気まぐれ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
…初めて会った時から変な奴だと思っていた。
見ず知らずの人間の心配して、半ば強制的とは言え一ヶ月も面倒見ようとするとかお人よしにも程がある。
女の家だ、向こうから声をかけてきた時点で少しは色気のある展開にでもなるかと思えばそういうワケでも無く…。
異世界からきたなんて言う、自分でも嘘くせぇと思う事をあっさり信じやがる。
…多少減らず口なのは大目にみてやろう。
なんにせよ、向こうへ帰れるまでの良い宿が見つかった。
こちらの世界は元の世界とはかなり違い、なかなか興味深いものがある。
とりあえず、読める限りこちらの医学書を読んでみよう。
そう思い、流石に疲れていたので瞳を閉じようとした時だった。
『…っ』
「?」
苦しそうな声があいつが寝てる部屋から聞こえてきて、なんとなく気になった。
万が一身体の調子が悪くて死にでもされたら困る。
「…おい。」
『…。』
声をかけるが返事は無い。
溜め息をつきつつ顔を覗けば、瞳は閉じているものの苦しそうな顔をしていた。
「…嫌な夢でも見てんのか?」
『…お…と、さ…ん…』
「?」
『…や…やめ…』
「…おい」
『…や…だ…』
「…チッ。」
涙を流し始めたそいつに舌打ちをして、肩を掴んで揺すった。
「おい、起きろ。」
『……。』
「な…!?」
しかし女は起きる事は無く、それどころか俺の手を握ってきた。
「離…」
『……スー…』
無理矢理離そうとしたが、目の前で眠るこいつの顔が安らいだ表情に変わるのを見て躊躇う。
「…チッ。」
これから世話になるからその礼だ。
…誰に言っているんだかわからない言い訳じみた理由を胸に、俺は女の手を離す事無くその場に座り込んだ。
こんなの、ただの気まぐれだ。
(……小せぇ手だな。)