存在理由
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…明らかに様子がおかしい桜だが、俺が口を開く度に有無を言わさず喋り、俺の言葉を遮りやがる。
「…お前、」
『あ!そうだ!!今夜はお祝いに飲もう!!』
「は?」
『だってロー帰れるんだよ??おめでたい事じゃない!!私、お酒買ってくるね!!』
そう言いながら財布を持って玄関に向かう桜の腕を掴んで引き止めた。
「…待てよ。」
『…大丈夫、だよ。』
「あ?」
小さな声で『大丈夫』と呟いた桜は、笑顔で俺の方を振り返った。
『今夜の主役はローなんだから、特別に買い出しは私一人で行ってあげる!』
「…おい、」
『研究所の人達の事なら心配しないで!スーパーすぐ近くだし、なるべく人通りが多い道通るから!!』
「そうじゃねぇ」
『…一人で、大丈夫、だから。』
「!」
『…ふふ、ローって意外と心配性だよね!行ってきまーす!』
「あ、おい!…チッ…」
俺が止める声も聞かず、明るい声であいつは家を出て行った…明るいのは声だけだったがな。
桜の言う通り、いつも酒を買いに行く所はここから近いし人目も多い。昨日襲ってきた奴らの心配はしなくても大丈夫だろう。
玄関横の壁に背をつけ、溜め息をつきながらそのまま座り込む。
「……なにが『一人で大丈夫』だ。」
あんな泣きそうな顔して笑いやがって。
あいつは、俺と一緒には来れねぇと言った。戦えない自分は足手まといにしかならないから、と。
…誘った時に毎回思っていたが、桜は一度も『こっちの世界にいたい』とか『行きたくない』とは言った事が無い。
つまり、俺の世界に行く事自体には抵抗がねぇって事だ。
「…っくく…本当お人よしだな。」
こっちの世界で一生逃げ回るワケにも行かねぇ事くらい、あいつだって理解しているだろう。
手っ取り早い逃げ道があんのに、俺やクルーの事を考えてそれを選ばない。
…足手まといだのなんだの言っているが…風を操れる能力者なんて、自然を相手に航海している人間からしたら喉から手が出る程欲しい人材だ。それに加え俺にズバズバと物を言うあいつの事をクルーは気に入るだろう。ペンギンにいたってはすでに打ち解けていたし。
それに気付かない桜はどこか抜けていると思う。
…後は、多分“自分が存在しても良い理由”ってのが欲しいんだろ。
こっちなら、例え両親から愛されていなくても“この世界に産まれたから”と言う存在理由がある…が、俺と一緒にくれば文字通り「ゼロからのスタート」になる。
ただでさえ存在否定されて育ってきた奴だ。“存在理由”に執着しても仕方が無い。
…とりあえずもう一度誘ってみて、それでもあいつが拒否するようなら仕方がねぇ。
“欲しい物は力ずくで奪う”
それが海賊ってもんだ、悪く思うなよ?
存在理由
(“俺が一緒にいたい”)
(これ以上の理由が必要か?)