上鳴くんに別れを告げた彼女。もう元彼女。
あまりにも浮気を繰り返す上に反省らしい反省も見られないので、学生時代からの長い交際歴ではあるものの、遂にぷっつん。涙に暮れる日々。
そんな折、誘われて気分転換に参加したクラスの女子会で作為的に紛れ込んでた爆豪くんから、まさかの告白を受ける。いきなり結婚を前提に交際をスタートすることに。見兼ねた女子たちの結束から生まれた見事なお膳立て。
そんなこんなで、ようやく立ち直ったのに、気軽に連絡寄越してくる上鳴くん……。
「電話してこないでって言ってるでしょ！」って語気を強めても「でも、名前、出てくれんじゃん？」って悪びれる様子がない。以前、こうやって長々と相手をしていたせいで爆豪くんからの電話に出られなかったことがあった。ヘソ曲げられちゃって大変な労力を使ったことを思うと出るべきじゃないのに、無視できない。愛着が残ってる。

「言っとくけどね、電気くんは私の中ではもう彼氏の友達だから仕方なく友達ってポジションだからね！ ただの同級生！」
「うっそ！？ マジで？ そんな扱い？」
「マジだよ！ 勝己が間に居なかったら、とっくに絶縁してるからね！」
「いやいやいや、どゆこと？ 勝己って何？ かっちゃんのこと？ こないだまで、名前、爆豪のこと爆豪くんって呼んでたっしょ！」
「付き合ってるんだもん。普通だよね。あと、私、引っ越したから」
「えっ、そうなん？」

言おうかどうしようかちょっぴり迷ってから、伝えることにする彼女。伝えておかないと、上鳴くんが困るかもしれないと思って。部屋の合鍵も渡したままだから。

「……勝己と一緒に住んでる」
「うわー、きっつー……お前の口から聞きたくねぇヤツだわ」
「じゃあ、もう電話切るね」
「ちょ、待って！ 名前！ 俺が悪かったって、悪かったからさ——」

ここぞとばかりに電話を切る。聞きたくないのは彼女も同じ。
付き合ってた時には同棲も結婚も乗り気じゃなくてのらりくらりだったのに、別れた途端にちらつかせてくるものだから、やり切れない。いくら本命のお前とそれ以外の子は別だって甘言を吐かれても、信じられない。それに、新しい一歩を踏み出してしまった今となっては何もかも遅い。
涙が滲んでくるものの、絶妙なタイミングで帰ってきた同居人の姿を見て泣くのは後回し。

「お帰り、勝己……」
「あ？ どォしたよ」
「ううん。なんでもない！」
「なんかあったンか、名前」

爆豪くんによしよしされて、泣き出しちゃう彼女。なんとなく察した爆豪くんにうんと優しく抱いてもらって、腕の中で上鳴くんを忘れようとするけど、しばらくは難しそう……。
後日、爆豪くんが上鳴くんから鍵を回収してきてくれるんだけど、その鍵を見てまた物思いに沈んじゃう……。



2023.05.31 再掲 (01.05 初出)