さようなら幸せよ
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がしゃんがしゃん
ゴミ袋の中でぶつかり合った空き缶やビン達がおおよそ綺麗とは言えない音を奏でていて、それを運ぶ私は白地のモコモコした…ローの帽子を被っている。
『ちょっとの距離だし、良いよね?』
ローの帽子を見つけた私は被りたい衝動に駆られた。
なので、万が一ローが起きた時の為に
『ゴミ捨てに行ってきます。帽子借りてます。』
とメモを残し、悪戯をする子どものように少しドキドキしながら被って家を出たのだ。
この帽子いいなぁ…モコモコが気持ち良い。
ちょっと大きいローの帽子を深めに被ると、ふわりと彼の匂いがした。
…酔った勢いで本人にも言ったが、私は本当にローの匂いが好きだ。
香水をつけているワケでも無いのに、ローは良い匂いがする。大人の男的な匂い…あれ、なんか私変態っぽい?
しかも“大人の男”て。私とローはそんなに歳変わらないのに。
そんな事を考えていたら、ゴミ捨て場についた。
…結局ずっとローの事を考えていた自分に小さく溜め息をつく。
“恋”とはなんて進行の早い病気なんだろう。気付かないフリをしていてもじわじわと想いが強くなり、認めた瞬間頭の中は想い人でいっぱいになる…。
しかも効く薬が無いから厄介だ。
なんて、ちょっと医者みたいに思って再び自己嫌悪。
…どうにかして思考をローから引き離さなければ。
ゴミを捨て、とりあえず部屋に戻ろうとした時だった。
『…むぐ!?』
突然後ろから布で口を塞がれる。
抵抗してみても離れそうになくて…段々身体に力が入らなくなっていく。
「…鬼ごっこはおしまいですよ。」
耳元で聞こえたその言葉に、とうとう研究所の人間に捕まったのだとぼんやりとする意識の中理解した。
…ごめん、ロー。お見送り出来ないや…あ、帽子も返せないみたい…
…完全に意識が途切れる瞬間、瞼の裏に映ったのは「しょうがねぇな」と言う顔で笑うローの姿だった。
さようなら幸せよ
(…ありがとうもごめんなさいも言えてない…)
(…もっときちんとお別れしたかったな…)