長編 1ミリ上空の日々
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朝になりゆく空を地面に寝ころんで眺めていた。
いつもなら生徒達が起き出すのはまだもう少し経ってからだけど、今日はみんな早々と寝床を抜け出したようだ。
引き戸を開け閉めする音や、年季の入った廊下を歩く音、そしてあくび混じりに挨拶を交わす声が聞こえてきた。
私も何となく落ち着かなくて、そわそわと起き上がった。
今日は座学のテスト当日。
他人事であるはずなのに、こっちまで緊張してくる。
もはや親のような気分の私は、すれ違う忍たまたちの顔をきちんと確認するように歩いて行った。
怪士丸、今日はいつもより顔色良いね。
おや?藤内はしっかり予習したんだね。余裕そうな顔しちゃって!
善法寺君は………まぁ、うん、とにかく頑張れ!!
みんなが今日のテストの話題で盛り上がったり下がったりしている中、くノ一の三人組が浮かない顔で井戸の順番を待っていた。
確か、くノ一教室のテストは来週のはずだから、そんなに思い詰めることもないはずだけど……?
暗い顔をしていたら、それはテストの心配をしていると勝手に思い込んでいる私は首を傾げた。
すると、普段はなかなか早起きをしない乱太郎、きり丸、しんべヱが半分寝ぼけながら後ろに並んだ。
三人ともふらふらしていて、夢でも見ているような間抜けな顔をしている。
すっごく面白い寝癖もつけてるね。
暫くすると、石に躓いたしんべヱが前のきり丸に倒れかかり、次にきり丸が前の乱太郎を押し飛ばしてしまった。
揚句のはてに、乱太郎は目の前のユキちゃんの頭と頭をごっつんこした。
ごっつーん!!!!
私はあまりの痛そうな音に、思わず耳を塞いだ。
そして、この後のユキちゃんの激怒にそなえて五歩も後ずさりをした。
乱太郎、―――――どんまい。
痛みと、さらに目の前にいたのがユキちゃんだったと知り、乱太郎、きり丸、しんべヱの眠気は吹っ飛んだようだった。
三人とも顔色を青くして小さくなっている。
しかし、頭の後ろを押えて振り返ったユキちゃんは、覇気のない表情で三人を一瞥するとそのまま前を向いてしまった。
あら?ユキちゃん?
私と同様、三人も顔を見合わせて首を傾げる。
そして乱太郎が思い切ったように、ユキちゃんに声をかけた。
「ご、ごめんねユキちゃん!あの、何かあったの?」
「―――。」
「ユ、ユキちゃん?」
乱太郎が心配そうに顔を覗き込むと、黙ってうつむいていたユキちゃんがぱっと顔を上げた。
「もう!朝っぱらからうるさいわね!!まだ眠いから見逃してあげようと思ったのに、ほんとアホね!!!」
ユキちゃんはきーっと怒って、乱太郎の胸倉を掴んでがくがく揺さぶった。
彼女のものすごい剣幕を見て乱太郎は力なく笑う。
「あはは。いつものユキちゃんだ」
「なんですって!!?」
そこへトモミちゃんとおシゲちゃんが止めに入ったりして、朝のどんちゃん騒ぎは幕を下ろした。
その様子を見てほっとすると、いつものように朝の散歩を始めることにした。
すると、少し離れた所に山本シナ先生がいっらしゃり、彼女もまたくノ一三人と乱太郎たちのことを見ていた。
すぐに生徒たちの間に紛れてしまったが、シナ先生が朝から生徒たちの井戸場に来るのは珍しいことだった。
私は「うん?」と首を捻り、そしてぽんと手を打った。
あぁ、―――今日はテストだからか!
何でもかんでもテストのせいだと決めつける。
これこそ馬鹿の一つ覚えである。
*
「『かーん!』へーむへむへむ!」
テスト終了の鐘と共に、忍たまたちが嬉しそうにはしゃぎながら教室を飛び出した。
乱太郎、きり丸、しんべヱも校庭へと向かいながら、テストの出来栄えを口々に話していた。
その話がいったん落ち着き、少しお喋りが止まった時だった。
乱太郎が小さな紙を懐から取り出して言った。
「あのさ、これ―――」
「ん?」
「なになに?」
きり丸としんべヱが手元を覗きこんで首を傾げる。
乱太郎は周りをさっと見回すと、小さな声で話し出した。
「今朝、ユキちゃんに怒られたでしょ?そのとき――」
「ああ!あれね、すっごく怖かったよねえ!それに、むぐぐっ!!」
しんべヱが途中で割り込むのをきり丸が口を押さえて止めた。
「それで?」
「うん。そのとき、ユキちゃんが私の手にこの紙を渡したんだ。たぶん、何か大切なことが書いてあると思うんだけど……」
「え?まだ見てないの?」
酸欠になりそうなしんべヱを放し、きり丸が訊ねた。
乱太郎はちょっと苦笑いをして「だって、テスト前に見たら集中できなくなるかもしれないし」と答えた。
「よっしゃ!見てみようぜ!」
きり丸は乗り気な様子だ。
「うん」
こないだのこともあり、乱太郎はどこか躊躇いながらも肯いた。
今朝もあんなふうに振舞ってはいたけど、ユキちゃんは少し無理してるみたいな元気だった。
でも、これを見ないわけにはいかないか………。
乱太郎はそっと紙を開き、文章に目を通す。
そこにはこんなことが書かれていた。
『あれを見つけたのは、街の中古屋。売られたのは先週、若い男に。老いと若きに気を付けよ。』
急いで書いたのか、字はかなり乱れているし所々かすれている。
きり丸としんべヱも乱太郎の手元を覗きこんだ。
「ん?なんだこりゃ?」
きり丸はさっぱり分からないと言うような顔をした。
しんべヱは思考が停止してぽやーんとしてる始末。
乱太郎は少し考えてから、二人に“小刀”の話をすることにした。
話を聞き終えたきり丸はしばらく黙ってから、口を開いた。
「その小刀の柄を伊作先輩は知ってるってことは、その持ち主も知ってるってことだよなあ。うーん。分かりそうで分かんねえなあ」
「この、最後の『老いと若きに気を付けよ』って何だろうね?」
しんべヱが最後の一文を指さして首をひねる。
乱太郎も自分の知っていることをつなぎ合わせようとするが、途切れ途切れの情報ばかりで意味がわからない。
とにかく、馬と鹿の柄の小刀は街の中古屋に先週売られた。
売ったのは若い男。
小刀の持ち主をユキちゃんたちや、伊作先輩は知っている。
そして、――――老いと若きに気を付けよ?
一体、どういうことだろう?
*
乱太郎、きり丸、しんべヱの三人がうんうん唸りながら去って行った。
その様子を木の上から見ていたのは瓜二つの顔。
不破雷蔵と鉢屋三郎だ。
雷蔵が顔を曇らせて「今の話って……」と呟いた。
三郎も眉をひそめて何やら考え込んでいる。
二人はしばらく木の上に佇んだ後、どちらからともなく姿を消した。
いつもなら生徒達が起き出すのはまだもう少し経ってからだけど、今日はみんな早々と寝床を抜け出したようだ。
引き戸を開け閉めする音や、年季の入った廊下を歩く音、そしてあくび混じりに挨拶を交わす声が聞こえてきた。
私も何となく落ち着かなくて、そわそわと起き上がった。
今日は座学のテスト当日。
他人事であるはずなのに、こっちまで緊張してくる。
もはや親のような気分の私は、すれ違う忍たまたちの顔をきちんと確認するように歩いて行った。
怪士丸、今日はいつもより顔色良いね。
おや?藤内はしっかり予習したんだね。余裕そうな顔しちゃって!
善法寺君は………まぁ、うん、とにかく頑張れ!!
みんなが今日のテストの話題で盛り上がったり下がったりしている中、くノ一の三人組が浮かない顔で井戸の順番を待っていた。
確か、くノ一教室のテストは来週のはずだから、そんなに思い詰めることもないはずだけど……?
暗い顔をしていたら、それはテストの心配をしていると勝手に思い込んでいる私は首を傾げた。
すると、普段はなかなか早起きをしない乱太郎、きり丸、しんべヱが半分寝ぼけながら後ろに並んだ。
三人ともふらふらしていて、夢でも見ているような間抜けな顔をしている。
すっごく面白い寝癖もつけてるね。
暫くすると、石に躓いたしんべヱが前のきり丸に倒れかかり、次にきり丸が前の乱太郎を押し飛ばしてしまった。
揚句のはてに、乱太郎は目の前のユキちゃんの頭と頭をごっつんこした。
ごっつーん!!!!
私はあまりの痛そうな音に、思わず耳を塞いだ。
そして、この後のユキちゃんの激怒にそなえて五歩も後ずさりをした。
乱太郎、―――――どんまい。
痛みと、さらに目の前にいたのがユキちゃんだったと知り、乱太郎、きり丸、しんべヱの眠気は吹っ飛んだようだった。
三人とも顔色を青くして小さくなっている。
しかし、頭の後ろを押えて振り返ったユキちゃんは、覇気のない表情で三人を一瞥するとそのまま前を向いてしまった。
あら?ユキちゃん?
私と同様、三人も顔を見合わせて首を傾げる。
そして乱太郎が思い切ったように、ユキちゃんに声をかけた。
「ご、ごめんねユキちゃん!あの、何かあったの?」
「―――。」
「ユ、ユキちゃん?」
乱太郎が心配そうに顔を覗き込むと、黙ってうつむいていたユキちゃんがぱっと顔を上げた。
「もう!朝っぱらからうるさいわね!!まだ眠いから見逃してあげようと思ったのに、ほんとアホね!!!」
ユキちゃんはきーっと怒って、乱太郎の胸倉を掴んでがくがく揺さぶった。
彼女のものすごい剣幕を見て乱太郎は力なく笑う。
「あはは。いつものユキちゃんだ」
「なんですって!!?」
そこへトモミちゃんとおシゲちゃんが止めに入ったりして、朝のどんちゃん騒ぎは幕を下ろした。
その様子を見てほっとすると、いつものように朝の散歩を始めることにした。
すると、少し離れた所に山本シナ先生がいっらしゃり、彼女もまたくノ一三人と乱太郎たちのことを見ていた。
すぐに生徒たちの間に紛れてしまったが、シナ先生が朝から生徒たちの井戸場に来るのは珍しいことだった。
私は「うん?」と首を捻り、そしてぽんと手を打った。
あぁ、―――今日はテストだからか!
何でもかんでもテストのせいだと決めつける。
これこそ馬鹿の一つ覚えである。
*
「『かーん!』へーむへむへむ!」
テスト終了の鐘と共に、忍たまたちが嬉しそうにはしゃぎながら教室を飛び出した。
乱太郎、きり丸、しんべヱも校庭へと向かいながら、テストの出来栄えを口々に話していた。
その話がいったん落ち着き、少しお喋りが止まった時だった。
乱太郎が小さな紙を懐から取り出して言った。
「あのさ、これ―――」
「ん?」
「なになに?」
きり丸としんべヱが手元を覗きこんで首を傾げる。
乱太郎は周りをさっと見回すと、小さな声で話し出した。
「今朝、ユキちゃんに怒られたでしょ?そのとき――」
「ああ!あれね、すっごく怖かったよねえ!それに、むぐぐっ!!」
しんべヱが途中で割り込むのをきり丸が口を押さえて止めた。
「それで?」
「うん。そのとき、ユキちゃんが私の手にこの紙を渡したんだ。たぶん、何か大切なことが書いてあると思うんだけど……」
「え?まだ見てないの?」
酸欠になりそうなしんべヱを放し、きり丸が訊ねた。
乱太郎はちょっと苦笑いをして「だって、テスト前に見たら集中できなくなるかもしれないし」と答えた。
「よっしゃ!見てみようぜ!」
きり丸は乗り気な様子だ。
「うん」
こないだのこともあり、乱太郎はどこか躊躇いながらも肯いた。
今朝もあんなふうに振舞ってはいたけど、ユキちゃんは少し無理してるみたいな元気だった。
でも、これを見ないわけにはいかないか………。
乱太郎はそっと紙を開き、文章に目を通す。
そこにはこんなことが書かれていた。
『あれを見つけたのは、街の中古屋。売られたのは先週、若い男に。老いと若きに気を付けよ。』
急いで書いたのか、字はかなり乱れているし所々かすれている。
きり丸としんべヱも乱太郎の手元を覗きこんだ。
「ん?なんだこりゃ?」
きり丸はさっぱり分からないと言うような顔をした。
しんべヱは思考が停止してぽやーんとしてる始末。
乱太郎は少し考えてから、二人に“小刀”の話をすることにした。
話を聞き終えたきり丸はしばらく黙ってから、口を開いた。
「その小刀の柄を伊作先輩は知ってるってことは、その持ち主も知ってるってことだよなあ。うーん。分かりそうで分かんねえなあ」
「この、最後の『老いと若きに気を付けよ』って何だろうね?」
しんべヱが最後の一文を指さして首をひねる。
乱太郎も自分の知っていることをつなぎ合わせようとするが、途切れ途切れの情報ばかりで意味がわからない。
とにかく、馬と鹿の柄の小刀は街の中古屋に先週売られた。
売ったのは若い男。
小刀の持ち主をユキちゃんたちや、伊作先輩は知っている。
そして、――――老いと若きに気を付けよ?
一体、どういうことだろう?
*
乱太郎、きり丸、しんべヱの三人がうんうん唸りながら去って行った。
その様子を木の上から見ていたのは瓜二つの顔。
不破雷蔵と鉢屋三郎だ。
雷蔵が顔を曇らせて「今の話って……」と呟いた。
三郎も眉をひそめて何やら考え込んでいる。
二人はしばらく木の上に佇んだ後、どちらからともなく姿を消した。
