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あの後、少し遠回りをして帰った。
私がバイトに行っている間、ローさんが一人で散歩に行けるよう道案内も兼ねて……でもローさんがのんびり健康的に散歩とか想像出来ないな…。
『あ、ここ私のバイト先です。何かあったらここに来て下さいね。』
「…俺はガキか。」
『だってウチ携帯しか無いから仕方ないじゃないですか。他に連絡手段もありませんし。』
そう言えば仕方なさそうに溜め息をついたローさんを気にする事も無く先に進んだ。
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入浴も夕飯も終わり、後は寝るだけとなった時。
今日借りた医学書をソファに座って読むローさんにコーヒーを差し出しつつ、テーブルを挟んで彼の前に正座する。
『船長!』
「……あ?」
『船長の世界のお話を聞きたいです!!』
まるで学校の生徒であるかのようにピシッと真っ直ぐ手を挙げながら言えば、ローさんは呆れたように溜め息をついた。
「…なんだその“船長”っつーのは。」
『え、だってローさんは船長さんなんですよね?』
「お前、クルーじゃねぇだろ。」
『ちょっと言ってみたかっただけです!』
「…はぁ…まぁいい。話してやっても良いが、一つ条件がある。」
『条件…ですか??』
「あぁ…その敬語やめろ。」
『敬語を?』
突然の彼の発言に思わず聞き返してしまう。
なんでも、クルーでも無い私に敬語を使われるのが堅苦しくて嫌らしい。
「これから一ヶ月間一緒にいるって言うのに、疲れる。」
『は、はぁ…』
「あと“ローさん”って言うのもやめろ。」
『じゃあ何て呼べば…』
「あ?普通に呼び捨てすりゃ良いだろ。」
『よ、呼び捨て!?』
呼び捨てだなんて…恋愛経験値ゼロの私にはハードルが高すぎる!!
…いや…まぁ知らない男と一緒に生活しといて今更感満載ですけど。
でもほら、それは人助けだし…!!
「試しに呼んでみろ。」
『え、えぇ!?』
「呼べたら話してやるよ。」
『そ、そんなぁ…!』
目の前のローさんは足を組み、背もたれに腕を回してニヤニヤと笑っていて…これはあれだ。絶対私からかわれてる!!
『うぅ…』
「どうした?」
『ろ、ろ、ろろろ…』
「…ブッ。」
顔を真っ赤にしながらも頑張っていたら、ローさんが吹き出した。珍しいなぁーとか思いつつ、やっぱりおもしろくなくて彼を睨みつけた。
『…からかわないでください。』
「敬語。」
『そ、そんな急に言われても困りますよ!!』
「そうか、じゃあ話はお預けだな?」
ニヤリと意地悪く笑うローさんにムッとしていたら、彼が動く気配。
顔を上げたら目の前にローさんの綺麗な顔が…って!!
『ロ、ローさん!?ち、近くないですか!?』
しかし私のそんな叫び等知らん顔で、彼はゆっくりと顔を近付けてきた。
「呼べよ……桜。」
『!!!』
耳元で囁かれた名前に思わず顔を上げる。
う、わ…めちゃくちゃ近い…!!
でもそんな事に構っていられる余裕は今の私にはなかった。
『ロ、ローさん、名前呼んでくれましたね!!』
「……あ?」