お誕生日シリーズ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ぼんやりと、世間を震撼させたあの事件を思い出す。
トガちゃん……今、何してるんだろう。
小さな頃、よく一緒に遊んだ。泣き虫の私と違ってトガちゃんはいつもニコニコ。輪の中心に居るタイプじゃなかったけど、可愛い笑顔で誰からも好かれていた。引っ込み思案な私にもよく声を掛けてくれる優しい子でもあった。親の仕事の都合で引っ越すことになった時も「名前ちゃん、お手紙ちょうだいね」って言ってくれた。お友達のままでいてくれようとした。……結局、一度も出せなかったんだけど。
そんな優しいトガちゃんがあんな事件を起こすなんて。どんな気持ちだったのか、気になって気になって仕方ない。できることなら、訊いてみたい。
私はね、とってもドキドキしてる。悪いことをしている自覚はあるよ? でも、先に手を出して来たのはそっちなんだから。痛みを感じないだけであって、殴られたり蹴られたりするのは不快。口を塞がれたり首を絞められたりするのはほんとにほんとに不快!
こんなことなら、私の個性をトガちゃんにも打ち明けておけば良かった。そうすれば、もっと仲良しになれた。ずっと上手くやれたはず。
真っ赤な水溜りの中で途方に暮れる。私を不幸にした輩はみんな殺して回った。ただ、殺した後のことまで考えてなかった。困っちゃった……。
「名前ちゃん」
振り返れば、制服に身を包んだ金色の髪が眩しい女の子。すぐにわかった。笑顔はあの時のまま。私が指を切った時に応急処置でチウチウして吸ってくれた——あの時のトガちゃんのまんま。アレって間違ったやり方なんだよね。でも、トガちゃんにとっては正しい殺り方だったんだね。
「お手紙くれないから、迎えに来ちゃった!」
ローファーが汚れるのもへっちゃらで堂々とこっちに向かってくるトガちゃんは、ピンチを救いに来てくれたまるでヒーロー。思わず駆け出す。……ナニか踏んだような気がするけど、構いやしない。広げてくれた両腕、その胸に向かって飛び込む。抱き合ったトガちゃんからは私と同じ鉄が錆びたような匂い。
今度こそ、きっと、私たちは親友になれる。気付いちゃったの。
私もねぇ、赤が好き!
2023.08.07