このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

サタナエルが聖女と呼ばれるようになったのは、人間の抱えた罪の意識を和らげるという事を始めるうちに信者が集まり、彼らにそう呼ばれるようになったからというのが世間一般の見解だ。

それも正しい。

だが、彼女を欲しがる組織は確かにあった。
それが7人の悪魔で構成された組織【大罪の悪魔】だ。


この世界には世界に悪影響を及ぼす【負のエネルギー】が存在している。

それらは大きく分けて7種類のエネルギーに分類され、それを管理する立場にあるのが大罪の悪魔達だ。


大罪の悪魔達がサタナエルを欲する理由は、彼女の持つ唯一の力が理由だ。

大罪の悪魔達が行えるのはあくまで管理。負のエネルギーが溢れないように監視し、封印を施す事しか出来ない。


しかしサタナエルはその負のエネルギーを浄化……つまり無くしてしまえるのだ。


大罪の悪魔たちは1人につき1種の負のエネルギーにしか対応できない。
そこをサタナエルは種類関係なく負のエネルギーに対して特効効果を持っていた。


そんな彼女を放置しておく理由がない……という訳で大罪の悪魔たちはサタナエルと協力関係にある。

もっともサタナエルに拒否権はまるでない、一方的な関係だが。


「おっ、きたきた」


藤色の髪に朱色の瞳の少女が眠たげにサタナエルへと視線を移す。
彼女の他にはブロンド髪の少女が自席に座って、誰かの写真を眺めている。


「来たのです〜サタナエル〜、そして……」


「【嫉妬の大罪】レヴィアタン」


サタナエルの後ろに控えていたレヴィアタンがチッと舌打ちする。


「……俺は許可した覚えは無いから」


そう言いながらサタナエルの席の椅子を引き、彼女を座らせると隣にドカッと座った。


「何をです〜?」

「とぼけないでよ、サタナエル様を俺達の事情に巻き込む事をだよ」

「も〜2人の事情はわかっているので〜そんな堅苦しく【様】なんて付けなくていいのですよ〜。
レヴィア【たん】〜」

「その【たん】とか言うのもやめて欲しいんだけど、何回言ったと思ってるの?」

「わ〜レヴィアたんが怒ったのですよ〜」


きゃっきゃと楽しそうに藤髪の少女は笑う。
レヴィアタンはチッと舌打ちした。


「さっきのレヴィアたんへの反論ですが〜サタナエルはそうは思ってはいないみたいなのですよ〜」


この場にいるサタナエル以外の3人の視線が彼女へと向かう。


「…………」


サタナエルが目を伏せると長い睫毛も相まって悲しみを湛えたビスクドールのようにも見える。
そんな美しさだった。
彼女は何処か悲しげに呟いた。


「……私の力が役に立つというなら、喜んで受け入れるよ。どんな役目でも」

「エル……でも!」

「流石はサタナエル〜そう言って貰えると思ったのですよ〜」


悲しげに微笑むサタナエルの顔を覗き込んで心配するレヴィアタンだったが、藤髪の少女を睨んだ。


「これがアンタの望み?……ベルフェゴール」

「失礼しちゃうのですね〜。宣言したのはサタナエルなのですよ〜」

「どの口が言って……!」


藤髪の少女……ベルフェゴールは「そんなことより〜」と言いながら地図を広げた。
地図のうちの1点が赤く点灯している。


「この地点で負のエネルギー……【怠惰のエネルギー】が増えてきているのですよ〜」

「ちゃちゃっと浄化をお願いしたいのです〜」

「……怠惰はアンタの管轄でしょ?なんでアンタが封印しに行かないんだよ」

「浄化の方が負のエネルギーを確実に減らせるじゃないか?です〜」


それに面倒な事はごめんなのです〜とベルフェゴールは大きく欠伸をした。


「面倒って……アンタの事情にエルを「巻き込むな、と言いたいのです〜?巻き込んでるのはどっちだか〜なのです〜」

「……どういう意味?」

「私達大罪の悪魔の受け継いだ【呪い】……レヴィアたん、貴方が近くにいることでどれだけ呪いに巻き込んだか……」

「ベルフェゴール!」


レヴィアタンが強い静止の言葉をかける。そして今にも殺してしまいそうな気迫でベルフェゴールを睨んだ。


「それ以上言ったらアンタでも許さないから」

「レヴィア」

「……エル?」

「心配してくれてありがとう。私は大丈夫だから」

「でも……!」

「ほら〜サタナエルがそう言うんです〜任せて何が悪いのです〜?」

「問題ないよ。それより浄化だね?向かうようにするよ」

「そうして欲しいのです〜」

「じゃあ伝える事は伝えたので〜私は帰るのですよ〜」

「まて、まだ話が……!」

「これ以上話すのは面倒なのですよ〜。拠点に帰ってオムライスを食べたいのです〜」


欠伸しながらそう言うとベルフェゴールはその場から姿を消した。


「まて……!」

「っ!アイツ……転移で逃げやがって……!」


レヴィアタンは悔しそうにテーブルを叩く。
その場にはサタナエルとレヴィアタン、そしてブロンド髪の少女が残った。

ブロンド髪の少女はじっとサタナエルを見つめていた。


「貴殿は……アスモデウス殿……だったかな?」


そう言って微笑むとブロンド髪の少女……アスモデウスは握りしめていた写真を強く握り締め、歓喜の表情でサタナエルを更に見つめた。


「あああ……聖女様がアスモの事を覚えてくださっていたなんて……!なんて幸せなんでしょう……!」

「……?」


光悦の表情で酔いしれるアスモデウスに困惑するサタナエル。そんな2人に気付いたレヴィアタンがアスモデウスを睨んだ。


「ちょっとアスモデウス。間違ってもエルに惚れたりしないでよ?エルは俺のエルなんだから」

「うふふふふ、大丈夫ですわレヴィアタン様。アスモが愛しているのは【ベルゼブブ様】だけですから」


ベルゼブブ様……どちらにいらっしゃるのかしら……と写真を眺めながらため息をつく。
どうやらアスモデウスがずっと眺めていたのはベルゼブブという人物の写真らしい。


アスモデウスは完全に自分の世界に入り込んでひたすらベルゼブブ様……と独り言を呟いていたので彼女は放置して部屋を後にした2人だった。
3/3ページ