知らない
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お、落ち着け自分!!落ち着くんだ!!
お風呂も出て、クーラーの目の前に陣取りながらガブガブお茶を飲んでも私の顔の赤みは引かない。
…原因はローなのですが。
恋愛経験皆無の私にとってはあ、あ、あ、あんな事されたら…もう!!頭の中はいつまでたっても大パニックのままだ。
思い出してはコップを持つ手が震える。
その時ガチャ、と脱衣所のドアが開いたからローが出てきたんだと思う。
…何故“思う”なのかと言うと、いまだ彼の顔を見れない私は音のする方を振り向けないからです。
ゆっくりと彼が近付い来る気配に比例して、少しだけ落ち着いてきた私の心臓は再びドキドキと大きく鳴る。
「…おい。」
『は、は、はいぃぃぃ!!!』
彼の方を見ずに返事をしたら、顔の横から少し日に焼けた腕が伸びてきた。
「俺にもくれ。」
そう言ってローは私の手からお茶の入ったコップを取り、中身を一気に飲み干した。
…か、かかか間接キ…!!!
しかもち、近い…っ!!
真っ赤な顔で固まっていると、耳元でローが笑う気配がした。
『か、からかわないで下さい!!』
「…なぁ、お前やっぱり俺と一緒に来い。」
『…へ?』
私の発言に答える事は無く、ローは先程も聞いた言葉を口にした。
「お前がいれば退屈しなさそうだ。家出してんだろ?丁度良いじゃねぇか。」
『…無理、ですよ…』
「あ?」
『私、普通じゃないんで。きっと本当の事知ったらローだって気持ち悪がる。』
「…どういう意味だ?」
『さて、私もう眠いんで寝ます!明日もバイトだし!おやすみなさーい!』
「あ、おい…!」
色々と尋ねようとするローを寝室に無理矢理押し込んで、私はドアを閉めたその場に座り込んだ。
…正直、ローの誘いは嬉しかった。
でも私は行けない。本当の事を話してローに嫌われるのが怖い。気持ち悪いと思われたくない。
暴君だし、すぐ怒るし、意地悪だけど…実は優しいロー。初めて笑顔を見た時に胸が高鳴ったのも事実で…まだ会って3日しか経っていないのに、彼は私の中で“嫌われたくない人”に昇格していた。
…もし、私にこんな力が無くて…普通の女の子だったら…??
そんな、いくら考えてもどうにもならない“もしも”の話を考えては現実に打ちのめされる。
…お願い、どうかこれ以上私の中に入ってこないで。
じゃないと私は貴方がいなくなった後一人で生きて行けなくなってしまう。
こんな気持ち知らない、知ってはいけない。
(「気持ち悪い」)
(…そう言って私を殴る父親が頭に浮かんだ。)