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カラン、と高い音を立ててローが持つグラスの氷が動いた。
『はい、つまみ。』
「…あぁ。」
帰宅してすぐテキパキとお酒とつまみの準備をした私は良い嫁になると思う。
「お前も飲め。」
『え?』
ローの言葉と渡されたコップに固まってしまった。
…あの、これ…俗に言う間接キス、とやらで…!!
本当に飲んで良いのかわからずコップを見つめれていると、彼が小さく溜め息をついた。
「まさか飲めないのか?」
『の、飲める、けど…こ、これ、その、ローが使ってたコップ、だし…』
真っ赤になりながらもそう告げると、ローはニヤリと悪い笑みを浮かべた。
「…っくく、お前どんだけ純情なんだよ…」
『う、うるさいなぁ!』
「…なんなら直接してやろうか?」
キス、と囁いてきたローに私の顔が更に赤くなるのは当然の事で…とりあえず中身を零さないようにコップを彼に押し返す。
『わ、私、自分用のコップ持ってく…る…!!』
それは一瞬の事だった。
ローはコップではなく私の腕を掴み、自分の胸へと引き寄せたのだ。器用な事に、コップはいつの間にかテーブルの上へと置かれていた。
『ロ、ロロ、ロー!?』
「なんだ?」
『それ私が聞きたい!!』
ギュッと腕に力を込めて抱きしめられては逃げられない。
チラリと見た先には既にビンが何本か転がっていて…
…こいつ、私がつまみ作ってる間にかなり飲んだな…!?
『こ、こら!ロー!酔っ払いは離れなさい!』
「あ?こんくらいで酔うかよ。」
『…え??』
…確かに、ローの口調はいつも通りではっきりしている。
けど、じゃあなんで私は抱きしめられてるの?
ワケがわからずに一人テンパっていると、頭上から笑い声が聞こえてきた。
「…っくく…」
『…ロ、ロー??』
「本当、珍しい位純情だなお前。」
『う、うるさい!』
「…真っ白過ぎて、汚したくなる。」
『は…!?』
まるで壊れ物を扱うかのように、頬へ滑らされたローの綺麗な指に心臓がバクバクと音を立てる。上手く息が吸えなくてなんだか息苦しい。
『…っロー…』
ゆっくりと近付いてくる彼の顔にいよいよ心臓が止まってしまいそうだ。
射抜くように双眼で見つめられ、身体が動かない。
「…桜…」
【船長ー!!!】
甘すぎる声でローに名前を呼ばれた瞬間、電伝虫から彼を呼ぶ声が聞こえてきた。
「…なんだ。」
【実はですね、…-】
スッ、と私から身体を離し、何事も無かったかのように船員さんとやり取りをするロー。
その場に取り残された私は2、3回ゆっくりと瞬きをしてから勢いよく立ち上がった。
『わ、私お風呂沸かしてくるでありまする!!!』
テンパり過ぎて変な日本語になってしまったがそんなこと気にしていられない。
一刻も早くこの場を離れなきゃ…!!
なになになにさっきの!!
なにあの雰囲気!!
なにあのローの色気!!
なんで私は一昨日会ったばかりの人とキ、キキキ、キスしそうに…!!!
『っわぁぁぁぁ!!!もうヤダ!!雰囲気って怖い!!!』
私は真っ赤な顔で頭を抱えながら、脱衣所にしばらくうずくまっていた。