眠る直前
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『…スー…』
腕の中で寝息を立てる桜の、少し赤く腫れた目元を親指でなぞる。
…幸せな人生を歩んできたワケではなさそうだと思ってはいたが、思っていた以上だった。
こいつが愛されたいと願った相手…両親からの虐待。それを全て“自分のせい”なんだと桜は言った。
こんな力を持って産まれた自分が悪い、と…。
まぁ、ガキの頃から自分の親にそう思わせられたようなもんだが…。
…この人生でよくこんなお人よしに育ったな。
「…“風”…か…。」
…一度見てはいるが、生まれつき風を自在に操れるってのには少し驚いた。
こんな平和ボケした、“悪魔の実”も存在しない国でそんな力を持っていてさぞかし生きづらかった事だろう。
桜の説明を聞く限り能力自体に殺傷能力は無いらしい…こんな所でもお人よしが出てんのか。
『…ろー…』
「…寝言?」
俺の名前を呼びながら弱々しく服を掴んでくる桜。
…寝ながらにしてこういう事をしてくるこいつに内心頭を抱える。
…これ襲われても文句言えねぇだろ。
「…はぁ…。」
桜を起こさないように身体を抱え、寝室へと向かう。
女なんて数え切れねぇくらい抱いてきたはずなのに、こいつの肌の柔らかさは一種の麻薬のようで…欲しくなる。
…了承を得ずに襲ったら、こいつは俺を軽蔑するだろうから手は出していない。こんな姿、ペンギン達が見たら驚くどころじゃ無いだろう。
それでもこいつに触れていたくて、抱きまくらのようにして寝る事でなんとか堪えている。
それを桜自身は恥ずかしがっているが…正直、それすらも欲を駆り立てる材料にしかなっていない。
むしろよく我慢出来ていると自分を褒めたいくらいだ。
『…ロー、にも、嫌われるんじゃ、ないかって…』
苦しそうに泣きながらそう言う桜を思い出す。
…ガキの頃からあんな体験してたらそう思うのも当たり前だ。“異端者”として育てられてんだからな。
…嘘が下手で、お人よし。他人への気配りは出来るくせに、自分の事となると限界まで我慢して涙腺ぶっ壊すような、そんな馬鹿…
「…嫌いになるわけねぇだろ。」
前にも言ったが、俺はお前の中身が気に入ってんだ。
どんなお前だろうと受け入れてやるし、守ってやるから安心して笑ってろ。
…桜が絡むと柄じゃねぇ事ばかり頭に浮かぶ。
俺に、こんな人間らしい感情があったなんてな…。
…本当、随分と厄介な相手に惚れたもんだ…。
眠る直前、気持ちを込めて額に口づけを…
(…さっさと気付け、馬鹿。)
あとがき
ローが本気で好きな相手に対しては紳士だと萌える←