笑顔が見たい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お、お前誰だ!!」
「あ?てめぇこそ何者だ。」
「…っ離せ!」
俺の手から無理矢理腕を抜いた男は、見下したような瞳で桜を見た。
「…研究所に来たく無いからって男に守ってもらってるんですか。」
『は…?』
「そうでしょう?こんな柄の悪い男に取り入って…“女の武器”でも使ったんですか?」
『……。』
“こんな”…?
初対面の奴にそう言われてすぐにでもバラしたい衝動に駆られた。桜を馬鹿にしたような発言も頭にくる…が、生憎ここは人目につきすぎる。この平和ボケした国では一瞬で騒ぎになるだろう。
チラリと桜を見れば、僅かに身体が震えていた。
「いい加減諦めてついて来てくれませんかねぇ。こんな男に頼った所で無駄ですよ。貴女は逃げている限り永遠に追われる身なのですから。…おいお前、いくら払えば手を引く?」
「…。」
『……ふざけないで。』
俺が出るより先に桜が口を開く。そしてゆっくりとした動作で男の前に手をかざした。
「…桜?」
『…彼は、「こんな男」じゃない…お金で動かされるような人でも無い…何も知らないくせに勝手な事言わないで…!!』
「…まさか、お、おい、待て!!」
何故か焦る男…と、その時。桜を取り巻く空気が僅かに変わったのを感じた。
『“吹き飛べ”!!』
ザァァァァ!!!!!!
「う、わぁぁぁぁ!!!!」
…それは一瞬の事だった。
桜が“吹き飛べ”と言った瞬間、男にだけ突風が吹いて言葉通り吹き飛ばされる。
すぐ近くにいた俺は帽子が飛びそうになったくらいで何とも無い。勿論桜も。
吹き飛んだ男は木に身体を強く打ち付け、気を失ったようだ。
『…ロー、人が集まる前に行こう。』
驚きで声が出せずに固まっていた俺の腕を掴んだ桜に引かれるまま、足早にその場を後にする。
“これがお前の隠してた事か??”
…そう聞こうとしたが、腕を掴む震える指先と今にも泣きそうな桜の顔を見たら何も言えず…そんな自分に舌打ちした。
笑顔が見たいだなんて、
(柄じゃなさすぎて笑えるな。)
(…お前一人くらい受け止めてやるから笑え、馬鹿。)