見惚れたなんて
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『ロー!お祭り行こうよ!!』
最近やっと敬語も“さん”付けも無くなってきた桜が瞳を輝かせながら言ってきた。
「…祭り?」
『近くの神社でね、今日やってるの!』
「…一人で行って来い。」
『えー…一緒に行こうよ。』
「だいたいお前家出中なんだろ?見つかったらやばいだのなんだの言ってただろうが。」
『あぁ、それは大丈夫!お祭りみたいに人が多い所では、私が少しでも悲鳴を上げれば騒ぎになりやすいから最初から来ないと思う!』
『それに多分あの人達人混み苦手だと思うんだよね』と、やけに自信満々で言うこいつに深く溜め息をつく。
「……面倒だ。」
『お願い!思い出作りだと思って!』
…両手を顔の前で合わせて懇願してくる桜を見て、良い事を思い付いた。多分今の俺はこいつの言う“悪い笑い方”をしているだろう。
「…俺が“一緒に歩きたい”と思うような格好が出来たら行ってやっても良い。」
『な!!そんなぁー!』
「出来ねぇなら祭りは諦めるんだな。」
人混みなんざ行きたくねぇ。こう言えば諦めるだろう、と思った…が、どうやら少々甘かったらしい。
『…わかった。』
「あ?」
『ローの好みに合うかわからないけど…この国の、お祭り時の正装をお見せしましょう!』
…何故か楽しそうに寝室へと入ったあいつを無言で見送り、とりあえず少し温くなったコーヒーへと口を付けた。
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『じゃーん!』
30分後。寝室から出て来た桜は見た事の無い服を身に纏っている。いつもは適当にしかしていなかった髪もアップにし、化粧もしているようだ。
『浴衣って言うんだよ!』
そう言って袖口を掴んで見せてくる桜を思わず見つめた………いつもは髪に隠れているうなじがやけにエロく見える。
『…どう、かな…?』
恐る恐るといった具合に上目遣いで尋ねてくるこいつの天然具合に内心舌打ちをした。
『…ロー…??』
キュッ、と小さく俺の服を掴む仕種にハッとし、もう一度深く溜め息をついてから玄関へと向かう。
『??』
「…合格だ。仕方ねぇから行ってやるよ、祭り。」
『!本当!?やったありがとう!!』
嬉しそうに後をついて来る桜の頭を軽く撫で、俺達は家を出た。
…見惚れたなんて、言ってやらねぇ。
(ローも浴衣似合いそうだけど…流石に作ってもらわなきゃサイズが無いなぁ…)
(…俺は着ねぇ。お前だけでいい。)