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焚き付けって便利だよね。雄英に入って久しく忘れてた一般的な感覚。
轟くんが火をおこしてくれた時に、今ここにサツマイモがあったら最高なのにってしみじみと感じたことを勝己くんに話したら、放課後に買いに行こうってことになった。やっぱり、勝己くん、お腹空いてたんだね。勝己くんと、お買い物!
外出許可をもらうのに二人で相澤先生のところに行ったら、「また、お前らか……」って渋い顔をされて「この、理由欄の『芋』って……訳がわからん」って認めてもらえなさそうな雰囲気を察知した。すかさず、「先生も焼き芋食べませんか?」ってお誘いしてみた。即座に断られた。ううっ、残念。
「……なんで、クソ雑魚ども入り乱れての焼き芋大会になってんだよ! お前、俺になんか恨みでもあんのか? 舐めくさってンじゃねぇぞ!」
「えっ! 雑魚だなんて……オールマイトも来てくれるんだよ?」
「ンあああァァ! 反応欲しいとこはそこじゃねンだよ! わっかんねぇヤツだなぁ、おい!」
時間を確保したい相澤先生の代わりにオールマイトがお目付け役ってことになって、寮の近くで男子も女子もこぞって落ち葉を用意した。
葉っぱの中から虫が出てくるたびに甲田くんを呼んで、帰ってもらうようにお願いしてもらった。前より虫と仲良くできてるみたいで、嫌な顔しないで引き受けてくれた。
焼き芋大会になったのは、勝己くんが、まるで後ろめたいことがあるみたいに「勝手に誘うなや! 邪魔くせぇだけだわ」って先生の前で大胆不敵にもわたしにクレームつけてくるから。
相澤先生が「わかった。ただし、過ちが起きないようにやるんなら全員でやれ」って……わたしは最初からそのつもりだったんだけど、勝己くん、他に何か考えがあったのかな?
たとえ、お目付け役でもなんでもオールマイトが参加してくれるんだったら、名目なんて関係ないけどねっ。
開始早々、率先して火を点けてくれようとした轟くんに対して勝己くんが「待て、舐めプ野郎! どっちの芋が上手く焼けるか勝負しろ!」って持ち前の負けず嫌いを発揮して、突っかかるっていうハプニングが勃発。「いいぞ。付き合ってやる」って轟くんが珍しく乗り気になっちゃって、まさかのアクシデントに派生。
「でしたら、私も!」ってそこに百ちゃんまで加わって……なんだろう? 何が起きてるの?
とにもかくにも、三つの山で三つ巴の戦いがスタート。
って言っても、火を点けたらあとはサツマイモが焼き上がるまでじっくり待つだけなんだけどね。
「いやあ、青春してるね! 苗字少女!」ってにっこりオールマイトに微笑まれたから、元気良く「はーい!」ってお返事。
よく状況が呑み込めないまま、瀬呂くんに「お前しか居なくね?」って審査委員長に任命されちゃったから、出来上がり次第、三ヶ所を回ってチェックすることになった。副審査委員長はお茶子ちゃんと砂藤くん。
審査委員長、飯田くんでもオールマイトでもないんだ? わたしなんだ?
まずは百ちゃんのところ。
「苗字さん、言って下されば私がいくらでも苗字さんにぴったりのお召し物を即興でご用意しましたのに。ひらひらでもふわふわでも、なんでしたら、もこもこでも! いくらでもこさえましたのに!」
「いいのいいの! ほんのちょっとだけ肌寒くなってきたなあって思っただけなの。勝己くんがジャージ貸してくれたから、大丈夫!」
「あれ、爆豪のジャージだったのか……なんかサイズおかしいと思ったら」
「そうなんだよ、砂藤くん。勝己くんのだったの。おっきかったの。あっ、でもね、百ちゃん、気にしてくれてありがとう!」
「私がもっと早くに気が付いていれば、爆豪さんのジャージなんて着なくて済みましたのに……」
「いやあ、爆豪くんのだから良かったんじゃないのかなあ」
「麗日さん、いけませんわ! しーっ、ですわ」
「おっとぉ、うちとしたことが……うっかり。口が滑っちゃった!」
百ちゃんが作ってくれた石焼き芋、とっても美味しかった!
あれ? でも、落ち葉で焼き芋って話じゃなかったっけ……勝己くんが「てめぇッ、クソポニーテール! ダッチオーブンとか、卑怯だろ!」って百々ちゃんを非難してたけど、美味しいからおっけー! ってことにしとく。
勝己くんも轟くんも個性使ってるもん。百ちゃんだけ、個性使っちゃダメっていうのはかわいそうだよね?
「ライターとか火ィ点ける道具作るんじゃなくてか……調理器具なんて持ち出したら、もはや、勝負として成立しねぇだろ……」って轟くんにも言われちゃった。でも、いいの。百ちゃん、可愛いから!
「私、苗字さんのために腕によりを掛けて用意しましたの!」って言ってくれたの、すっごく嬉しかったあ。
「完全に苗字の私情じゃねぇか……これ、いいのかよ、麗日」
「まあまあ、砂藤くん。名前ちゃんだからねぇ」
次に轟くんのところ。
「……わりぃ、苗字。そこまで、気が回らなかった」
「えっ? なぁに? なんのこと?」
「ジャージ……なんか羽織るモン持って来てやった方が良かったよな」
「ううん、あったかかったから大丈夫だよ! 轟くん、とってもあったかかった! してくれて、ありがとう! ふわっとして、すっごく気持ち良かったよ〜」
「轟があったかかったって……?」
「ああ、うん。ふるふる震えてた名前ちゃんを轟くんが見兼ねて、こっそり焚き火したんだって。そこから焼き芋って流れらしいよ」
「なるほど。それにしたって、ひでぇ言い方……苗字ってやることなすこと紛らわしいよなあ」
「そこが名前ちゃんって感じするよねぇ」
轟くんが作ってくれた焼き芋、すっごく美味しかった!
飯田くんに「野焼きにならなかったから良かったものの、次回からは念のためにしっかり消火剤や水を用意した上で行うのが望ましいな!」って注意されて、「すまねぇ。不注意だった。気を付ける」って轟くんが謝ってたからわたしも一緒になって飯田くんに謝った。
緑谷くんが「さっきはほんとにごめんね」ってわたしに小声で謝ってくるから、わたしも緑谷くんに勢い余って手を握り締めちゃってごめんねって謝ったら、緑谷くんが慌てふためきだして、今度は轟くんに「アレは事故だったんだ、ごめん……轟くん、ごめん……」って謝るから、わたしも一緒になって轟くんに謝っておいた。なんで緑谷くんが謝ってるのかわからないけど、轟くん、ごめんね?
更に梅雨ちゃんが「私も謝るわ。勝手な真似してごめんなさいね、名前ちゃん。でも、私、名前ちゃんのためを思って……」って深刻な感じで謝ってくるから、わたしもわたしこそ梅雨ちゃんの役に立てなくてごめんね……って謝ったら、梅雨ちゃんがぎゅってしてくれた。
「回し者のクソガエル! 俺にも謝ってこいや! 次、今日みてぇな真似しやがったら容赦しねぇぞ!」って勝己くんが謝罪を要求してくるから、梅雨ちゃんの代わりに謝っておいた。勝己くん、なんでぷんすかしてるかわからないけど、ごめんね。
いろんな人に謝り過ぎて、途中から何に対して謝ってるのかだんだんわからなくなってきちゃった。
「苗字ってとりあえず謝っとけばいいと思ってるよな、麗日」
「名前ちゃんだからねぇ、砂藤くん」
最後に勝己くんの……って思ったら、峰田くんに手招きされた。
「おい、苗字。オイラのとこにも来いよぉ」
「苗字、やめとけ」
「名前ちゃん、やめとこ」
「えっ、でも……」
「何もよぉ、サツマイモだけが秋の味覚じゃねぇんだよなぁ。オイラがさぁ、とっておきのスペシャルな味覚を教えてやるからよォォォ!」
「うーん? 峰田くんだったら、ぶどう……とか?」
「ぶどうはもちろん、立派な巨峰があるんスよ。あとあと、すっげー松茸なんかもあんだよなあ……むしろ、そっちのが巨砲なんだよなあ……」
巨峰に、松茸! どっちも美味しいよね!
ちょっぴり気になったんだけど、勝己くんが持ち場を離れて猛ダッシュしてきていきなり峰田くんの顔面にお見舞いしたからそれどころじゃなくなった。
勝己くん、「こんのッ、脳内金玉野郎! それ以上、口開くようなら、テメェのケツに熱々の芋ぶっ刺して巨峰とは似ても似つかねぇデラウェアと松茸とは到底呼べねぇエノキを二度と使いモンにならねェようにしてやらぁ!! 乱獲じゃあああ!!!!」って難解な台詞を叫んでた。ちょっとよくわかんない。もう、全然わかんない。
爆風に乗って軽やかに宙を舞う峰田くんを轟くんが慈悲深く氷で受け止めてあげて、間一髪。お陰で地面を跳ねなくて済んだものの……寒そう! 絶対、冷たいと思う!!
氷に囲まれて身動きが取れなくなった峰田くんに「キノコって冷凍保存するといいんだったか?」って轟くんったら、クールな顔でほんわかするコメント。
それに対する勝己くんの「こりゃいいわ。旨味と一緒に死ぬまで閉じ込めとけ!」っていう返し。ますます、わかんない……!!
「峰田少年は実にブレないな……」
「すんません、オールマイト。お見苦しいところを……」
「いやいや。今日も苗字少女を中心に、みんなハツラツとしていて大いに結構。爆豪少年も轟少年も元気に青い春してて何よりさ。若いってイイね! 秋だけどね!」
「名前ちゃんですからっ」
今度こそ、勝己くんのところ!
……って思ったら、上鳴くんの悲鳴にも近い叫び声。
「爆豪、これ! 芋、やばいって! マジでやべぇ! この芋やばくね!?」
「やべぇと思うンなら、ボサッとしてねぇでさっさと取り出せ!」
「ちょ、無理だって! やべぇ熱いもん! 俺、無理だわ! 瀬呂、芋出せって爆豪言ってっけど!」
「俺? でも、手伝ったらダメじゃね?」
「ダメな訳あっか! ンなこと言ったら、石焼きとか自然の力じゃねーだろ! モロに人工的な力借りてンだろ!」
「ありなのか? なしなのか? 苗字」
切島くんに早急なジャッジを求められる。これは、当然……。
「勝己くんだから、なんでもあり! おっけー、です!」
「出たー! 苗字の爆豪贔屓! 贔屓し過ぎっしょ! ひゅっー」
「あっ、そう? じゃあ、しゃーねぇ、手伝ってやりますか」
「言ってる場合じゃねェ! もう、回収したわ! ガン首揃えて何やっとンだ!」
「やべぇ……爆豪印の芋、真っ黒じゃん……何、そういう品種? ダークマター的な?」
わあああ……上鳴くんの指摘通り、真っ黒!
もちろん、品種の問題じゃない。勝己くんと張り切って調達して来たサツマイモ。
勝己くん、重たいのにお芋ほとんど持ってくれた。「勝己くん、優しい! 大好き! 愛してるッ!」って心中を吐露したら、「急にトレーニングしたい気分になっただけだわ」ってそっぽ向かれちゃった。「名前、手ェ出せ」って言われるまま繋いだ手がぽかぽかで、あったかかった。
結構、その状態で並んで歩くのどきどきしちゃったんだけど、片手でサツマイモ抱えて、もう片方でわたしを引き摺ると体幹が鍛えられる気がするってことだったから。変な風に意識しないように頑張った。そういう、勝己くんのストイックなところ、惚れ惚れしちゃう!
ーーうん。やっぱり、ちゃんとサツマイモ色してたもん。ついさっきの出来事だもん。覚えてる。
こんな炭色じゃなかったもん。出来立てをパカッて折ったら、中から蜜がとろーりって算段だったんだもん。忘れてない。
覗きに来た常闇くんが「深き地中から出づる闇を纏いし深紅なる天使……」って嘆く。よくわかったね! 品種が紅はるかのいいヤツだって!
「苗字、大丈夫? これ、マジで食べるつもりなの? 味見するレベルでも相当きつくない?」って響香ちゃんが心配してくれる。
当の勝己くんにも「もう、いいわ。俺の棄権っつーことでもなんでもいいから、こんなモン口にすんな。食うなら他のヤツの芋にしとけ」って制止されたけど、そんなのダメ!
折角の勝己くんの手料理なんだから。勝己くん、今日はたまたま珍しく天文学的な確率で失敗しちゃっただけで、ほんとはお料理上手なんだから。勝己くんとの貴重な思い出の一ページなんだから……食べない訳にはいかないよね!
「あっ……この、お芋……勝己くんの……真心を、すさまじく感じる……!!」
第一回A組秋の選抜対抗焼き芋選手権苗字杯(障子くん命名)の優勝はーー勝己くん!
お茶子ちゃんが百々ちゃん、砂藤くんが轟くんを支持したから、このままだと勝己くんに土が付いちゃうって思って、勝己くんのお芋が良かったよって躊躇わずに答えた。
勝己くんは常に最高、その勝己くんから生み出された焼き芋も至高。黒い芸術。芸術の秋。
これで、みんな引き分け。誰も優勝できない代わりに敗者も生まれない。平和。……だと、思ったのに。
審査委員長を決める時と同じ要領で、「苗字が言うんだから、爆豪の一人勝ちでいいんじゃないか?」って尾白くんの漏らした一言で、そういう雰囲気。……わたし、なんてレビューするのが正解だったのかなあ。こうなってくると、砂藤くんとお茶子ちゃんが副審査委員長だった意味ってあったのかなあ。
オールマイトにも参加してもらってたら、誰かに二票入る計算になって勝負付いた気もする……。
「納得いかねー! あんな腹の足しにもならねぇ、クソ不出来な芋ですらなくなったアレで優勝とかバカ舌にも程があるわッ」
「じゃあ、俺が優勝ってことで。八百は反則だし、お前は棄権すんだもんな?」
「誰がするかボケェ! 黙っとけ、この舐めプ! テメェなんぞに優勝賞品渡すくらいなら甘んじとくわ!」
賞品……?
えっ、そんな話だったっけ?
「もちろん、優勝したからにはなんかあンだろうな? 名前?」
勝己くんと轟くんからの期待の眼差し。
慌てて、砂藤くんとお茶子ちゃんに目線を送る。
二人して親指立ててる……ふえええっ、わたしに丸投げだあ!
「んと、待ってね……今、考えてるから……」
瀬呂くんとついでにその隣の上鳴くんと切島くんにも目線を送ってみる。……親指が三つ立つだけだあ!
「こういう場合、女神からの祝福のキッスじゃねーのかよぉ。火傷するくらいあっつあつのヤツぅ」
「何を言ってるのかしら。峰田ちゃん、おかしなことばかり言って名前ちゃんを困らせるのはやめて頂戴」
「せめて、甘酸っぱいの見せてくれよぉ! なあ、オイラにシてくれなんて贅沢言わねぇからさぁ! 青春要素は足りてても性春要素が足りてねーんだよォ!!」
甘酸っぱいの……わかった! わたし、ぴったりのいい物持ってた!
「じゃあ、勝己くんにプレゼントするね!」
何故か静まり返る空気の中、ポケットからとっておきを取り出す。じゃじゃーんっ。
「勝己くん、勝己くん! はい、どうぞ! わたしのお気に入りっ」
甘酸っぱい、チェリー味のロリポップ!
偶然だったけど、持ってて良かったあ。持つべき物は甘い物!
「舐めとンのかあああ! こんなショボいモン、要らんわあああ!!」
「要らねぇのか? なら、俺にくれ」
「どンだけ舐めりゃあ、気が済むんだよ? クッソ舐めプ野郎……テメェにくれてやるくらいなら、俺が舐め尽くしたるわ! 今すぐ食い散らかすわ!」
勝己くんが豪快に包み紙を毟り取って、ロリポップを口の中へ。
咥えたらすぐさま、ガリガリゴリゴリ噛み砕いちゃって……もう、せっかちさん!
至急、ポケットの中をごそごそやるけど、それが最後の一つだった。お芋が焼けるまでの間にお口が寂しくて、梅雨ちゃんたちと和気藹々お喋りしながらぺろぺろ舐めちゃってた。
「苗字の……腰の、あそこの、ポケットに入ってた……ロリで……ポップ……!!」
「峰田ぁ、良かったね。苗字じゃなかったら、とっくに縁切られてるよ」
三奈ちゃんが血走った目をした峰田くんを……宥めてる? のかな?
峰田くんも欲しかったんだね。もっといっぱい持ってたら良かった。部屋に戻ったらまだまだあるんだけど。
「ごめんね、轟くん。勝己くんにあげたのでお終いなの。今度、あげるね!」
「いいのか?」
「うん! 常にストックしてあるから。峰田くんにもあげる!」
「頼むぜ、苗字……オイラにも温もり付きでェ……!!」
峰田くんがじわじわと距離を詰めてくる。
鬼気迫るものを感じて、咄嗟に後退る。
轟くんが無言で割って入って、わきわきって言うのかな……伸びて来た手をおしとどめてくれた。
真正面から両手を繋いでるみたいになって、狼狽える峰田くんが「イケメンの顔面による果てしない暴力……」って呟く。
そこに投げ入れられる爆弾。
比喩じゃなくて、ほんとに爆発してる。峰田くんの背後、足下で迸る閃光。
「いい加減にしろや! 名前に指一本足りとも触れンじゃねぇぞ! 元はと言えば、テメェのせいで計算狂って芋が炭と化したンだよ! 責任取って焼け死ね! サツマイモにブドウに松茸と来たら、サンマだわ! 雑魚がッ!!」
「ねぇ、マロン……忘れてるよね☆」
「オイラ、なんも悪くねー! 爆豪が雑念に捕われて芋と苗字から目ェ離すからこういうことになんだろ? お前自身のせいじゃねーか!」
「殺す! 今日と言う今日は、ブッ殺す……!!」
「恋に落ちる音と焼きマロンが弾ける音って、似てない? 渋皮ってさ……大人の味だよね☆」
あらら、行っちゃった。スポーツの秋?
賑やかに鬼ごっこを始めた勝己くんと峰田くんと自分から混ざりに行った青山くんを眺めながら、轟くんに連れられてみんなの輪に加わる。
ふぅふぅしながら、手渡された焼き芋を頬張る。しっとり食感。
勝己くん、元気だなあ。体力おばけだあ。
わたしもお花畑でだったら、勝己くんと追いかけっこしてみたいかも。えへへ。
勝己くんの分をしっかり確保して、少し離れた位置から見守ってくれているオールマイトにも……差し入れ!
「これ、どうぞ! オールマイトのお陰で、美味しい焼き芋が食べられました! ありがとうございます」
「苗字少女……君ってば、将来、ビッグになりそうな予感しかしないよね。私の勘がそう告げている……何はともあれ、自分にとって大切なものが何かってのを見極めるんだぜ?」
「はーい! 肝に銘じておきますね」
肝ってあんまり可愛くない表現だから、謙遜してフォアグラって言った方が良かったかなあ。でも、脂肪肝は不健康だから……わたしの場合、脂肪肝より糖尿病に気を付けた方がいいかも。えへへ。
翌日、早速、轟くんと峰田くんにロリポップを手渡した。二人とも思ったより喜んでくれて、わたしも嬉しかった。やったね!
……でも、勝己くんには叱られちゃった。無差別に渡してたら、昨日の飴の優勝賞品としての価値がなくなるだろって。
言われてみれば、確かに! それもそうだね!
「ーーわかった! じゃあ、勝己くん、何か欲しいものある? お詫びに好きなのなんでもプレゼントするよ! わたしにできることなら、なんでもする!」
「……名前」
「うん!」
「だから、名前」
「うん?」
「……ハァ。やるせねぇ。お前、今日から当分飴なし生活な!!」
罰として、結局、一週間ロリポップを禁じられた。
なんで? わたしから貰うより、わたしに与えたいのはなんでなの?
厳格な鞭は要らないから、激甘な飴が欲しい。
糖分なしなんて、つらいよぉ……!!
「ふえええっ……頂戴、勝己くん……わたし、欲しいよぉ。こんなのっ、我慢できないよぉ……」
「お前、もう喋ンな。イライラしてくっから」
2022.11.06