長編 1ミリ上空の日々
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鉢屋君が話し終えると、ポン太を撫でていた尾浜君がすくっと立ち上がる。
「もうすぐ夕暮れだ。四半刻後に門の前で落ち合おう」
鉢屋君と不破君が肯き、すぐに準備のため部屋に入って行った。
それを見送ると、久々知君が暮れゆく空を仰ぎながら呟いた。
「なあ勘右衛門。雷蔵にはああ言ったけど、八左エ門が無事である確率はどれ位だと思う?」
さわさわと風が吹き抜け、一瞬の間が空く。
私は久々知君の言葉に唇を噛みしめた。
尾浜君はもう一度ポン太を撫でて「大丈夫だ。あいつは犬死になんてしないよ」と、久々知君に笑って見せた。
不思議と信じられるようなその笑顔は、尾浜君の芯の強さを滲ませている。
「犬死にって……。ああ、そうだよな。あいつは大丈夫だよな」
久々知君も笑顔になりながら、強く肯いた。
――――心配なのは、みんな同じだった。
*
山の向こうに日が暮れ、次第に闇が迫る頃。
普段着に身を包み、傘で顔を隠した四人が門の前に集まった。
何も事情を知らぬ小松田さんは「今からお出かけなんて、みなさんお忙しいんですねぇ」とのほほんとしている。
「よし、出発するか」
潜り戸を開け、鉢屋君がさっと辺りへ目をやる。
門の前では誰かやって来ないか気を抜けない。
私はポン太の隣でそのやり取りを見ていた。
ここから先は四人に任せるほかない。
悔しいけど、私はこの学園からは出られない。
ポン太が小さな声で「くう」と鳴いた。
そうか、お前も竹谷君のことが心配なんだね。
ポン太が鳴いていることに気付いた不破君が屈んでポン太の頭を撫でた。
「お前はここで待っていな。帰ってきたら、じいさんの所に帰してあげるからね」
「行くぞ雷蔵」
「ああ」
闇が濃くなり、細い月が顔を出す。
いよいよ、忍者のゴールデンタイムに突入する。
“全員で学園に帰ること”
四人は目配せをすると、小さく肯く。
彼らは瞳に緊張と、これから向かう先の敵に対する殺気をにじませている。
四人は猫のように物音ひとつ立てずに走り出すと、姿が見えなくなった。
私は声にならない声で「気を付けて」と言った。
ポン太がもう一度「くう」と鳴いて、次は私の顔をじっと見上げた。
私は小さく笑う。
撫でてあげたいけど、私の手はポン太に触れられない。
「おまえ、竹谷君に見つけてもらえて良かったね」
そして、駄目もとでポン太の頭に手を伸ばした。
ぽん
私の指先がポン太の頭に触れた。
「ああ、この子は大丈夫なのか。犬だからかな?」なんて思う。
その瞬間、ぐいっと身体がひっぱられ視界が引っくり返る。
「ぅっわあ!!」
い、一体、何が起きたんだろう?
私はゆっくりと起き上がる。
そして、気がついた。
自分が四つん這いで立っていることに。
「――――――っ!!!?!??」
まさか、いや、でも、これって―――もしや。
ポン太に取憑いてしまった!!!?
驚きで固まる。
さっきより耳が良く聞こえるし、色々な匂いがする。
試しに声を出そうとすると「ゎ、わん」という吠え声。
完全にポン太。
しかし、何故ポン太が私を見ていたのか、わかったような気がした。
それは―――竹谷君を助けたかったから。
*
走り出すのに迷いはなかった。
弾丸のように駆け出すと、人とは違う獣の瞬発力で思いっきり壁を飛び越える。
地面を掴む足、実体のある身体に風を切る感覚。
私はまだ辺りに残っている四人の匂いを辿って走り出した。
「もうすぐ夕暮れだ。四半刻後に門の前で落ち合おう」
鉢屋君と不破君が肯き、すぐに準備のため部屋に入って行った。
それを見送ると、久々知君が暮れゆく空を仰ぎながら呟いた。
「なあ勘右衛門。雷蔵にはああ言ったけど、八左エ門が無事である確率はどれ位だと思う?」
さわさわと風が吹き抜け、一瞬の間が空く。
私は久々知君の言葉に唇を噛みしめた。
尾浜君はもう一度ポン太を撫でて「大丈夫だ。あいつは犬死になんてしないよ」と、久々知君に笑って見せた。
不思議と信じられるようなその笑顔は、尾浜君の芯の強さを滲ませている。
「犬死にって……。ああ、そうだよな。あいつは大丈夫だよな」
久々知君も笑顔になりながら、強く肯いた。
――――心配なのは、みんな同じだった。
*
山の向こうに日が暮れ、次第に闇が迫る頃。
普段着に身を包み、傘で顔を隠した四人が門の前に集まった。
何も事情を知らぬ小松田さんは「今からお出かけなんて、みなさんお忙しいんですねぇ」とのほほんとしている。
「よし、出発するか」
潜り戸を開け、鉢屋君がさっと辺りへ目をやる。
門の前では誰かやって来ないか気を抜けない。
私はポン太の隣でそのやり取りを見ていた。
ここから先は四人に任せるほかない。
悔しいけど、私はこの学園からは出られない。
ポン太が小さな声で「くう」と鳴いた。
そうか、お前も竹谷君のことが心配なんだね。
ポン太が鳴いていることに気付いた不破君が屈んでポン太の頭を撫でた。
「お前はここで待っていな。帰ってきたら、じいさんの所に帰してあげるからね」
「行くぞ雷蔵」
「ああ」
闇が濃くなり、細い月が顔を出す。
いよいよ、忍者のゴールデンタイムに突入する。
“全員で学園に帰ること”
四人は目配せをすると、小さく肯く。
彼らは瞳に緊張と、これから向かう先の敵に対する殺気をにじませている。
四人は猫のように物音ひとつ立てずに走り出すと、姿が見えなくなった。
私は声にならない声で「気を付けて」と言った。
ポン太がもう一度「くう」と鳴いて、次は私の顔をじっと見上げた。
私は小さく笑う。
撫でてあげたいけど、私の手はポン太に触れられない。
「おまえ、竹谷君に見つけてもらえて良かったね」
そして、駄目もとでポン太の頭に手を伸ばした。
ぽん
私の指先がポン太の頭に触れた。
「ああ、この子は大丈夫なのか。犬だからかな?」なんて思う。
その瞬間、ぐいっと身体がひっぱられ視界が引っくり返る。
「ぅっわあ!!」
い、一体、何が起きたんだろう?
私はゆっくりと起き上がる。
そして、気がついた。
自分が四つん這いで立っていることに。
「――――――っ!!!?!??」
まさか、いや、でも、これって―――もしや。
ポン太に取憑いてしまった!!!?
驚きで固まる。
さっきより耳が良く聞こえるし、色々な匂いがする。
試しに声を出そうとすると「ゎ、わん」という吠え声。
完全にポン太。
しかし、何故ポン太が私を見ていたのか、わかったような気がした。
それは―――竹谷君を助けたかったから。
*
走り出すのに迷いはなかった。
弾丸のように駆け出すと、人とは違う獣の瞬発力で思いっきり壁を飛び越える。
地面を掴む足、実体のある身体に風を切る感覚。
私はまだ辺りに残っている四人の匂いを辿って走り出した。
