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二日酔いと世話焼きさん





シュンシュンというヤカンの音が聞こえる。





俺は家では電子レンジしか使わないのに……





ここは実家だろうか……?それにしては静かだ。




ゆっくり目を開けると部屋はすっかり明るい昼間の光に包まれ、目の前のテレビがなぜか消音でついていた。




配置的に実家ではなく自宅のようだと理解したキヨは、自分に掛けられていた毛布の存在に気づいた。







手触りでもこもこしているのがわかる。





でもおかしい、キヨの家にそんなものはなかったはずだ。
キヨは最俺の方に実況の道具を置き、自宅には本当に必要なもの以外持ってきていなかった。





見慣れた風景のはずなのに、どこかちぐはぐな部屋。





俺はまだ寝ぼけているんだろうか、と考えてあることにきづく。





こんなことが前にもあった。






あれこれ考えるうちにまたとろとろとした睡魔が襲ってきて、いよいよ頭の中がぐちゃぐちゃになる。






よくわからないまままた眠りにつこうとするキヨに、聞こえのある声が呼びかけた。






「あ、起きた?」




ずっと前から知っている声。
それと同時に長い指が伸びてきて、キヨの頬をぶに、と容赦なくつついた。





今度こそキヨは確実に目を覚ました。





「なんでフジがいんの?」




もぞもぞと伸びてきた手の方に体制を変えつつ寝起きの舌足らずな声でキヨは言った。





その語感がどこか嬉しそうなのは、フジは唯一プライベートでも心を許せる気の置けない存在だからだ。






「お前、覚えてないの?」





もう一度指が伸びてきて今度はほおの輪郭を包むようになぞられた。







謎の行動にもキヨは動じず、半開きの目のままんー、とうなる。





ひんやりとして冷たいフジの手は、だるい体に心地よかった。
離れていこうとする手を、自分の左手で抑えて頬に固定する。







いつもより素直なキヨの姿を、フジは愛しいものを見つめる目で見ていた。







「お湯沸かしてるから、起きたらコーヒーでも飲もうな」





すりすりと固定されてしまった手の指の先だけで顔を撫でる。





問いかけは、安心したのかまた眠りの淵に意識をおいやってしまった相手には聞こえなかった。





また起きる頃にはお湯が冷めてしまっているだろうけど、



そうしたらまた温め直せばいっか。






フジはキヨの隣に頬杖をついて幸せそうに微笑んだ。
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