長編 1ミリ上空の日々
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カラスが鳴いて家路につく頃。
ようやく小松田さんは正門を修理し終えた。
予感通り、金槌を何度も自分の指に振り下ろしたため、小松田さんの指は夕日に負けないほど真っ赤だ。
「僕だけで直せたぞ~」
小松田さんは満足げな表情で汗を拭った。
私もほっと胸を撫で下ろす。
完璧とは言えないけど、穴は一応塞がっている。
途中、七松君のアタックしたバレーボールが直しかけの門を更に破壊したりして、一時はどうなる事かと思った。
修理した今だって、あちこち釘が取れかかっているけれど、明日になれば食満君も帰って来る。
「小松田君、そろそろ夕飯ですよ」
吉野先生がひょっこりと窓から顔を出して小松田さんを呼んだ。
きっと吉野先生も小松田君を心配して隠れて見守っていたに違いない。
「はーい!」
小松田さんは元気に返事をして、工具箱を持ち上げて歩き出す。
一人で修理をやり遂げた小松田さんを褒めてあげたくて、私は声にならない声で言った。
“おつかれさま”
「ん?」
すると小松田さんが振り返る。
それから、首を傾げた。
「空耳かなあ?」
工具箱をよろよろ運びながら遠ざかって行く小松田さんの背を見送りながら、私は立ちつくしていた。
ああ、驚いた。
空耳くらいでも、私の声が聞こえたのだろうか。
私は意識して声を出そうとするけど、やっぱり空気が出るだけ。
やっぱり小松田さんの空耳かな?
私は暗くなり始めた空を見上げて、耳を済ませてみる。
「おのこしは許しまへんでー!!」
食堂の方からおばちゃんの気合のこもった声が聞こえてきた。
今日も賑やかな学園の一日が終わろうとしている。
ふと懐かしさが込み上げて来て、私は慌てて頭を振る。
懐かしく感じるということは、ここでの生活を思い出せるかもしれないということだ。
でも戻れない生活を思い出しても、つらいだけのような気がする。
さてと、今夜はここで夜を明かそうか。
布団いらずの私は正門の横にごろりと横になる。
もちろん地べたにだ。
最初は慣れなかったが、今ではどこでも寝転がることができるので便利だなんて思っている。
こうして地面に寝ころんで、朝になるまで星を数えるのが最近のマイブームだったりする。
たまに、夜に鍛錬している潮江君が突然走ってきたりして驚かされたりするけど。
一方、学園の外では二人の男が正門を見張りながら、夜が更けるのを待っていた。
「忍術学園に盗みに入るのは、意外と楽勝かもしれないな」
「ああ。穴が開いてるってのに、あんな脆い当て木だけで見張りもいねえ」
正門の内側には幽霊が寝転んでいるとは露知らず、二人の男はしめたとばかりに笑う。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「星がさんじゅうに個、星がさんじゅうさん個、星が―――――」
ようやく小松田さんは正門を修理し終えた。
予感通り、金槌を何度も自分の指に振り下ろしたため、小松田さんの指は夕日に負けないほど真っ赤だ。
「僕だけで直せたぞ~」
小松田さんは満足げな表情で汗を拭った。
私もほっと胸を撫で下ろす。
完璧とは言えないけど、穴は一応塞がっている。
途中、七松君のアタックしたバレーボールが直しかけの門を更に破壊したりして、一時はどうなる事かと思った。
修理した今だって、あちこち釘が取れかかっているけれど、明日になれば食満君も帰って来る。
「小松田君、そろそろ夕飯ですよ」
吉野先生がひょっこりと窓から顔を出して小松田さんを呼んだ。
きっと吉野先生も小松田君を心配して隠れて見守っていたに違いない。
「はーい!」
小松田さんは元気に返事をして、工具箱を持ち上げて歩き出す。
一人で修理をやり遂げた小松田さんを褒めてあげたくて、私は声にならない声で言った。
“おつかれさま”
「ん?」
すると小松田さんが振り返る。
それから、首を傾げた。
「空耳かなあ?」
工具箱をよろよろ運びながら遠ざかって行く小松田さんの背を見送りながら、私は立ちつくしていた。
ああ、驚いた。
空耳くらいでも、私の声が聞こえたのだろうか。
私は意識して声を出そうとするけど、やっぱり空気が出るだけ。
やっぱり小松田さんの空耳かな?
私は暗くなり始めた空を見上げて、耳を済ませてみる。
「おのこしは許しまへんでー!!」
食堂の方からおばちゃんの気合のこもった声が聞こえてきた。
今日も賑やかな学園の一日が終わろうとしている。
ふと懐かしさが込み上げて来て、私は慌てて頭を振る。
懐かしく感じるということは、ここでの生活を思い出せるかもしれないということだ。
でも戻れない生活を思い出しても、つらいだけのような気がする。
さてと、今夜はここで夜を明かそうか。
布団いらずの私は正門の横にごろりと横になる。
もちろん地べたにだ。
最初は慣れなかったが、今ではどこでも寝転がることができるので便利だなんて思っている。
こうして地面に寝ころんで、朝になるまで星を数えるのが最近のマイブームだったりする。
たまに、夜に鍛錬している潮江君が突然走ってきたりして驚かされたりするけど。
一方、学園の外では二人の男が正門を見張りながら、夜が更けるのを待っていた。
「忍術学園に盗みに入るのは、意外と楽勝かもしれないな」
「ああ。穴が開いてるってのに、あんな脆い当て木だけで見張りもいねえ」
正門の内側には幽霊が寝転んでいるとは露知らず、二人の男はしめたとばかりに笑う。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「星がさんじゅうに個、星がさんじゅうさん個、星が―――――」
