長編 1ミリ上空の日々
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もがくのを止めた私を見てタカ丸君は腕を解放した。
そして安心させるように微笑むと、今度は真剣な面持ちで光に向き合った。
一体、何が始まるのかと、私は頭痛でちかちかする目を凝らす。
しかし、それは驚くほどあっけなかった。
まずタカ丸君は躊躇うことなく光を掴み、そのままぐしゃっと丸めてしまう。
しかも、きょろきょろと辺りを見回した後、それを学園の外に向かって放り投げてしまった。
「これでよしと」
なんとも清々しい笑顔。
もしタカ丸君が竹谷君か土井先生の髪を狩ったあかつきには、こんな顔をするんではなかろうか。
私は呆気にとられてそれを見ていた。
どこかの長屋から、生徒たちの賑やかに会話する声が聞こえてくる。
普段通りの、穏やかな夜の気配。
いつの間にか、さっきまでの天地が引っくり返ったような頭痛は治まっていた。
ぺたぺたと頭を触る。
―――――痛くない、苦しくない、怖くない。
私はほっとして、へなへなとその場に膝をついた。
本当にしんどかった。
「だ、大丈夫?」
はたと顔を上げると、膝を折って私に視線を合わせたタカ丸君が心配げに首を傾げていた。
藍色の空に映える金色の髪は乱れていて、うっすらと額に汗が見える。
そして思い出す、先ほどの懸命な声。
どうして?とか、私が見えるの?という、言葉は必要なかった。
「助けてくれて、ありがとう」
するとタカ丸君はいつものぽんのりした笑顔で笑った。
「きみは――――」
タカ丸君が何か言いかけたとき「タカ丸さん!!」と彼を呼ぶ声が上がった。
その方を見やると三木エ門が呆れ顔で立っていた。
彼は風呂上がりらしく、寝間着姿で首から手拭いを掛けている。
「そろそろ風呂場が閉め切られちゃいますよ。こんな所でなにしてるんです?」
さっと辺りに目をやると、三木エ門は首を傾げる。
廊下に座り込んでいる私には少しも気付いていない。
タカ丸君は両手を振って「何でもないよお!ちょ、ちょっと探し物を…」と、苦し紛れに言い訳をする。
あまりの挙動不審と大根役者ぶりにひやりとする。
なんてテンプレートな誤魔化し!!!
しかし三木エ門は大袈裟にため息をつくと、廊下にしゃがみ込んだ。
「で?いったい何を探してるんです?」
し、信じたー!!!
私とタカ丸君は仰天して思わず顔を見合わせる。
タカ丸君は慌てて「あ!そそ、そういえば、あそこに置き忘れてたんだあ!!」と手を大きく打った。
これまた、驚きの演技力。
三木エ門は「はあ、そうですか。なら早く風呂済ませたほうが良いですよ」と、流石にちょっと胡散臭そうにタカ丸君を一瞥して背を向けた。
「あっ、ありがとうね!」
タカ丸君と私は深底ほっとしてその背を見送った。
「いやはや、あの茶番でよく乗り越えた」
「ほんと、僕もびっくりしちゃったよお」
二人でそんなことを呟いて、ふと顔を見合わせた。
「ふふっ」
「あははは」
ふつふつと込み上げる可笑しさで、私たちはひとしきり笑った。
誰かと顔を見合わせて笑うなんて初めてで、私は嬉しくて仕方がない。
聞きたいことも話したいことも山ほどあるけど、今はこうしていたかった。
すっかり暗くなった空に、二人分の笑い声が心地よかった。
*
「おい、タカ丸さん、一人で笑ってるぞ?」
「なんか失くしものが見つかったって言ってたけど」
「おやまあ」
上から滝夜叉丸、三木エ門、喜八郎の順に呟いた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
きみは、はじめての友達
そして安心させるように微笑むと、今度は真剣な面持ちで光に向き合った。
一体、何が始まるのかと、私は頭痛でちかちかする目を凝らす。
しかし、それは驚くほどあっけなかった。
まずタカ丸君は躊躇うことなく光を掴み、そのままぐしゃっと丸めてしまう。
しかも、きょろきょろと辺りを見回した後、それを学園の外に向かって放り投げてしまった。
「これでよしと」
なんとも清々しい笑顔。
もしタカ丸君が竹谷君か土井先生の髪を狩ったあかつきには、こんな顔をするんではなかろうか。
私は呆気にとられてそれを見ていた。
どこかの長屋から、生徒たちの賑やかに会話する声が聞こえてくる。
普段通りの、穏やかな夜の気配。
いつの間にか、さっきまでの天地が引っくり返ったような頭痛は治まっていた。
ぺたぺたと頭を触る。
―――――痛くない、苦しくない、怖くない。
私はほっとして、へなへなとその場に膝をついた。
本当にしんどかった。
「だ、大丈夫?」
はたと顔を上げると、膝を折って私に視線を合わせたタカ丸君が心配げに首を傾げていた。
藍色の空に映える金色の髪は乱れていて、うっすらと額に汗が見える。
そして思い出す、先ほどの懸命な声。
どうして?とか、私が見えるの?という、言葉は必要なかった。
「助けてくれて、ありがとう」
するとタカ丸君はいつものぽんのりした笑顔で笑った。
「きみは――――」
タカ丸君が何か言いかけたとき「タカ丸さん!!」と彼を呼ぶ声が上がった。
その方を見やると三木エ門が呆れ顔で立っていた。
彼は風呂上がりらしく、寝間着姿で首から手拭いを掛けている。
「そろそろ風呂場が閉め切られちゃいますよ。こんな所でなにしてるんです?」
さっと辺りに目をやると、三木エ門は首を傾げる。
廊下に座り込んでいる私には少しも気付いていない。
タカ丸君は両手を振って「何でもないよお!ちょ、ちょっと探し物を…」と、苦し紛れに言い訳をする。
あまりの挙動不審と大根役者ぶりにひやりとする。
なんてテンプレートな誤魔化し!!!
しかし三木エ門は大袈裟にため息をつくと、廊下にしゃがみ込んだ。
「で?いったい何を探してるんです?」
し、信じたー!!!
私とタカ丸君は仰天して思わず顔を見合わせる。
タカ丸君は慌てて「あ!そそ、そういえば、あそこに置き忘れてたんだあ!!」と手を大きく打った。
これまた、驚きの演技力。
三木エ門は「はあ、そうですか。なら早く風呂済ませたほうが良いですよ」と、流石にちょっと胡散臭そうにタカ丸君を一瞥して背を向けた。
「あっ、ありがとうね!」
タカ丸君と私は深底ほっとしてその背を見送った。
「いやはや、あの茶番でよく乗り越えた」
「ほんと、僕もびっくりしちゃったよお」
二人でそんなことを呟いて、ふと顔を見合わせた。
「ふふっ」
「あははは」
ふつふつと込み上げる可笑しさで、私たちはひとしきり笑った。
誰かと顔を見合わせて笑うなんて初めてで、私は嬉しくて仕方がない。
聞きたいことも話したいことも山ほどあるけど、今はこうしていたかった。
すっかり暗くなった空に、二人分の笑い声が心地よかった。
*
「おい、タカ丸さん、一人で笑ってるぞ?」
「なんか失くしものが見つかったって言ってたけど」
「おやまあ」
上から滝夜叉丸、三木エ門、喜八郎の順に呟いた。
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きみは、はじめての友達
