mha short
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
弔くんとゲーセンに来た!
しかも、夜遅い時間! すごい、わたし、不良だ! ってはしゃいでたら「そんぐらいで不良って言わないし。いつの時代だよ……」って、白い目で見られちゃった。
ほんとは不良どころか
でも、不良とか
弔くんと一緒に居たいから居るだけで、わたし自身は何もしてないし、あんまり悪いこともしたくない。うーん、
真っ暗闇にぼんやり浮かんでピカピカしてる。不夜城ってヤツだ。
お店の中もピカピカがいっぱい。あと、すごーく……うるさい!
鼓膜にズンズン来る。大きな声を出さなくちゃ、弔くんとお喋りできない。
わたしは元から声がおっきいからいいんだけど、弔くんは静かにお話することが多いから、ここだとちょっぴり聞こえにくい。
「えっ? 何? 弔くん、何?」
「だから、お前、なんかやりたいヤツあんの?」
「ううん、ないよ!」
「ないのかよ……で、そんな楽しそうに言うことかよ……」
来たこともなければ、当然、どんなゲームがあるのかもわかんない。初めてみたいなもんだもん。
あっ、でも!
「プリクラ!」
「ぜーったい、やだ。写真なんか、携帯で撮ればいいだろ」
「それもそうだね!」
あとで一緒に写真撮ってもらおうっと。
嫌がられるに決まってるけど、そこをなんとかって懇願するしかない。わたしのおでこの見せどころ。
土下座して写真撮らせてくれるんだったらいくらでも地面におでこ擦り付けるよ。やるったらやるよ。
プリクラ以外に知ってるゲームって言ったら……あっ!
「ぬいぐるみ、取るヤツ!」
「あー、クレーン?」
「そうそう、それ!」
言いながら先に進む弔くんの背中を追う。
そうしたら、ケースにいっぱい入ったぬいぐるみ。ちっちゃいのもあれば、おっきいのもある。
あと、ぬいぐるみだけじゃなくてお人形やらクッションやら枕やらお菓子まである!
「なんか欲しいのある?」
「じゃあね……」
ぐるっと見回してたら、頭に変な被り物を被ったつぶらな瞳のにゃんこと目が合う。なんだろう……カニ? なんで、カニ?
「アレがいい!」
「何アイツ……なんなんだよ、アレ……」
「わたしもよくわかんない!でも、可愛くない?」
「全ッ然。可愛くない」
「えー!」
可愛いと思うんだけどなあ。弔くんのお眼鏡には適わなかったみたい。
眼鏡か……弔くんの眼鏡姿を想像して悶絶する。かっこいい。弔くんだったら、なんでも様になるからかっこいいに決まってる。
「まあ、いいや。取れるかどうかわかんないけど、やってみるか……」
「やった! ありがとう、弔くんっ」
「取れるかどうかわかんないって言ってんだろ。過剰な期待すんなよ」
「うんうん!」
お金を入れて、ぽちぽち。
不安になるような頼りない動きで機械がゆらゆら。
にゃんこに近付いていって……カシャカシャ! エイリアンみたい!
「わー、面白いね!」
「名前、うるさい……気、散るんだけど」
「ごめんね! これって、これで終わり?」
「終わり。繰り返して、引っ掛けて、落とす感じ」
「そうなんだあ!」
「もっかいやってみるか」
「頑張って、弔くん! 応援してるね〜」
「勝手に応援すンなよ……」
弔くんがひたすら、ぽちぽち。
カニにゃんこ……なかなか、しぶとい!
あとちょっとってところで、落ちない。
さすがにイライラしてきたのか、弔くんが首を掻き始める。ま、まずい。
「弔くん! もう、いいよ」
「何が? だって、お前、これ欲しいんだろ?」
「欲しいけど……連れて帰りたいけど……」
「だったら、落とすっきゃないだろ」
「弔くん……」
やばい。嬉しくて、泣きそう。
弔くんがわたしのために、戦ってくれてる。
しばらく、一進一退の攻防を繰り広げていたら、知らない人がそっと近付いてきた。弔くんが反応しないってことは危ない人じゃないってことだから、安心。服装から察するに、ここの店員さん? かな?
「ちょっと待ってて下さいね」って言って、鍵の束を取り出して機械の下のところをガチャガチャやり始める。
何が起こるんだろうって興味津々に眺めていたら、店員さんが、なんと……にゃんこを、ずらした!
落ちるか落ちないか危うい体勢のにゃんこ。
「どうぞ」「……どうも」ってやり取りの後、扉が閉まる。
「これなら、取れそう」
「ほんと!?」
「ほんと。……ほら」
弔くんの指差す先、エイリアンの先っちょがにゃんこに当たって、その拍子にころんって。
弔くんが転がってきたにゃんこを摘むように引っ張り上げて、わたしに差し出してくれる。
「ん……」
「わあ! やったあ! すっごい、可愛い! すっごい、嬉しい! ありがとう、弔くんっ」
「別に……ズルしただけだし」
弔くんにお礼を言って、遠くの方から見守ってくれていたらしい店員さんに向かって頭を下げる。微笑んでくれたから微笑み返したら、急に弔くんに腕を引っ張られてよろける。
「名前、行くぞ。もういいだろ」
「うん!」
にゃんこをしっかり胸に抱く。抱き締めるにしては少しちっちゃいけど、ちっちゃくて可愛い。
弔くんがわたしのために取ってくれた、カニにゃんこ!
にやにやしちゃって、どうしようもない。
「ねぇねぇ、次は? 次は何するの?」
囚われの景品を収めたケースが立ち並ぶゾーンを抜けて、今度はモニターが並ぶゾーン。
どうやって遊ぶのか想像できないおっきな機械がいっぱい。
そのとある一角。
右と左に一丁ずつコードで繋がれた銃が付いてるゲーム機。おんなじのが4台並んでる。
「これ。一時期ちょっとやってた」
「かっこいい! やっぱり、バンバンってやるの?
撃つの?」
「そう。4対4で撃ち合って、殺して、先に決められた分だけゲージ削った方が勝ち」
「ぶ、物騒だね……!!」
「まあまあ、面白い。お前もやる?」
「弔くんと一緒にやる!」
「じゃあ、チュートリアルからだな。そこ、立って」
「ここ?」
言われた通り、モニターの真ん前、真ん中の辺りに立つ。
にゃんこはバッグの中に押し込んだ。ぎゅうぎゅうでかわいそうだけど。
今日のバッグ、斜め掛けのタイプにしといて良かった。大正解。
これなら両手が塞がってても大丈夫。そこら辺に置かなくて済む。
後ろから弔くんがお金を入れて、銃を引き抜いてモニターに向ける。思わず、振り返る。
銃を握ってる弔くん、なんか、かっこいい! あと、器用!
指が五本ともくっつかないように上手に持ってる。それでトリガーを引くんだから、すごい。
「こっち見んな。画面見てろよ」
「はーい!」
元気良くお返事をして、向き直る。
背中側から弔くんに手首を取られて、もう一回振り返る。
「いいから。これ、持って。ガンコン」
「う、うん!」
左手と右手にそれぞれ、銃を握らされる。
「まずはキャラ選ぶとこから」って言われて、右往左往。
「どれ? 弔くん、どれにしたらいいの!?」
「……直感? なんでもいいから、好きなヤツで」
「えっ! じゃあね、じゃあね……」
男の子に女の子に筋骨隆々マッチョなお兄さんにいやらしい系の妖艶なお姉さん、おじさんにおじいちゃん、それからロボット……いっぱい選べて、迷っちゃう! 制限時間付いてると焦っちゃう!
でも、直感でいいってことだからーー決めた!
「わたし、この子にする!」
「へぇ。そいつ、結構立ち回り難しいよ?」
「ええっ! 難しいの?」
わたしが選んだのは可愛い男の子。……男の子だよね? うん、男の子だ。
ふわふわ浮いてて、サスペンダー付きの紺色半ズボン学生服にベレー帽。マントが可愛い子。
「この子、宙に浮く個性なの?」って質問したら「なんて言うの? 超能力?」だって。
『超能力』って今日び聞かない。あんまり耳に馴染みがない。複数個性持ちってことらしい。脳無みたい!
脳無は可愛くないけど、この子はとっても可愛いから脳無ももっと可愛い見た目だったら、多少は愛着湧くのになあ。弔くんには内緒なんだけど……わたし、脳無ってあんまり好きじゃない。全然可愛くないんだもん。脳ミソ剥き出しでグロテスクなんだもん。作った人の審美眼を疑っちゃう。
「これがサイドで、これがタンデム」
「上手にくっつかない……」
「慣れだ、慣れ」
弔くんに手取り足取り教えてもらいながら、銃と銃をくっつけたり、離したり。縦に繋げたり。
ガチャガチャ音が鳴っちゃって、なかなかスムーズにいかない。
「……あれ? 撃てない?」
「弾切れ。装填されるまで、待って」
「弾って、切れるんだ……!!」
「そりゃ、そうだろ。そうじゃなきゃ、ゲームになんない。撃ち放題じゃ、勝負になんない」
一通り操作方法を教えてもらって、練習用のステージで遊んでみる。
モンスターみたいなのを撃つのだって怖いのに、他の人? キャラ? を撃つのはゲームとは言え、なんだか申し訳ない気分。撃ったら、喋るし。撃ってなくても喋るし。
「ちなみに股間とか尻とか撃ち抜いた時の専用ボイスなんかもある。あと、お前の使ってるガキとこいつとこいつ、三角関係な。こいつはこいつのこと好きなんだけど、こいつの兄が妹ガチ勢のやばめのヤツでさァ……で、その兄のこと好きなお付きのメイドが居て、更にそのメイドのことが好きなヤツを好きなヤツが居てーー」
「最近のゲームって、随分と過激なんだね!? 性の乱れと泥沼の愛憎劇……!?」
練習ステージ、お終い。
たったの数分だったけど、滅茶苦茶……疲労感……集中しなくちゃだから……。
普段、ゲームとかやらないから、尚更。
「どう? わかった?」
「うん……とりあえず、銃を使うゲームなんだってことだけはわかったよ……」
「そんなの筐体見たらわかるし、最初っからそう言ってンだろ。いいや。次、俺と全国な」
「全国……って?」
「全国対戦。このゲーム、そういうゲームだから。それが醍醐味」
「弔くんと味方になれる?」
「なれる。バーストすればいい」
「バーストって?」
「一緒のチームで出撃すんだよ」
「へぇ〜」
聞いたことない用語ばっかりで、頭が、混乱するぅ!
でも、弔くんとやれるなら一安心。
弔くん、ゲーム上手だから敵同士になったら、きっとチームごと負けちゃう。それにたとえゲームであっても、弔くんと争ったりしたくない。
弔くんがすぐ隣にあるおんなじゲーム機の前でスタンバイする。
「どいつ使うかな。名前がそれだから……ロボにしとくか」
「わたしの子とそのロボットに乗ってる子だと相性良かったりするの?」
「前衛と後衛。俺が前出てお前守るから、好きに動けよ」
弔くんが……わたしを守ってくれる……幸せ過ぎて、死んじゃいそう!……ゲームの話だけど! 死んだら負けちゃうから守ってくれるだけなんだけど!
言われた通りモニターに向かってトリガーを引いて選択する。
「ボイチャは? 切る?」
「ボイチャ?」
「ボイスチャット。2バーで出るから、あとの二人はどっかの誰かで知らないヤツなんだけど、そいつらと喋る?」
「えーっ、すごくない? 知らない人とお喋りできるなんて!」
「普通だろ。向こうが拒否だったら繋がんないけど……試しに繋げてみるか」
「お喋りしながらゲームできるの? 楽しそう!」
「相手次第だな。じゃあ、ヘッドフォン。……聞こえる? 名前?」
恐る恐る、付けてみる。
……耳元で弔くんの声がする! 素敵!!
それだけでもう、このゲームして良かったって思う。ゲーセンに来て本当に良かったって思える。
手にも触った? どっちかって言うと、触られた?
とにかく、どさくさに紛れて弔くんと触れ合えた。ラッキー!
「聞こえるよ! 弔くんのいい声!」
「あんま叫ぶなよ。うるさいから。動物園は勘弁」
「気を付ける〜」
動物園? 騒いだらダメだよってことかな?
お猿さんとかキィキィ騒ぐもんね。アレ、怖いよね。
「あっ。マッチングした」
「ほんと? ほんとだ!」
わたしの子と弔くんの子以外のキャラがモニターに映し出されてる。
「よろしくお願いします」って言われたから、「よろしくお願いします!」って返したんだけど、弔くんも他の二人も無言になる。
えっ、なんで? ボイチャってお喋りするヤツなんだよね?
「女の子だ……」「女子かよ……」「カップルバーか……」「2バーで出てくんな、4バーでやれや」「養殖いいなぁ……俺も彼女養殖したい……」「クソ養殖じゃねぇか……サブカ使いやがって……」って謎の恨み言が並ぶ。
弔くんの方を見たら、ゆるゆると首を振られる。
なんだろう、思ってたのと違う。あんまり雰囲気がよろしくない感じ。
そのせいなのか、弔くん、ずっと無言。お話してくれない。
折角、耳元で弔くんの声を聞き放題! っていう美味しいシチュエーションだったのに。自然と無念さの滲んだ溜息が漏れる。
「声、可愛い……吐息、やべぇ……」
「は?」
わたしが反応するより先に弔くんが反応した。
結構、カップルとか彼女とかって単語でもいっぱいいっぱい。顔が熱い。
「黙れ。気持ち悪いから、喋んな。そういうの、要らないんだよ」
「民度低っ……」
「あ? どっちが?」
戦闘、始まってるみたいだけど……こっちはこっちで始まってる……!!
味方だよ、ね?
「あったまるわぁ……」
「うるさい。殺すぞ。クソ雑魚AIMの低ランのくせに、吠えンなよ。芋ってたら殺すからな。捨てゲーしても殺すから」
「弔くん、さすがに殺すはダメだと思う。せめて、死ねぐらいにしとこう? ねっ?」
「彼女ちゃん、すごい可愛い声してるね……もっとなんか喋って……」
「死ねよ、キモ豚。ハンマーで叩き潰してミンチにしてやろうか? お前みたいなのが居るから新規の印象悪くなって、人口減るンだよ。マジで死ね」
弔くんが怒り心頭で、収拾がつかない。
でも、気付いたら圧勝してた。
不慣れな操作と勃発した仲間割れにわたしがおろおろしているうちに、弔くんがコスト割れ? って言うらしいんだけど、一回しか死んじゃいけない相手を追い掛け回して二回殺してあっさり試合終了。だったんだって。
あっという間だったから何がなんだかよくわからなかった……このゲーム、すごい、怖い……。
「今日はもう全国やめる。またあいつらとマッチしたらウザいし」
「さっきの人たち?」
「そ。もう二度とボイチャなんかしない」
弔くんにしっかり守ってもらえたし、カップルとか彼女って呼ばれて不快どころか舞い上がってたってことは黙っておく。
二人で気分転換に練習ステージで遊ぼうってことになって、もう一回。
モニターと銃を構えるかっこいい弔くんを交互に眺めること数回目……わたしの足下に、なんか、居る……!!
どこから迷い込んで来たのか、ちっちゃい子。
まだ、よちよち歩きのチビちゃんがわたしを見上げてくる。
ゲームに興味があるみたいでわたしの持ってる銃と機械を繋いでるコードを握って離さない。
こんな時間にこんな場所にこんな子供が居るなんて、開いた口が塞がらない。英才教育にも程がある。
ちなみにわたしを
「名前……何、そのチビ?」
「わかんない! 迷子かな? ねぇねぇ、キミ、一緒に遊ぶ?」
屈んで銃を握らせてあげる。重たいだろうから、落とさないように、支えてあげながら。
そうしたら、にこにこ。とっても可愛い。
「ほっとけよ。面倒くさい……」
「だってー。可愛いんだもん」
まだゲームの最中だったのに、構わず銃をしまってこっちにやって来る弔くん。
わたしと同じように屈んでチビちゃんの様子を窺う。
「おい、チビ。お前、親は?」
「まだ、お喋りできないんじゃない?」
「ふーん。まあ、どっかそこらに居るだろ。毒親」
「弔くん。この子、持って帰っちゃダメかな?」
「好きだよな、名前。でも、世話すんの怠いだろ。やめとけよ。うるさいし、邪魔になるし」
堂々と悪巧みの相談。ちょっぴり
カニにゃんこと一緒にお持ち帰りして可愛がってあげたかったけど、やめておく。
しばらく、相手してたらこっちに接近してくる女の人。多分、この子のお母さん。
少し離れた場所から名前を呼ばれて弾かれたように向こうによちよち歩いていく、チビちゃん。
やっぱり、お母さんだ。へぇ~、そういう顔ね。
「頭くらい下げろよな」
「ふふっ。誘拐しようとしてた相手に?」
「それもそっか」
二人で屈んだまま顔を見合わせて笑う。
立ち上がった頃にはゲーム終わっちゃってたから、そのまま弔くんと移動する流れ。
ぶらぶら店内を一周して、入口のところにあったにゃんこのガチャガチャを回してから離脱。サメみたいな被り物のにゃんこが当たった。取ってもらったカニの子と一緒のシリーズ。
ゲーセン、思ってたより楽しかった! 思いっきり、満喫できた!
「あーあ、欲しかったなあ。あの子」
「どう考えても要らないだろ。他人のガキなんか」
「じゃあじゃあ! 自分の子供だったら、どう?」
「要らない。……でも、お前のガキだったら面倒見てやってもいいかも……」
「えー? わたし、弔くん以外とそういうことするつもりないよ」
「じゃあ、すれば?」
「やった!」
帰ったら、弔くんと大人のゲーム! 夜のお遊戯っ!
2022.10.01
8/11ページ