優しい手
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…またあの夢を見た。小さい頃の夢。
「…桜、またあの力を使ったのか…?」
『…ことりさんがはじめてとぼうとしてたから、ちょっとてつだってあげただけだよ?』
「使っちゃいけないと言っているだろう。」
『…なんで?』
「なんでって…普通じゃないからだよ。」
『…わたし、ふつうだもん!!わるいことしてないよ!』
「…何を言っているんだ、そんな力が使えるなんて普通じゃないに決まっているだろう。」
『ふつうだもん!!』
「っうるさい!!!!!」
バシッ!!!!!!
『っ!!!』
「…何回言わせれば気が済むんだ!!お前は普通じゃないんだよ!!」
バシッ!!!!!
『お、とうさん、痛いよ、やめ…っ!!』
「うるさい!!二度と反抗する気が起きないように身体に覚えさせてやる!!」
バシッ!!!!!
『…め、なさ…ごめ、なさい…』
「なんでそんな力を持って生まれたんだ!!気持ちが悪い!!!」
バシッ!!!!!!
『…や……』
「お前みたいな気持ちが悪い子どもなんか生まれてこなきゃ良かったんだ!!!」
バシッ!!!!!!
私は何故か生まれつき“風を操る”能力の持ち主で…両親はこんな普通じゃ有り得ない力を持つ私を気味悪がった。
父親はあの日以来私に暴力を振るうようになり…いや、むしろ殺意すらあったように感じる。
幼い私はその暴力にただただ謝り続けていた。
『産まれてきてごめんなさい。』
『存在してごめんなさい。』
こんな日々に耐えられず、高校卒業と同時に家を出たが、ある時父親があの日以来見せていなかった笑顔で私の部屋を訪ねてきた。
…知らない男を連れて。
“お前をアメリカの研究機関に預ける事にした。”
…早い話が私は売られたのだ。こんな力の持ち主、研究者からしたら興味深い対象だろう。
何をされるのかなんて考えたくもなくて、実験動物にされるなんて嫌だ!と逃げてからは偽名を使い、生計はアルバイトでどうにかしている。
…本当は私の事を誰も知らない遠い外国に逃げたかったが、空港で待ち伏せされて捕まるのが怖くて勇気が出ない。
自由になりたくて逃げ出したはずなのに、いまだに捕まる恐怖に怯え、幼い頃に父親から受けた暴力に夢で苦しめられる毎日…。