長編 1ミリ上空の日々
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あれから数日が経ち、私の幽霊ライフは落ち着きを取り戻していた。
私の頭痛の元凶である御札も、あれ以来貼られていない。
そしてタカ丸君と何度か話をした。
まず私はタカ丸君に「この顔に見覚えは無いか」と訊ねた。
しかし、彼の答えはノーだった。
タカ丸君が忍術学園に入学したのは、私が学園で目覚める二週間ほど前のこと。
つまりタカ丸君は、それ以前にどんな生徒がいたのかは知らない。
そしてタカ丸君に、それとなく“死んだ生徒”がいなかったか訊いてみてもらった。
でも、みんな首を横に振るばかり。
「死んだ生徒?里に帰ったり、授業についていけなくて辞めた奴は知ってますけど」と。
私は、一体誰なんだろう?
けっこう古い学年なのか?もしくは学園は関係なし?
タカ丸君と私は縁側に腰掛けながら「うぐぐ」と唸る日々。
でも、平和といえば平和だ。
「今日も良い天気ですね」
私はのんびりと晴れ渡った空をゆるみきった顔で見上げる。
油断するとよだれが垂れそうだ。
「ほんとだねえ。あ、すずめが飛んでるよお」
タカ丸君もむよむよした顔で答える。
ぼさっとしていたら、「おー」という間の抜けた声が聞こえてきた。
縁側から見渡せる中庭に喜八郎が入って来たところだ。
彼は全身泥だらけで、鋤を担いでいる。
「喜八郎くん、今日も蛸壺掘り?」
タカ丸君はのんびりと声を掛けた。
すると喜八郎は「そうなんですよ。この辺、最近掘ってなかったんで」と飄々と答える。
「そっかあ」と、タカ丸君がのほほんと返事をした。
私はうつらうつらしながら、その平和なやりとりを聞いている。
「よし、この辺にしよう」
喜八郎が嬉しそうに呟いて、鋤を一気に土に食い込ませた。
ざくり。
「綾部喜八郎。そこは掘ってはいけませんよ」
突然、老婆の声がした。
私もタカ丸君も喜八郎もびっくりして肩を飛び上がらせた。
みんなで振り返ると、そこにはおばあちゃんに変装(?)している山本シナ先生がいらっしゃる。
シナ先生は穏やかに微笑んで「桜の根を傷めてしまうといけませんから、よそを掘りなさい」と喜八郎に言う。
私は庭の方を見た。
確かに、喜八郎が掘り返そうとしていたのは桜の木の近く。
木の根が広がっていてもおかしくはない。
「はーい」
喜八郎は手まで上げて返事をした。
「良いお返事ですね」
シナ先生はおほほと笑いながら立ち去った。
年季の入った廊下を足音一つ立てずに歩くなんて、侮れないご老人だ。
桜の心配をするなんて、なんて良い人。
私はまたのほほんとした気持ちになる。
あぁ、平和だな………
縁側に寝ころんでしまおうと考えていた矢先だった。
五年長屋の方が何か騒がしい。
「わんわんわん!!!!」
―――――――――犬?
しかも「わんわん」いっているので、ヘムヘムではない。
私はちょっと目を閉じて、耳を澄ましてみる。
幽霊だからか、私は中々の地獄耳なのだ。
「わんわん、わんわんわん!!!」
「――――――――!?」
そして、聞こえてきた言葉にぎょっとした。
聞き間違いだと思いたいけど、多分聞き間違いではない。
犬の喧しく吠えたてる鳴き声の合間に聞こえた言葉。
それは、短い平和の終わりを告げるものだった。
「おい、八左エ門が山賊に捕まったって本当か!?」
わんわんわん!
私の頭痛の元凶である御札も、あれ以来貼られていない。
そしてタカ丸君と何度か話をした。
まず私はタカ丸君に「この顔に見覚えは無いか」と訊ねた。
しかし、彼の答えはノーだった。
タカ丸君が忍術学園に入学したのは、私が学園で目覚める二週間ほど前のこと。
つまりタカ丸君は、それ以前にどんな生徒がいたのかは知らない。
そしてタカ丸君に、それとなく“死んだ生徒”がいなかったか訊いてみてもらった。
でも、みんな首を横に振るばかり。
「死んだ生徒?里に帰ったり、授業についていけなくて辞めた奴は知ってますけど」と。
私は、一体誰なんだろう?
けっこう古い学年なのか?もしくは学園は関係なし?
タカ丸君と私は縁側に腰掛けながら「うぐぐ」と唸る日々。
でも、平和といえば平和だ。
「今日も良い天気ですね」
私はのんびりと晴れ渡った空をゆるみきった顔で見上げる。
油断するとよだれが垂れそうだ。
「ほんとだねえ。あ、すずめが飛んでるよお」
タカ丸君もむよむよした顔で答える。
ぼさっとしていたら、「おー」という間の抜けた声が聞こえてきた。
縁側から見渡せる中庭に喜八郎が入って来たところだ。
彼は全身泥だらけで、鋤を担いでいる。
「喜八郎くん、今日も蛸壺掘り?」
タカ丸君はのんびりと声を掛けた。
すると喜八郎は「そうなんですよ。この辺、最近掘ってなかったんで」と飄々と答える。
「そっかあ」と、タカ丸君がのほほんと返事をした。
私はうつらうつらしながら、その平和なやりとりを聞いている。
「よし、この辺にしよう」
喜八郎が嬉しそうに呟いて、鋤を一気に土に食い込ませた。
ざくり。
「綾部喜八郎。そこは掘ってはいけませんよ」
突然、老婆の声がした。
私もタカ丸君も喜八郎もびっくりして肩を飛び上がらせた。
みんなで振り返ると、そこにはおばあちゃんに変装(?)している山本シナ先生がいらっしゃる。
シナ先生は穏やかに微笑んで「桜の根を傷めてしまうといけませんから、よそを掘りなさい」と喜八郎に言う。
私は庭の方を見た。
確かに、喜八郎が掘り返そうとしていたのは桜の木の近く。
木の根が広がっていてもおかしくはない。
「はーい」
喜八郎は手まで上げて返事をした。
「良いお返事ですね」
シナ先生はおほほと笑いながら立ち去った。
年季の入った廊下を足音一つ立てずに歩くなんて、侮れないご老人だ。
桜の心配をするなんて、なんて良い人。
私はまたのほほんとした気持ちになる。
あぁ、平和だな………
縁側に寝ころんでしまおうと考えていた矢先だった。
五年長屋の方が何か騒がしい。
「わんわんわん!!!!」
―――――――――犬?
しかも「わんわん」いっているので、ヘムヘムではない。
私はちょっと目を閉じて、耳を澄ましてみる。
幽霊だからか、私は中々の地獄耳なのだ。
「わんわん、わんわんわん!!!」
「――――――――!?」
そして、聞こえてきた言葉にぎょっとした。
聞き間違いだと思いたいけど、多分聞き間違いではない。
犬の喧しく吠えたてる鳴き声の合間に聞こえた言葉。
それは、短い平和の終わりを告げるものだった。
「おい、八左エ門が山賊に捕まったって本当か!?」
わんわんわん!
