揺れるのは
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なんとか笑顔を作って甲板に行けば、皆さんが自己紹介をしてくれてからすぐに始まった私の歓迎会と言う名の宴。
始まった直後から皆さんえらい勢いで飲んでいらっしゃいます。
私はと言うと、皆さんの輪から少し外れた所でこっそりとジュースを飲んでいる。
…お酒には悪い記憶しか無い。
それに、今酔ってしまったら私は確実にローに自分の本心を全て話してしまうだろう。
ローはと言えば、私と同じく少し離れた所で時々クルーの人達に絡まれながら飲んでいた。
「桜~!!」
『わ!?』
ローを見つめていたら、お酒の匂いをさせながらベポさんが体当たりしてきた。(多分本人は抱き着いた程度の認識なんだろうけど、体格差がありすぎて私からしたら体当たりだ。)
「なんでこんな所にいるのー?あっちで一緒に飲もうよー!」
『あはは…ここで皆さんを見ているだけで十分楽しいですから…。』
ベポさんが言う“あちら”を見て苦笑いしつつ答える。
申し訳無いがあちらに混ざる勇気は無い。だってなんか脱いでる人いるし。
「桜ー!!飲んでるかー!?」
『うわぁ!?』
ベポさんに引き続き、今度はシャチさんに体当たりされた。身体が痛い。
しかもシャチさん、ベポさん以上にお酒臭い…!!
「お前、何飲んでるんだ?」
『え?あ、ちょ…!!』
「…うげ、ジュースじゃねぇか!」
止める間も無く私の手からジュースを奪って飲み干したシャチさん。
間接キスが…!とか私が気にし出すよりも早く、彼は自分が持っていたお酒のビンを差し出して来た。(ビンから飲むとかどんだけワイルドだ。)
『?』
「飲め!」
『えぇ!?』
「主役が飲まなくてどうする!!」
『い、いや、その…私、あまりお酒強くなくて…』
「先輩に逆らうな新入りー!!」
私の話なんて聞く耳持たずなシャチさん。
…かなり酔ってるな、この人…!!
『シャ、シャチさん!!酔ってるじゃないですか!!もうお酒止めといた方が…』
「いやいやこれからだろ!」
『と、とにかく私は飲まな…んぐ!?』
…必死の抵抗虚しく、ビンを口へと突っ込まれ…そのまま傾けるものだから、口内へ次から次へと容赦無くお酒が流れてくる。
それらを思わず飲んでしまい…あぁ、頭がボーッとしてきた…。
「美味いか?」なんて聞いてくるシャチさんに答える余裕は正直無い。
視界がグルグルと回り、頭はボーッとする。身体は熱い上に上手く力が入らない。
「桜、大丈夫??」
咄嗟に口を手で覆えば、ベポさんが心配そうに声をかけてくれた…けど、心配するなら途中で止めてもらいたかったです…。
何も言えずに俯いていると、少し頭が冷えたのかシャチさんの焦った声も聞こえてきた。
「お、おい、平気か?悪い、ここまで弱いと思わなくて…」
そう言うシャチさんだけど、渡されたお酒は度数が高く、キツかった。お酒初心者な私にはかなりキツかった。
『す、こし、すれば、だ、だいじょぶ、です…』
…それでも、私なんかの為に歓迎会を開いてくれた皆さんの気分を害しちゃいけない。
そう思って口を開いたが、自分でも笑ってしまいそうなくらい舌足らずな喋り方で………でも、ローと飲んだ時に比べれば意識はまだはっきりしている。
『わ、たし、ちょっと…みず、のんで、きます…』
上手く力の入らない身体を、船の縁を掴む事で無理矢理立たせた……
…が、
『わ、』
「「桜!?」」
シャチさんとベポさんの焦る声に、グラッと揺れる視界と身体。
…あ、倒れる…今の私は受け身も取れないから痛いだろうなぁ…
そんな事を思いつつも為す術の無い私は、瞳を閉じて身体に来るであろう衝撃を待ち構えた。
…ボスッ
…んん?身体が何かに当たった感触はしたが、全然痛くない。むしろ温かくて、良い匂いがして…ずっとくっついていたいくらいだ。
「…何やってんだ、お前は…」
頭上から溜め息混じりで聞こえてきたのは、少し低めの呆れたような声。
「キャプテン、ナイスタイミング!!」
「せ、せせせ船長…!」
…閉じていた瞳を開けて見上げると、そこにいたのはやっぱりローだった。
揺れるのは視界と身体と恋心。
(…ダメ、今近づいたら全部言っちゃう…)
(そう思った所で一人で歩くことすらままならない私にはどうも出来ず…)
(せめてもの抵抗に自分の口を両手で押さえた。)