優しい温もり
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『---…っ!!!』
勢いよく起き上がり、早鳴る胸をギュウッと抱え込むようにして押さえる。時計を見ればまだ午前2時だった。
…あの夢を見た。
繰り返し繰り返し父親に殴られ、罵声を浴びせられる夢…。
『……最近、見てなかったんだけどな…。』
ローの手を(知らずに)掴んで離さない私を、仕方なくローがベッドに運んで一緒に寝てくれたあの日以来この夢は見ていなかった。
…誰かがいてくれる安心感、とでも言うのだろうか。
それなのに今日久々に見てしまった…何か嫌な事が起こる前兆じゃなきゃ良いのだけれど。
はぁ、と深く溜め息をついた私は、ソファから降りて冷蔵庫へと向かう。
…冷たいお茶を飲めばきっと落ち着くよね?
冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注ぐ。冷たいお茶が喉を通って、少しだが落ち着いて…
「…おい。」
『っきゃ「馬鹿、叫ぶな。」……!!』
突然後ろから声をかけられ思わず悲鳴を上げそうになったが、直前で声の主に口を塞がれた。
落ち着いたはずの心臓が再び激しく鼓動する。…コップを落とさなかったのは奇跡だと思う、うん。
『ロ、ロー…驚かさないでよ…』
声をかけてきたのは(当たり前だが)ローで…全然眠そうじゃない辺り、寝起きじゃないな。また夜更かししてるのか!
『…夜更かししないで早く寝なよ、明日の朝になったら問答無用で起こすからね?』
「…。」
クスクスと笑いながら言うが、ローからの返事は無い。拗ねたのかと思ったが違うようだ。
『…ロー??』
「…お前、大丈夫か?」
『え…?』
…じっ、と見つめられ少し身体に緊張が走る。
『だ、大丈夫、だよ?』
「本当か?」
『…うん。ちょっと嫌な夢、見ただけだから!』
意外とローって心配性?なんて笑ってはみたが、彼は笑わない。それどころか深く溜め息をついた。
「…ったく、お前は…」
『な、なによ?』
「嘘、下手だな。」
『…嘘なんかじゃ、』
「無いとでも言うつもりか?…そんな、今にも泣きそうな顔してやがるくせに。」
『!?』
ローの言葉に、咄嗟に顔を押さえる。
…私、上手く笑えてなかった…??
「…はぁ…」
『…大丈夫、だよ。いつもの事だから。』
「うるせぇ。」
『痛っ!!』
ローにいきなり頭を叩かれた。なんでだ…暴君め!
「あんだけうなされてたのに大丈夫なワケがねぇだろ。」
『…ごめん、もしかしてうるさかった?』
「そうじゃねぇ…チッ、いいから来い。」
『え?わ、わぁ!!』
グイッと腕を引かれ、ついた先は寝室。
ワケがわからず突っ立っている私に再度舌打ちをした彼は私の腕を掴んだままベッドへと入った。
「…お前も入れ。」
『………は?』
「仕方ねぇから一緒に寝てやる。」
『え…えぇ!?』
い、一緒に寝るって、つまり、彼と同じ布団に入るって事で…!!!
『む、無理無理無理!!』
「あ?心配しなくても襲ったりしねぇよ。」
『そういう問題じゃなくて、』
「うるせぇ、さっさと入れ。」
『ちょ、待っ…!!』
…抵抗してはみたものの、男の力に敵うはずもなく…ボスッ、と言う音とともに私はローの布団の中へとダイブした。
恥ずかしさのあまり身動き取れず、固まっていると一度だけ優しく頭を撫でられ…
今の私はおかしいんだ。
恥ずかしくて仕方が無くて、
心臓も痛いくらい大きく鼓動してて、
呼吸だって上手く出来ていない。
…なのに、安心してる自分がいるんだ。
ローの声に、
ローの体温に、
ローの腕に…
その証拠にほら、緊張してるくせに眠くなってきてる。
『…ろー…』
「…寝ろ。」
呂律が回らない口で名前を呼ぶと、返ってきたのはなんとも短い一言。
…それでも、ローがいてくれるっていうのがわかって私の身体は更に安心感に包まれる。
『…あり、がと……』
…そこから私の記憶は無い。
けど、ローがもう一度頭を撫でてくれたのだけははっきりと覚えている。
その後、あの夢は見なくて済んだ。
代わりに見た夢は、私がいて、ローがいて…ウチのリビングで何か話して笑ってる夢。
…何気ない日常がこんなに幸せなんだよ、って言ったらローは笑うかな?
…でも言わせてね。
泣きたくなるくらい優しい温もり。
(ありがとう、貴方がいてくれて本当に幸せです。)