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公園での騒動から3日経ったある日。
夕食後、洗い物をしていると電伝虫からペンギンさんでは無い声が聞こえてきた。
【船長!】
「…その声はシャチか?なんだ。」
【あいつの怪我が治ったんです!!ペンギンが「もう良いだろう」って!!だから戻れますよ!!】
『!!!』
あいつ…それはきっと、ローをこちらへと“飛ばした”と言う敵船の船長の事だろう。
…怪我、治ったんだ…ローは戻れる…。
『…っ』
…笑わなきゃ。笑って『良かったね』って言わなきゃ。
元々出会えるはずがなかったローに出会えて、一ヶ月間一緒にいられて、しかも“私”の存在を認めてもらえて…
きっと一生分の奇跡を使ったし、一生分の幸せを味わえた。
…それだけで良かったじゃん、私。
「…桜。」
『っきゃあ!!』
パリン!
考え耽っていたら、いつの間にか通信を終えたローが話し掛けてきて…それに驚いてお皿を落としてしまった。
「おい、」
『ご、ごめん!考え事してて…っ痛…!』
慌てて片付けようとしてうっかり破片で指を切ってしまう。
じんわりと指先から血が滲んで来て…
「…何やってんだ。」
貸せ、とローに手を取られる。
それをどこか他人事のように見つめていた。
…モウ、コンナ風ニ触レル事モ出来ナインダ…
『…っ』
ズキン
以前バイト帰りに感じた物と同じ胸の痛みが更に大きくなる。咄嗟に空いてる手で胸を押さえると、ローが心配そうに声をかけてきた。
「…どうした?」
『!な、なんでも無い!!あ、手大丈夫だよ!このくらい舐めとけば治るから!!』
「あ?」
『そ、それより元の世界にはいつ戻るの!?』
「…………明日帰る。」
挙動不審な私の様子に小さく溜め息をついた後、ローは教えてくれた。
…明日…
…明日から、ローがいない一人の生活に戻るんだ。
『よ、良かったね!!』
大丈夫、今までだって一人でやってこれたじゃない。
『船員さん達もローが戻ってくれば一安心だろうし!』
大丈夫、元の生活に戻るだけだよ。
『わ、たしも、そろそろここから引っ越さなきゃって…思って…たし…』
だから大丈夫、丁度良いじゃない。
ズキン、ズキン、ズキン
…大丈夫だと思えば思う程、胸の痛みは酷くなる。苦しくて呼吸が上手く出来ない。