全部熱のせい
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甲板掃除をして足首を捻った翌日。
『っくしゅん!!』
「…風邪だな。」
そういうローの言葉に妙に納得出来た。
だって、頭がボーッとするし、くしゃみや咳は止まらないし、身体は怠いし、寒気もする。
「ったく、昨日あんだけ濡れてたのに風呂入んねぇからだ。」
『だ、だって…この足だし、それに…』
「それに?」
『そ、それに…』
私が言い淀んでいると、ローはニヤリと悪い笑みを浮かべた。
「あぁ、昨日はお前…気ぃ失ったもんな。」
『ば、馬鹿!!』
「っくく、ちゃんと足は気遣かってやったじゃねぇか。」
『そういう問題じゃない!!』
…身体が怠いのは絶対風邪のせいだけじゃない。むしろ8割ローのせいだ!
『ッゲホゲホ!!』
「大声出すからだ、馬鹿。」
『出させたのはローだもん…。』
「わかったわかった。ほら、寝てろ。」
肩を押されてゆっくりベッドに横になる。
…あ、でも…
『ロー…私、手術室で寝る。』
「は?」
『だって私がここで寝たら、ローに風邪移しちゃう…』
「…お前、昨日あんだけ身体に教え込んでやったのにまだそんな事言うか?」
『だ、だって…』
「いいからお前は黙って休め。」
『でも…』
「お前と俺とじゃ鍛え方が違ぇ。移りゃしねぇよ。」
『……ありがとう。』
ローって鍛えてたの?いつ?なんて質問は飲み込み、素直に御礼を述べれば小さく笑ったローが頭を撫でてくれた。
「!?っの馬鹿!!」
『え?』
「人に風邪移す心配する前に自分の心配しやがれ!!」
何故か怒り出すローに全くついていけないのは、私の頭が先程よりボーッとしてきたからかもしれない。
「…チッ、39度くらいか…」
『…な、にが?』
「お前の熱だ馬鹿。」
『さっきから馬鹿って言いす……39度?』
ローの口から出た熱に思わず聞き返す。
39度って…人生で一番高い熱だわ…
『…なんで熱ってわかった瞬間更に怠くなるんだろう。』
「身体が自分の状態を自覚するからだろ。水と朝飯用意してくる、ちょっと待っ…!」
『…どうしたの?』
「お前がどうした。」
『?』
「…俺の服、掴んでる。」
『!!』
ローに指摘されて自分の手を見れば無意識にしっかりとローのパーカーを掴んでいた。
『ごごごごめん!!!!』
「…。」
これはあれだ。風邪引いたから心細くなってるだけだようんきっとそう!
私の謝罪に無言だったローは、ベッドに腰を下ろして電伝虫へと手を伸ばした。
「…ペンギン、聞こえるか。」
【はい。】
「俺の部屋に水と粥持って来い。あと水入れたタライとタオルもだ。桜が熱出した。」
【え!?わ、わかりました。船長の分の朝食もいりますか?】
「俺はいらねぇ。」
『…ッゲホ、ロー駄目だよ、食べなきゃ…』
「………チッ……俺の分も持って来い。」
【了解。】
電伝虫を切った後、ローが優しく私の手を握った。
「…今日は一日側にいてやるから安心しろ。」
『…あ…』
そう言ったローに、少し涙腺が緩む。
…本当に側にいてくれるんだ…。
『…ありがとう…』
そう呟けばローは小さく笑ってくれた。