ひっくり返しでもされたら面倒だからな。
『…ロー、食べさせてくれるの…?』
「…ああ。」
『…私、猫舌だからフーフーして冷ましてね?』
「な…!?」
突然の桜の申し出に思わず声が出た…が、こいつは今高熱で意識が朦朧としてるんだ。その証拠に少し喋り方が幼い。