バレンタインデー(爆豪、焦凍)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日はバレンタインデー! ということで、チョコレートフォンデュをする運びとなった爆豪家。
決して、お嫁さんの怠惰とかではない。旦那様がチビちゃんと一緒にお誕生日に作ってくれたガトーショコラより、上手な手作りチョコレートを作れる気がしなかったからとかそういう弱気な理由でも断じてない。あくまでも、一家団欒を重視した結果。あ・く・ま・で・も!
お義母さんが「もしアレだったらうちで面倒見とくよ」って気を利かせて提案してくれたけど、気持ちだけ有り難く受け取って遠慮させてもらった。「わたしもお二人の結婚記念日には勝己くんの面倒ちゃんと見ますね! 普段は全面的に見られてる側なので……正直、できるかどうか……どうしよう……畏れ多さしかないんですけど、一生懸命頑張らせて頂きます!」「そっかあ。名前ちゃんが側に居てくれるとさ、あいつも退屈しなくて済むね」「やったあ! でも、どうしてでしょう……?」「自覚ない? 面白いじゃない、名前ちゃん」らぶらぶデートはまた別の機会に。
節分の時に自分の分だけとは言え、恵方巻きをロールケーキで代用したせいでこってり絞られたから、少しは学習してチョコの前にチーズでフォンデュで間違いなくごはん! だから、チョコは食後のおやつでオーケー! って言い張ることにした。
「パパ、ブッコロリしゃぶしゃぶして〜」血は争えないのかもしれないとしみじみ感じる爆豪くん。チビちゃんの前では『ブッ殺す』及び物騒な語句全般は封印してるのに。
「ブロッコリーな。あと、しゃぶしゃぶじゃねぇ。フォンデュな、フォンデュ」「ふぉんでゅ? ママ、ふぉんでゅってなぁに?」「んぅ? ママはね、しゃぶしゃぶも好きなんだけど、フォンデュの方が好きかも!」「じゃあ、ママの好きなヤツだぁ」「そうだよ〜」お嫁さんとチビちゃんの遣り取りに一抹の不安しか覚えない。きゃっきゃっうふふしてて可愛いけど、さっぱり意味がわからねぇ。さては、名前のヤツ、チョコのことで頭がいっぱいだな。
チーズは、前戯……あくまでも、チョコが本番……!!
「ねぇ、ママ。ブッコロリってみどりやさんに似てなぁい?」「髪の毛?」「うん! もこもこ〜」幼馴染みの酷い言われように噴き出しそうになるのを堪えていたら、お嫁さんがミニトマトにえいってピックを刺して、お鍋でぐつぐついってるチーズに半分だけ浸す。ご丁寧に右半分。「見て、轟くんだよ!」「ほんとだあああぁぁぁ!!」チビちゃんのテンションが爆上がり。一方、パパのテンションがだだ下がり。「食べモンで遊ぶな!」パパー、つれてきてー、しょーとさんもいっしょがいい! ってせがまれたのをやっとのことで退けたってのに。たとえ、フォンデュと言えども、娘ちゃんとお嫁さんが手掛けるチョコレートをみすみす焦凍くんに渡す訳にはいかなかった。呼んだら最後、万難を排してやって来るに違いない。油売ってねぇで、さっさと女作ってくれやって溜息。で、家庭持て。そうなれば、奪られる心配なんかしなくて済むのに。腹いせに横からトマトを掠め奪る悪いパパ。
「あっ! ズルい! パパがしょーとさん、食べた!」「食べとらんわ! パパが食べたのはただのチーズかかったトマトだわ!」「ふふっ。ねぇ、パパ、そろそろ大丈夫じゃない? ほら、チビちゃん! 緑谷くんだよ〜」「やめろ! 妙な言い方すんな!」パパが量産した程良く冷まされたチーズ緑谷くんをママがチビちゃんのお口に入れてあげる。爆豪くんの憩いの一家団欒が一転して地獄のような光景に。
ママの真似をして右側だけチーズなミニトマトを作り始める最愛の娘。しかも、「ママ、はぁい! あーんしてぇ」「あーん♡」ってやり始めるもんだから堪らない。なんつー狂気じみたバレンタインよ……!!
「あちゅ、あっちゅい……!!」「ママ、にゃんこちゃんのベロだぁ」猫舌のママが熱がる様子を愉悦に満ちた赤い瞳で面白がるチビちゃんに、父娘の縁とか業とか性とかを感じずにはいられない。疑いようがないくらい、俺の娘。
「こら、笑ったらママがかわいそうだろ。こういう時、どうすンだった?」「ママにごめんなさいする……」「だ、だいじょぶだよ……ママのベロ、頑丈だから……」内心、ざまあと思ってしまう。調子こいて轟に加担すっから。頑丈だっつーンなら? ほんとかどうか、後で調べる必要あるよな? って好きな子に悪戯とか意地悪とかしたくなっちゃうタイプ。
「……じゃあ、そろそろ、チョコフォンデュしよっか!」なんでだよ。じゃあじゃねーわ、じゃあじゃ。チビのご機嫌取る振りしてお前が食いてぇだけだろ。
「おい、名前。まだブロッコリー残ってんぞ」「えっ? チョコでフォンデュする用に残してるんだよ?」……は?
マジでどうなっとんだ……パンは定番だとして、さつまいもじゃがいも辺りもわかる。でも、ブロッコリーはおかしいだろ! 甘けりゃなんでもいいのか!
湯煎した板チョコに生クリームを加えて濃厚な仕上がり。「ママ……ブッコロリ、チーズのほうがおいしいね……」「そうかなあ?」何食わぬ顔でなんでもチョコの泉に突っ込むママ。「はい、勝己くん!」手渡された白くてふわふわしてる物体をマシュマロだと思って囓ったら……「はんぺんかよ!」残ってたソーセージもベーコンも挙句の果てにはマッシュルームまで、みんなみんなチョコまみれ。眺めてるだけで胸焼けしてくる。付き合いきれんわ。匙を投げて、代わりにピックを手に取る。切り分けたバナナを刺してチビちゃんに「こっち食え」って握らせる。正しいチョコフォンデュの在り方。
「あっ、わたしもバナナ食べたい!」「あ?」ママにはその場で皮を剥いて、まるまる一本。「ほら」「なんでぇ!?」「祭りン時のチョコバナナみてぇで風情あんだろ」「それは……一理あるね! ううん、百理ある!」チョロい。
パッケージに印字されてる『甘』『熟』の二文字に反応してお嫁さんが迷わずカゴに入れたプレミアムなバナナ。すごく、大きい……とても、太い……それでいて、もっちり……を、まだ温もりを失っていないチーズにぶち込む。「食え」「ど、どういうことなの……」生温い白濁たっぷり極上バナナの爆誕。
「勝己くん、チョコバナナって言ったよね?」「言い間違えただけだわ」「手が滑った、よりも酷い……!!」「ぴぃぴぃ鳴くな! 俺のバナナが食えねぇって言うのか!」「パパのバナナがくえねぇっていうのか!」「食えねぇって言うな。食べられないのって可愛く言え」「はぁい」
狼狽すること、数秒。二人に迫られて差し出されるままあっさり頬張る、甚振りがいのないママ。なんでもご褒美に変換しちゃうポジティブの申し子。言われてみれば、あんまり馴染みがないだけで実際のところ美味しいんじゃ? それに、勝己くんのバナナだもん! 勝己くんの手ずから与えられる以上、美味しくないはずがない!
「……うん、ばっちぐー!」可憐なお口でもぐもぐしながらお花が咲いたみたいにこれまた可憐な笑顔。人妻子持ちとは思えないチョロ……無垢さ。バナナって花からしてエグい形しとるよな。悪ふざけのつもりだったのに、うっかりムラッとしてムクッとしちゃうパパ。
……寝しなにチョコバナナも美味しく頂いちゃったり頂かれちゃったりしたのは、チビちゃんにはもちろん秘密♡ 夜遅くに二人っきりで背徳のスイーツタイム♡ ハッピーバレンタイン♡♡♡
2023.02.14(再掲)