ヤンデレな王子様
今日も一日の業務を終え、ほっと一息ついてたころ。
カナトがやっと城下町から帰ってきた。
今の今まで、一体どこで油を売っていたんだと思いきやーーー…
「お前、その子供どうしたんだ?!」
「今は言えない」
ただならぬ雰囲気に、カイはそれ以上追及することはしなかった。
ずっと薄汚れた小さな家で母と暮らしていた。
昨日までは。
昨日、母は病で倒れた。
一人ぼっちになり途方にくれていた頃、突然、兵隊のような服装をした男が乗り込んできて、俺をどこかへ連れていこうとした。
抵抗すると舌打ちをされ、薬の染み込んだ布を吸わされた。
そこから、記憶がない。
気づくとレイはふかふかのベッドの上で仰向けになっていた。
ここはどこだーーー…?
部屋には豪華な細工がしてあって、俺が住んでいたところとは似ても似つかない。
「あなたのお母上は、王族の血を継いでいらっしゃいました
今、王には正式に血を継ぐ男の子がおりません
そこであなたが、時期王子として城に召されたのです」
レイは戸惑いつつも、頷いた。
自分の母親が実は王族の者だったなんて、にわかには信じがたかった。
けれど、そのお陰でレイが飢え死にしなくても済むようになったのも事実だった。
「今日から私が、レイ様の身の回りのお世話と教育を致します。
カイと申します。どうぞお見知り置きを。」
眼鏡をかけた、怖そうな男がすっと出てきて、簡潔に自己紹介をした。
その声には、感情は何も感じられず、鉄のように冷たく感じた。
それもそうだ。
突然どこからか出てきた痩せぎすの少年を、快く思う者なんていないと思った。
覚悟しなければ。これからの試練を。
そして俺を残して世を去っていった母の為にも、必ず立派な王子になってみせようと心に誓ったのだった。
1/1ページ